ツール・ド・フランス2022

五輪本拠地でフィニッシュを争った翌日は、UCI国際自転車競技連合の本拠地エーグルが、ステージの舞台になる。世界中での自転車競技のさらなる発展を願いつつ、ツール一行はアルプスに軽く脚を踏み入れる。

2020年秋に同地で予定されていた世界選手権は、残念ながらコロナ禍で中止に追い込まれた。しかし自転車新興国出身選手の育成や遠征を支援する「ワールドサイクリングセンター」創設20周年の今年、代わりに真夏にプロトンがやって来た。かつてはフルームが、近年ではギルマイが、そして今年は日本の梶原悠未も研鑽を積む自転車競技場の前を、パレードラン中＆155km前後で2度通過する。

つまりエーグルから走り出すと、コースは大きな一周を描く。世界選で予定されていたコースを序盤9kmほど拝借し、レマン湖のほとりを駆け抜け、3つの山岳も越える。峠の難度は4→3→1級とクレシェンド。そして1級クロワ峠（全長8.1km、平均勾配7.6％）を上り詰めたら、20kmの長い長いダウンヒルを経て改めてUCI本部へ。

大きな周回を終えたプロトンは、フランスへ帰途につく。1級パ・ド・モルジャン（15.4km、6.1％）の山頂直後に、国境を越える。この1級峠は、上り始めに典型的なつづら折りが登場するものの、その後は山頂までほとんどカーブはない。一方で約5kmの下り坂では、3つのヘアピンカーブに要注意。

「太陽の扉」スキーエリアへと誘うラスト4kmは上り坂。やはりカーブのない、勾配4％前後のだらだら坂だが、それでも残り2kmからしばらくは7％ゾーンも待ち受ける。翌日に待望の休息日を控えて、最後のエネルギーを振り絞らねばならない。

エーグルの一帯はかなりの谷間で、そこから上り始めると一体どこまで上っちゃうの？っていう長い上りの山がたくさんあります。でも今回はまず先に湖のほとりを回るし、4級、2級、1級と徐々に上がっていくので、比較的、気は楽かなと（笑）。

ただ、代わりに、1級からの下りが長い。しかも次の上りまで距離がある。うーん、この辺りで、誰か……ギヨーム・マルタンとか、ピエール・ローランとか、ワレン・バルギルとか……そういったタイプの選手がポーンと飛び出していきそうな気がします。そのまま、追いつけるか、追いつけないか、みたいな展開が繰り広げられそうです。

最後の上りも、そこまで厳しさはなさそうです。いや、もちろん、僕個人的には勾配もきついし、酷なステージではあるんですけど、総合系にとっては……。タイム差をここで大きく稼げるか、って言ったらそこまでの山じゃないんですよ。むしろみんなまとまって走りそうな地形です。総合系リーダーはバラバラにならずに、10人位でスプリントを争う、そんな展開になるんじゃないかな。タイム差を失わないように、ライバルに与えてしまわないように、イーブンに抑える形でフィニッシュするのではないかと。

大会1週目の終わりの日曜日だから注目ステージ、という立ち位置のはずなんですけどね。エーグルの周回を逆に回っていきなり1級山岳を上るのであれば、まったく展開は変わってきちゃうんですけど、この周り方だとスムーズなので、アシストたちもみな最終盤までしっかり残って仕事をするでしょう。

おそらくプランシュ・デ・ベルフィーユで総合リーダージャージを着た選手が、まだここでも着ていると思います。もちろん誰がマイヨ・ジョーヌを着ているのかにもよりますが、そのチームが中心となり、しっかりコントロールされたステージになるような気がします。

解説：別府史之 / 文：宮本あさか