ブエルタ・ア・エスパーニャとは?
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ブエルタ・ア・エスパーニャとは

ブエルタ・ア・アスパーニャとは

夏の終わりに、新たな3週間のバトルが幕を開ける。シーズン3つ目、そして最後のグランツール。ある者は春先からの好調さそのままに、ある者は今季の心残りを晴らすべく……情熱の赤いジャージ、マイヨ・ロホを巡る戦いへと漕ぎ出していく。
史上初めてイタリアから「グラン・サリダ」、4つの国をまたにかけて戦う
2025年に晴れて90周年、第80回大会を祝うスペイン一周レースは、大いなる国際化へと舵を切った。2年連続にして大会6度目の国外開幕。ポルトガル2回、オランダ2回、フランス1回に続き、史上初めてイタリアが、「グランデ・パルテンツァ」ならぬ「グラン・サリダ」を引き受ける。しかも、そこからフランスへ、さらにはアンドラ公国にも足を伸ばし、4つの国をまたにかけて戦うのだ。
ただ、「ブエルタらしさ」は、決して変わらない。かつての王都トリノで集結した全23チーム・184選手が、華やかな開幕スプリントを披露した翌日、2日目にして早くも山頂フィニッシュを争う!
本格的な山頂フィニッシュはなんと全部で10回
「山だらけのグランツール」の呼び声を裏切ることなく、その後のコースにも、ぎゅうぎゅうに山が詰め込まれた。本格的な山頂フィニッシュはなんと全部で10回(第2、6、7、9、10、13、14、16、17、20ステージ)。加えて第4ステージも4級フィニッシュ。また今シーズンの3大ツールの中で、レース総距離は3189.8kmと最も短いものの、累積獲得標高はジロ52325km、ツール52500kmに対して、ブエルタは53814mとはるかに厳しい設定を誇る。
つまり俊足自慢たちは、初日のスプリントチャンスを絶対に逃してはならない。その先、完全に「ピュア」なスプリントステージは、第8、19、21ステージの3度しか残されていない。
イタリア開幕は、第4ステージ半ばの、標高2000m超のアルプス越えでクライマックスに達する。最後はフランス側でフィニッシュを争ったら、いよいよブエルタ一行は本国スペインへ。ちなみに近年のグランツールで主流の「国外からの移動日=休息日」は、今回は設けられない。選手たちに休む間は与えられず、翌日に第5ステージを迎える。
大移動の後の一戦目は、チームタイムトライアル。ジロやツールではめったに見かけないこの団体種目を、ブエルタは大好きで、この10年で5回目の登場だ。山ばかりのクライマー大戦において、特に今回のど平坦なTTTは、総合のヒエラルキーに刺激的な影響を与えるに違いない。チームリーダーために尽くした健脚ルーラーたちに、やはり平坦な第18ステージの個人タイムトライアルで、自分のために輝く機会が与えられるのは幸いだ。
アンドラ公国へ
スペインに入ったばかりだというのに、6日目には、プロトンは早々にアンドラ公国へと向かう。もちろんピレネーの小国が見届けるのは、今大会2回目の山頂フィニッシュ。赤いジャージの行方を本気で占う、山頂2連戦の初日でもある。翌第7ステージの、アンドラから再びスペインへ帰ってくるコースでは、さらに起伏は激しさを増す。獲得標高は1週目最高(大会全体では2番目)の4211mにもいたる。
山頂フィニッシュで大会1週目は締めくくられ、大会2週目は山頂フィニッシュでスタートする。とことん山頂三昧のブエルタだが、ただし自転車ロードレースの面白さは、決して難関山頂勝負にとどまらない。第11ステージではクラシック風コースも用意された。7つの中級山岳が組み込まれたアップダウンバトル。ブエルタ閉幕2週間後の世界選手権や、さらに1週間後の欧州選手権へ向けたテストマッチとしても注目したい。
第13ステージでは勾配が23%を超える魔の山アングリル
それでも、やはり、スペインの北縁だけをひたすら駆け巡る大会2週目の、最大の注目は第13ステージ。グランツールに名を成す数々の難峰の中でも指折りの激坂、超級アングリルが、道の終わりにそびえ立つ。ところによっては勾配が23%を超える魔の山であり、過去9度ブエルタに登場しながらも、正式な総合覇者に征服されたのはわずか1度(2008年コンタドール)という、特異な存在でもある。2025年大会の総合争いも、アングリルで大きく動き、大いに混沌を増すのかもしれない。翌14日目にも、非常に厳しい山頂フィニッシュがねじ込まれている。
2度目の休息日が明けると、最終週のブエルタは、さらに畳み掛けるように選手たちに難題を突きつける。16日目の決して休みボケを許さないアップダウンステージに、17日目の山頂フィニッシュ。第18ステージに平坦TTを控えているからこそ、クライマーたちは可能な限りタイム差を稼ぎに来るはずだ。そして失った時間は、第20ステージ、最終日前日に全力で取り戻さねばならない。
最後の山頂フィニッシュは超級ボラ・デル・ムンド
2025年最後の山岳、最後の山頂フィニッシュ、最後の総合争いの舞台として、ふさわしい山が選ばれた。超級ボラ・デル・ムンド。蛇のようにくねる山道の終わりには、超級20%ゾーンも潜み、今大会最高地点である標高2251m地点に、フィニッシュラインが引かれる。栄光の行方は、ぎりぎりまでもつれ込むかもしれない……そんな期待を抱かせる!
恐ろしい山々を必死で乗り越えてきたすべての選手たちが、フィナーレを祝うのはマドリード。1年前は珍しくTTで幕を閉じたが、今年は3年ぶりに、スペインの首都の目抜き通りに周回コースが設けられた。贅沢な大集団スプリントフィニッシュで、2025年グランツールの戦いは、大団円を迎えるのだろう。
text:宮本あさか
歴代優勝者
- 第1回
- 1935年 フスターフ・デロール
- 第2回
- 1936年 フスターフ・デロール
- 第3回
- 1941年 フリアン・ベレンデーロ
- 第4回
- 1942年 フリアン・ベレンデーロ
- 第5回
- 1945年 デリオ・ロドリゲス
- 第6回
- 1946年 ダルマシオ・ランガリカ
- 第7回
- 1947年 エドワード・ファン・ダイク
- 第8回
- 1948年 ベルナルド・ルイス
- 第9回
- 1950年 エミリオ・ロドリゲス
- 第10回
- 1955年 ジャン・ドット
- 第11回
- 1956年 アンジェロ・コンテルノ
- 第12回
- 1957年 ヘスス・ロローニョ
- 第13回
- 1958年 ジャン・スタブリンスキ
- 第14回
- 1959年 アントニオ・スアレス
- 第15回
- 1960年 フランス・デ・ムルダー
- 第16回
- 1961年 アンヘリノ・ソレル
- 第17回
- 1962年 ルディ・アルティヒ
- 第18回
- 1963年 ジャック・アンクティル
- 第19回
- 1964年 レイモン・プリドールr
- 第20回
- 1965年 ロルフ・ヴォルフショール
- 第21回
- 1966年 フランシスコ・ガビカ
- 第22回
- 1967年 ヤン・ヤンセン
- 第23回
- 1968年 フェリーチェ・ジモンディ
- 第24回
- 1969年 ロジェ・パンジョン
- 第25回
- 1970年 ルイス・オカーニャ
- 第26回
- 1971年 フェルディナント・ブラック
- 第27回
- 1972年 ホセ・マヌエル・フエンテ
- 第28回
- 1973年 エディ・メルクス
- 第29回
- 1974年 ホセ・マヌエル・フエンテ
- 第30回
- 1975年 アグスティン・タマメス
- 第31回
- 1976年 ホセ・ペサロドーナ
- 第32回
- 1977年 フレディ・マルテンス
- 第33回
- 1978年 ベルナール・イノー
- 第34回
- 1979年 ヨープ・ズートメルク
- 第35回
- 1980年 ファウスティーノ・ルペレス
- 第36回
- 1981年 ジョヴァンニ・バッタリン
- 第37回
- 1982年 マリーノ・レハレタ
- 第38回
- 1983年 ベルナール・イノー
- 第39回
- 1984年 エリック・カリトゥー
- 第40回
- 1985年 ペドロ・デルガド
- 第41回
- 1986年 アルバロ・ピノ
- 第42回
- 1987年 ルイス・エレラ
- 第43回
- 1988年 ショーン・ケリー
- 第44回
- 1989年 ペドロ・デルガード
- 第45回
- 1990年 マルコ・ジョヴァンネッティ
- 第46回
- 1991年 メルチョル・マウリ
- 第47回
- 1992年 トニー・ロミンゲル
- 第48回
- 1993年 トニー・ロミンゲル
- 第49回
- 1994年 トニー・ロミンゲル
- 第50回
- 1995年 ローラン・ジャラベール
- 第51回
- 1996年 アレックス・ツェーレ
- 第52回
- 1997年 アレックス・ツェーレ
- 第53回
- 1998年 アブラハム・オラーノ
- 第54回
- 1999年 ヤン・ウルリッヒ
- 第55回
- 2000年 ロベルト・エラス
- 第56回
- 2001年 アンヘル・ルイス・カセーロ
- 第57回
- 2002年 アイトール・ゴンサレス
- 第58回
- 2003年 ロベルト・エラス
- 第59回
- 2004年 ロベルト・エラス
- 第60回
- 2005年 ロベルト・エラス
- 第61回
- 2006年 アレクサンドル・ヴィノクロフ
- 第62回
- 2007年 デニス・メンショフ
- 第63回
- 2008年 アルベルト・コンタドール
- 第64回
- 2009年 アレハンドロ・バルベルデ
- 第65回
- 2010年 ヴィンチェンツォ・ニバリ
- 第66回
- 2011年 クリストファー・フルーム
- 第67回
- 2012年 アルベルト・コンタドール
- 第68回
- 2013年 クリストファー・ホーナー
- 第69回
- 2014年 アルベルト・コンタドール
- 第70回
- 2015年 ファビオ・アル
- 第71回
- 2016年 ナイロ・キンタナ
- 第72回
- 2017年 クリストファー・フルーム
- 第73回
- 2018年 サイモン・イェーツ
- 第74回
- 2019年 プリモシュ・ログリッチ
- 第75回
- 2020年 プリモシュ・ログリッチ
- 第76回
- 2021年 プリモシュ・ログリッチ
- 第77回
- 2022年 レムコ・エヴェネプール
- 第78回
- 2023年 セップ・クス
- 第79回
- 2024年 プリモシュ・ログリッチ