ツール・ド・フランス2024

オッタヴィオ・ボッテッキアが、イタリア人として史上初めてツール総合覇者になってからちょうど100年。ツール史上初の外国スタートから70年。すでにステージ地なら過去11大会で迎え入れてきたイタリアが、史上初めて、ツール開幕を祝う。ついにマリア・ローザの国から、マイヨ・ジョーヌ争奪戦が走り出す！

開幕の都市には、当然のように、ジーノ・バルタリの故郷フィレンツェが選ばれた。歴史上で唯一、第二次世界大戦の前（1938年）と後（1948年）にツールを勝ち取った英雄にオマージュを捧げつつ、向かうはマルコ・パンターニが20年前に天に召された町リミニ。タデイ・ポガチャルがジロとツールの同一年制覇を目指す今大会にふさわしく、1998年、つまり現時点では最後に「ダブルツール」を成し遂げた王者に思いを馳せる。

肝心のコースは、開催委員長クリスティアン・プリュドムが、「史上最も難しい大会初日」と自信を持つ。初日から200km超えで、しかも獲得標高3600mは、クレイジーだった1年前の第1ステージより300m多い。アペニン山脈を横切るコース上には7つの起伏が待ち構え、大会最初の山岳は、軽い足慣らしどころかいきなり2級の上りだ。

4つの山岳が連続で登場

戦いが激化するのは、おそらく残り80kmを切ってから。まるでのこぎりの歯のように、4つの山岳が連続で登場する。ちなみにラスト2つは、ツールのプロトンが史上初めて入国するサン・マリノ共和国に待ち構えている。

ただし、最後の難関、3級コート・ド・サン・マリノを上り詰めても、いまだステージは26km以上も残っている。果たして上りで仕掛けた選手が、フィニッシュまで逃げ切れるか。それとも下りと最終盤の直線路を利用して、後方から追いついてくるか。賭けられているのは、第111回大会1枚目のマイヨ・ジョーヌだ。

初日からまるでローラーコースターのような地形です！ゆっくりレースが進むとは思えない。とにかく、波乱含みの、エキサイティングなステージになることは間違いないです。

序盤からの逃げ切りはないはずだし、大集団スプリントもおそらくない。獲得標高3600mという数字だけ見れば、それほどきついわけではないんだけれど、ただ山岳ひとつひとつの距離がスプリンターにとっては長すぎる。アルデンヌクラシックをこなせるタイプに有利かな。

2〜30人の少集団フィニッシュか？

予想されるのは、総合系リーダーを含む2〜30人の少集団フィニッシュ。やっぱりポガチャルのような選手が、積極的に動いてくるだろうと。最後から4つ目と3つ目の2級山岳が、距離も勾配もきつい。一方で最後の2つの3級山岳は、ある程度はスプリンターでも乗り切れると思う。それに最後の3級からフィニッシュまで距離があるから、マチューやワウトのような速い選手が追いついてきて、最後に集団の頭を取ってしまうかもしれない。だからこそ2級で有力どころは動かなきゃならない。

初日は誰にでもマイヨ・ジョーヌを着るチャンスがある。この日を逃したらもはや永遠に着られる機会がない選手も多いから、チャンスを狙って、終盤に果敢に飛び出す選手もいるはずです。

解説：別府史之／文：宮本あさか