コースの特徴
山巡りの2020年ツールも、ついに最後のアルプス越え。5つの難峠がステージ全体に散らばり、累計獲得標高は4000mに達する!
誰にとっても最終決算の時。山岳ジャージ争いがいまだ決していない場合、この日が大量ポイント収集の最後のチャンスとなる。また諦めの悪いスプリンターたちは、スタート直後に中間ポイントを争うだろう。なにしろ制限時間次第では、この日の終わりまで、緑ジャージの持ち主が無事にパリまでたどり着けるか分からないのだ。
のこぎりの歯のように、ぎざぎざと起伏が連なる。スタートから約30km、1級ロズラン(18.6km、6.1%)の長い山道から、ひたすら上っては下る、上っては下る、の繰り返し。下りきった先に、谷間など一切存在しない。平坦な道でほっと一息つくことも、前を行くライバルに再合流することも、不可能だ。
その後は3級→2級→1級とこなし、いよいよ最後の山、いわば「ラスボス」の超級プラトー・デ・グリエールへ(ボーナスポイント)。登坂距離は6kmと短いが、勾配はひときわ厳しい平均11%、最大15%。しかも激坂を勢い良く駆け上がった先の、山頂から1800mは..砂利道だ!
第2次世界大戦で抵抗運動の中心地となったこの山は、2018年ツール初登場。2年前はフィニッシュまで90km以上も離れていたせいか、ショーを盛り上げはしたが、勝負を左右することはなかった。今回はフィニッシュまで30km。晴れていれば真っ白な砂埃が、雨ならところどころに水たまりができそうな未舗装路で、栄光へのアタックが決まるかもしれない。
最後に無印フルリー峠を経由したら、全長10kmの下りフィニッシュ。総合争いの選手にとって、山での「直接対決」は、ここで終了する。
文:宮本あさか
【こぼれ話】グルペット
山を飛ぶように駆け上がり、標高の高い場所で栄光を争うクライマーたちのはるか背後には、もうひとつの涙ぐましい戦いがある。グルペット――。イタリア語で「小さな集団」という意味のこの言葉は、自転車界においては、難関山岳ステージを走り終えるために必死に奮闘する一団を指す。
グルペットを構成するのは主に、平地に特化したスプリンターたち。ラスト200mで最大限の爆発力を発揮するために、分厚く発達した太ももの筋肉と、密集した大集団フィニッシュでライバルたちに当たり負けしないように、筋肉で武装した上半身。つまり体重の重いスプリンターたちは、たいていは山が大の苦手。羽毛のように軽い山岳巧者たちがすいすいと前進していくのに対して、どうしても起伏では遅れてしまう。
しかし不運なことに、毎日のステージには制限時間がある。スプリンターたちは、のんびりゆっくりフィニッシュラインを越えればいいわけではない。集団の最後尾を走る「ほうき車」(棄権者を回収する車)に捕まってしまったら、即時ゲームアウト。
しかも出走前にあらかじめ「今日は30分遅れてもいいよ!」と、制限時間が決まっているわけではない。コースの難易度とステージ勝者の走行時速の関係で、「遅れてもいいタイム」がはじきだされる。すなわち毎日その時間は変化するし、毎日走りながら選手たちは頭の中で計算しなければならないのだ。
だからこそグルペットには「隊長」が必要だ。たいていはレース経験豊富なベテランであり、他のチームの選手たちにも叱咤激励できるキャプテンであり、なにより最強スプリンターの名アシストでなければならない。1990年代はマリオ・チポッリーニのアシスト、エロス・ポーリが大役を引き受けた。マーク・カヴェンディッシュが最強だったころは、4ヶ国語堪能なベルンハルト・アイゼルが適役だった。ロビー・マキュアンやアレッサンドロ・ペタッキといったエーススプリンターが、自ら少集団を率いた時代さえある。
隊長の指揮に従い、チームの枠を超えて協力しあって、グルペットは完走を目指す。上りは脱落者を出さぬようゆっくりと、平地はみんなで先頭交代しながら、そして下りはできる限り速く。時速100km超も当たり前!
それでも、どうしても制限時間に間に合いそうもない場合は、……できるだけグルペットの規模を大きくし、できるだけ有力選手を集めて、恩赦を期待すべし。だってさすがの審判団も、一気に30人もレース除外処分を下すわけには行かないのだから。
文:宮本あさか
距離 | ポイント | 現地時間 | 日本時間 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
33KM/H | 36KM/H | 39KM/H | 33KM/H | 36KM/H | 39KM/H | ||
0km地点 | スタート地点 | 12:30 | 12:30 | 12:30 | 19:30 | 19:30 | 19:30 |
14km地点 | 中間スプリント | 12:53 | 12:52 | 12:51 | 19:53 | 19:52 | 19:51 |
46km地点 | 1級山岳 | 14:12 | 14:04 | 13:59 | 21:12 | 21:04 | 20:59 |
67.5km地点 | 3級山岳 | 14:44 | 14:34 | 14:28 | 21:44 | 21:34 | 21:28 |
91km地点 | 2級山岳 | 15:38 | 15:24 | 15:14 | 22:38 | 22:24 | 22:14 |
117.5km地点 | 1級山岳 | 16:22 | 16:06 | 15:54 | 23:22 | 23:06 | 22:54 |
143.5km地点 | ボーナスタイム 超級山岳 |
17:05 | 16:46 | 16:31 | 24:05 | 23:46 | 23:31 |
175km地点 | ゴール地点 | 17:50 | 17:28 | 17:12 | 24:50 | 24:28 | 24:12 |