コースの特徴
チームプレゼンテーションから含めて4日間過ごしたニースを離れて、いよいよプロトンは本格的な「フランス一周」へと乗り出す。フランス全土に散らばる5つの山塊(アルプス、中央、ピレネー、ヴォージュ、ジュラ)をくまなく巡るために、この日は198kmの長距離移動を行う。
とにかく2020年大会は山が多い。早くも本格山岳ステージを終えた翌日も、行く手には4つの山岳(3級×3、4級×1)と、無数の起伏が待ち受ける。コース前半でアルプス山脈西側の亜高山帯、「プレアルプ」自然公園を通過するのだから当然だ。
この日プロトンが走る南仏プロヴァンスの細道は、むしろ「ナポレオン街道」として知られる。1815年エルバ島から脱出したナポレオン1世が、この道をたどってパリへと上り、再び天下を取った栄光の道。また色とりどりの花が咲き誇る、美しき道でもある。45km地点でバラ園の多い「香水の町」グラースを、ステージ終盤では「ラベンダー街道」をかけぬける。残念ながらバラやラベンダーは少々季節外れだけど、きっといつもとは違う花が、我々の目を楽しませてくれるだろう。
開催委員会の予想では、スプリンターに有利。ただしフィニッシュ地のシストロンは、パリ〜ニース2018年大会で、クザンとポリッツがぎりぎりの逃げ切りを成功させた舞台として記憶に新しい。一方で2015年ドーフィネでは大集団スプリントで勝負が決した。果たして8月最後の日、どんな結末が待ち受けているだろうか。
文:宮本あさか
【こぼれ話】食事もトイレもサドルの上

自転車ロードレースは、マラソンのように、2時間とちょっとで終わるわけではない。サッカーのようにハーフタイムがあるわけでも、バスケットボールのようにタイムアウトがあるわけでもない。
たとえばシーズンで最も距離の長いレース、ミラノ〜サンレモの2020年大会では、全長305km・7時間16分を休みなく駆け抜けた。そもそも1903年ツール・ド・フランス第1回大会の、1区間あたりの平均走行距離は405km。最長で18時間もぶっ通しで走っている。
肝心の2020年ツール・ド・フランスの、1日あたりの走行距離は平均167.3km(個人タイムトライアル除く)。平均的な走行時速はおよそ40km前後だから、選手たちは1日あたり4時間以上ペダルを回すことになる。たしかに117年前と比べれば、ずいぶんと短くなった。ただし1回大会が6ステージ制だったのに対して、現在は21ステージ制。3週間、毎日走り続ける。合間の休日は、たったの2日しかない。
つまりロードレースの選手たちは、人生の多くの時間を、サドルの上で過ごす。走りながら水分を補給する。スタート時には、自転車に550mlのウォーターボトルを2本装備。途中チーム監督や給水バイク、補給所などから、新たなボトルを走りながら受け取る。1回のツールで使用されるボトル総数は約3万5千本。これは1選手が1日あたり8〜9本、自転車に乗りながらを飲んでいることになる。
食事もサドルの上で。自転車ジャージの背面にポケットがついているのは、ひたすら補給食を詰め込むためなのだ。チームスタッフお手製のライスケーキや、ジャムやはちみつを詰め込んだミニパン、エネルギーバーやジェルなど……ハイカロリーの小さな塊を選手たちはせっせと食べる。
実は選手にとっては、食べることも大切な仕事のひとつ。たとえば2013年、激しい山の戦いに気を取られ、食べるのを忘れてしまったクリス・フルームが、レース最終盤に突然ガス欠。低血糖症に苦しみ、ライバルたちからずるずると遅れてしまった……。チームメートが規則違反を犯してまで補給食を運んでくれたおかげで、ペナルティ20秒は食らったけれど、なんとか生き延びた。おかげで初めての総合優勝を逃さずに済んだ。
実は長時間のレースだから……選手たちはトイレさえも走りながら済ませる!
たいていはちょっとのんびりした時間帯に、数人で路肩に立ち止まって、いわゆる連れションをする。忙しい時間帯には、走りながらする。お腹が痛くなったりすると……いきなり自転車を投げ捨てて野原にかけこみ、ジャージを脱ぎ捨てる。2017年ジロ・デ・イタリアのトム・デュムランは、勝負が加熱している時間帯にそれをやってしまった!いやいや、かつてのヤン・ウルリッヒのように、これさえ走りながら済ませてしまう場合もあるのだ(汗)。
文:宮本あさか

距離 | ポイント | 現地時間 | 日本時間 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
38KM/H | 40KM/H | 42KM/H | 38KM/H | 40KM/H | 42KM/H | ||
0km地点 | スタート地点 | 12:20 | 12:20 | 12:20 | 19:20 | 19:20 | 19:20 |
55km地点 | 3級山岳 | 13:46 | 13:42 | 13:38 | 20:46 | 20:42 | 20:38 |
63.5km地点 | 3級山岳 | 14:00 | 13:55 | 13:51 | 21:00 | 20:55 | 20:51 |
117.5km地点 | 3級山岳 | 15:25 | 15:16 | 15:08 | 22:25 | 22:16 | 22:08 |
152.5km地点 | 4級山岳 | 16:21 | 16:09 | 15:58 | 23:21 | 23:09 | 22:58 |
160.5km地点 | 中間スプリント | 16:33 | 16:20 | 16:09 | 23:33 | 23:20 | 23:09 |
15:48km地点 | ゴール地点 | 17:33 | 17:17 | 17:03 | 24:33 | 24:17 | 24:03 |