ツール・ド・フランス2022

北欧の3日間を終えたツール一行が、いよいよ本物のフランス一周へと走り出す。移動日で失われたレースリズムは、大急ぎで取り戻さねばならない。なにしろ北フランスの大地で戦うのは、季節外れの北クラシックなのだ！

フランス第3の港町であり、自転車ファンにとっては「4日間レース」で名高いダンケルクから、ステージの幕は開ける。バカンス客で賑わう白浜のビーチを後にして、プロトンはすぐに内陸へと切り込む。真っ先に向かうのはカッセル坂……ならぬKasselberg（カッセルベルフ）。時にヘント〜ウェヴェルヘムでも使用される、フランドルの急坂だ。

そう、ベルギー国境に近く、歴史的に「仏フランドル地方」と呼ばれるこの一帯には、たくさんの「monts（モン）＝berg（ベルフ）＝山」が待ち受ける。この第4ステージにも、6つの4級峠に無数のアップダウンが散りばめられた。

ちなみにヘント〜ウェヴェルヘムと言えば、北海から吹き付ける強風でもおなじみ。この地方で「牛飛ばし」とか「ねじ飛ばし」と呼ばれる突風が、夏場に吹き荒れることはそれほどないが、それでも最大限に軽警戒すべし。この日もラスト約25kmで、進路を90度変え、海沿いの道へと入る。

ステージ最後の難関は、残り10.8km地点の、4級キャップ・ブラン・ネ。「白鼻岬」と言う名の900m、7.5％の上りを抜け出す頃、先頭集団は果たして巨大なままだろうか。

最初の4級カッセル坂、たしかに、上ったことあります。ダンケルク4日間レースで通ることもありますし、ヘント〜ウェヴェルヘムでも、わざわざここを上るためにフランス側に出て、またベルギーへ入る、そんな使われ方してますよね。道幅も狭いし、きつい坂ですけど……レース序盤なので、ステージ争いにはそこまで重要なポイントではないのかな。

ただ、山岳が6つもあるので、マイヨ・ア・ポワを狙う選手にとっては、最初のこのカッセル坂から大切になってきます。もしかしたら、ステージ中盤以降は、山岳ポイントを巡って逃げと集団との追いかけっこが始まるのかも。山岳ジャージっていい宣伝にもなるし、アピールにもなるんで、ここまで山岳ジャージを着てきた小さなチームが追走に加わるというか……。これがビックチームだった場合は、そこまで気にしないで、もう行っちゃえばいいよって感じになるんですけど。

最終的にはスプリントチーム次第です。戦える脚のあるスプリンターがいるのであれば、チームとしてはここを取っておきたい。でもアップダウンが多いので、コントロールはかなりヘビーになる。風はそれほど強くないはずなんですが、むしろこの辺は舗装状態が悪くて危険です。逃げてる選手たちが前できっちり先頭交代した場合、もしかすると、うまくいけばぎりぎり逃げ切る可能性もあるかも。もしくは、まだ1週目ですし、休息日の翌日で選手たちの身体もフレッシュなので、終盤の上りで集団から有力な選手が飛び出していく可能性もあります。

もしも集団フィニッシュになった場合、最後の4級が900mで7.5%……。うーん、900mであればファビオ・ヤコブセンでもいけると思いますけど……いや、どうかな。実はヤコブセンって意外に上れないんですよ。僕がアシストを終えて、ゆっくり上ってる時に、一緒に上ったことあるんですけど。むしろマチュー・ファンデルプールとかワウト・ファンアールトとか、そういうタイプのスプリンター向きでしょう。

解説：別府史之 / 文：宮本あさか