ツール・ド・フランス2022

ABOUT
ツール・ド・フランスとは

ツールがやってきた


ツール・ド・フランスとは

ツール・ド・フランスとは 栄誉ある「マイヨ・ジョーヌ」こと、黄色に輝くリーダージャージを目指して男たちが凌ぎを削る

自転車ロードレース界の頂点に燦然と輝く。世界中の子どもたちはツール・ド・フランスに憧れてプロを目指し、プロ選手は栄光の象徴、黄色いマイヨ・ジョーヌを身にまとう夢を見る。真夏の3週間かけて一行は雄大な野山を駆け巡り、そのコース沿道にはバカンスを楽しむ老若男女が大挙して詰めかける。TVの前では、地球上の190を超える国の熱狂的なファンたちが、連日連夜、熱戦の様子をじっと見守る。

1903年に産声をあげたフランス一周は、世界大戦で2度の中断を除けば、毎年変わることなく世界最高峰の戦いを演出してきた。2020年は大会史上最も遅い9月閉幕にずれ込みながらも、自転車界の牽引役であり、フランス市民の希望の灯であるツールは、新型コロナウイルス禍にさえ負けなかった。

そして、この2022年7月、ツールはデンマーク・コペンハーゲンから走り出す。コロナの影響で2020年開催予定だったサッカー欧州選手権が1年延期され、それに押し出される形でツールの北欧訪問も1年延びた。1954年に初めてフランス国外で開幕を迎えて以来24度目の外国スタートが……なによりツールにとって最北の地からの旅立ちが、ついに実現する。

自ずと第109回ツール・ド・フランスの旅程は少々変則的なものとなる。参加全22チーム・176選手は、いつもの土曜日開幕ではなく、7月1日の金曜日からスタート。さらにデンマークの3日間を終えたら、月曜日は1日丸ごと「移動日」に当てられる。お隣の国のグランツール、ジロ・デ・イタリアではすでに数回用いられてきた手法だが、ツールがこういったスケジュールを採用するのは史上初めての試みだ。

全21ステージの戦いの皮切りは、個人タイムトライアル。コペンハーゲン市街地を駆け抜ける全長13.2㎞の独走種目が、今大会最初のマイヨ・ジョーヌを選び出す。その後は完全なる平坦ステージ6回、起伏ステージ7回、山岳ステージ6回。うち上りフィニッシュはトータル10回。また移動日の他に、2度の休息日も設けられた。途中でベルギーとスイスにも立ち寄りつつ、最終日前夜に改めて個人タイムトライアル40.7㎞を争ったら、7月24日(日)、もちろん全長3346.5㎞の締めくくりにパリのシャンゼリゼ大通りにたどり着く!

2022年大会の最終王者は、おそらく偉大なるフランドル系クラシックライダーでもあらねばならない。大会の序盤5日間は、地形だけ見ればほぼ平坦ながら、明快単純な大集団スプリントステージが予想されるのは第3ステージだけ。2日目には海の上を横切る全長18㎞グレート・ベルト橋で、恐ろしい風分断が起こりかねないし、4日目は細かい急坂群が危険なアタックを誘発するかもしれない。なにより第5ステージには、全11ヶ所・通算19.4㎞にも渡るパリ〜ルーベの石畳が待っている!

この夏に輝きたいなら、とてつもないパンチ力も必要だ。なにしろ大会6日目以降は、アルデンヌ風の短い急坂から、本物の山登りまで、ほぼ連日上りフィニッシュが襲いかかる。いわゆる激坂も満載。特に第7ステージのラ「シューペル」プランシュ・デ・ベル・フィーユの最大勾配24%の上りや、第14ステージの平均勾配10.2%のマンド登坂は、凄まじい爆発力を勝者に求めるのだ。

つまり大会7日目のプランシュ・デ・ベルフィーユで、プロトンはヴォージュ山塊へと足を踏み入れると、そこからジュラ山塊を駆け抜けてアルプス山脈へ。さらには中央山塊を経由し、ピレネー山脈へと向かう。

大会2週目、3日間のアルプス大戦へと突入するツール一行は、標高への耐性も大いに試される。第11ステージに標高2642mガリビエ→標高2413mグラノン、つまり2022年グランツールで最も標高の高い地を通り、2022年グランツールで最も標高の高いフィニッシュ地へとたどり着かねばならない。しかもガリビエは翌第12ステージでも再度通過するが、この日はむしろラルプ・デュエズの21のつづら折りの、観客の熱狂と伝統の重みが戦いをよりいっそう燃え上がらせる。

一方でステージ距離に関しては、今年はそれほど極端なものはない。昨大会は249㎞、220㎞、207㎞と果てしなく長いステージが選手たちを疲弊させたが、今年は6日目の220㎞が最長で、あとは202.5㎞が2回。また近年もてはやされてきたダウンヒルフィニッシュも、かろうじて第16ステージの1度のみ(しかも山頂からフィニッシュまでは27㎞と遠い)。

この第16ステージから、ピレネー山脈の最終決戦3日間は始まる。アルプスの難しさがうんざりするほど長い上りと標高、さらには風の強い谷間で象徴されるなら、ピレネーの険しさは山と山の間に一切の谷間がないこと。だからこそ第17ステージは、約130㎞の短距離コース後半に4つの峠が詰め込まれ、翌日も約143㎞のコースの後半で、超級→1級→超級と、息つく間もなく難関に挑みかからねばならない。

個人タイムトライアルに関しては、昨大会よりは5㎞ほど短いものの、総距離53.9㎞とたっぷり用意された。しかも初日TTはど平坦で、パリ到着前夜の40.7㎞は2014年以来最長。総合表彰台を狙う「ピュア」クライマーたちにとっては、かなりの難問だ。

「ピュア」スプリンターたちの活躍の場はそれほど多くはないものの(第2、3、19、21ステージ)、開催委員会も鬼ではない。アルプスやピレネーでは山の「前」に中間ポイントを設置し、俊足たちのマイヨ・ヴェール争いを鼓舞する。またこの2年間マイヨ・ジョーヌ=マイヨ・ア・ポワとなった反省から、「超級フィニッシュのポイント2倍ルール」廃止。終盤の山にボーナスタイムポイントを挟み込む試みも同時に中止され、より遠くまで逃げることが可能になり、逃げ選手の手に赤玉チャンスが帰ってくる。

7月24日の日曜日、パリのシャンゼリゼは、すべてのプロトンに解放される。男子だけでなく……女子にも!記念すべきツール・ド・フランス・ファム第1回大会第1ステージのフィニッシュと、第109回ツールのフィニッシュが、世界で一番美しい大通りで立て続けに行われる。

text:宮本あさか












SHARE

  • Facebook
  • LINE
  • Twitter