コースの特徴
最後の勝負地ヴォージュ山塊へと大急ぎで接近する、いわゆる「移動ステージ」。前夜までアルプスで激しいバトルを繰り広げた総合勢にとっては、翌日の個人タイムトライアルのために、できる限り体力温存に務めるべき1日となる。
むしろタイムトライアル巧者でも、パリで勝てるピュアスプリンターでもない、そんな選手が頑張るべき日。逃げ男、パンチャー、ルーラー、そして「上れる」という枕詞のつく頑丈なスプリンター。様々な脚質の選手が、最後の区間勝利のチャンスに向けて、勝負を打つ。
行く手に待ち受ける難所は、4級峠がひとつだけ。ただしスタートから北へと一直線で上がった後、コースは西へと進行方向を変える。ここまでアルプス→中央→ピレネー→中央→ジュラ→アルプスと山地を巡ってきたプロトンは、またしてもジュラ山脈へ足を踏み入れる。つまりステージ後半は細かな起伏がいっぱいだ。
ぐるりと円を描くようにジュラ山脈の裾野を巡ったら、「ジュラの真珠」シャンパニョルへとたどりつく。マイヨ・ジョーヌ決着まで、あと24時間に迫っている。
文:宮本あさか
【こぼれ話】アシスト
テレビ中継を見ていると、あることに気がつくだろう。勝利を託されたチームリーダーよりも、むしろ、長時間カメラの真ん前を走っているのは全く違う選手であることに。
こんな彼らは、フランス語でドメスティック(下僕)とか、イタリア語でグレガリオ(なんの等級もない兵士)とか呼ばれる。つまり自らのためではなく、ただリーダーのためだけに全力を尽くすアシストたち。
いわゆる縁の下の力持ちたちの、作業内容は多岐にわたる。逃げを潰したり、タイム差をコントロールしたり、ボトルやレインジャケットを運んだり。リーダーを好ポジションへと連れて行くために、アシスト数人で隊列を組み、猛スピードで最前列を突き進む。リーダーがパンクすれば、自らの車輪を差し出す。山で苦しんでいたら、側について励まし続ける。
リーダーが強く光り輝くためには、有能なアシストの存在が絶対不可欠だ。かつてなら世界選手権個人タイムトライアル3勝のマイケル・ロジャースが、現在なら元世界王者&モニュメント覇者ミハウ・クフィアトコフスキーが、その高い才能をグランツール総合覇者に請われるのは残念ではあるが、必然でもある。また若きリーダーは、ベテランアシストに「教育係」の役目も求める。当時24歳のティボー・ピノが、スティーヴ・モラビトに「僕のアシストになってくれませんか」とスカウトしたのは有名な話だ。
もちろんアシストの滅私の働きに、リーダーは成績で応えねばならない。賞金はアシストたちと山分けするのが暗黙のルールだし、グランツールで総合優勝した場合は、いわゆる「お礼」を用意するのが慣例。どうやら優勝年度が刻まれた記念の腕時計が多いらしい。
中でもスプリンターは、アシスト、つまりスプリント列車要員との相性を非常に重要視する種族である。
たとえばロット所属時代アンドレ・グライペルは、自らの契約更新の際には、必ずお気に入りの列車要員の契約更新もチームに確約させた。カレブ・ユアンはミッチェルトンからロットへ移籍する際に、専用発射台ロジャー・クルゲを引き抜いていったし、エリア・ヴィヴィアーニも、ドゥクーニンク・クイップステップからサバティーニを連れてコフィディス入りを果たした。
強かった時代の間隔を取り戻すため、かつてのアシストを呼び戻したスプリンターもいる。それがツール区間30勝のマーク・カヴェンディッシュだ。2009年からの3年間で14勝をお膳立てしてくれたマーク・レンショー、2007年からの6年間、ルームメートとして、列車指揮官として自らを導いてくれたベルンハルト・アイゼル、2013〜2015年にかけて集団制御職人として精密な仕事をしてくれたジュリアン・ヴェルモートを、次々とディメンション・データへ引き入れたのだ。残念ながら2020年、カヴと3人とは離れ離れになった。前者2人は引退し、3人目は別の道を歩き始めた。
文:宮本あさか
距離 | ポイント | 現地時間 | 日本時間 | ||||
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41KM/H | 43KM/H | 45KM/H | 41KM/H | 43KM/H | 45KM/H | ||
0km地点 | スタート地点 | 13:45 | 13:45 | 13:45 | 20:45 | 20:45 | 20:45 |
82km地点 | 4級山岳 | 15:45 | 15:39 | 15:34 | 22:45 | 22:39 | 22:34 |
117.5km地点 | 中間スプリント | 16:37 | 16:29 | 16:22 | 23:37 | 23:29 | 23:22 |
166.5km地点 | ゴール地点 | 17:48 | 17:37 | 17:27 | 24:48 | 24:37 | 24:27 |