コースの特徴
2度目の休息日を終えて、いよいよ2020年の戦いも残り6日。フランス全土に散らばる5つの山地巡りは、なんと2度目のアルプス突入を迎える。
開催委員会は逃げ向きと銘打つ。なにしろスタートからいきなり、プロトンは軽い起伏に放り出される。残り少ない区間勝利のチャンスを狙う者たちや、ステージ上に点在する5つの山岳でポイントを最大限に収集したい赤玉候補たちが、勇んでスピードを上げるに違いない。それとも44.5kmの中間ポイントまで、マイヨ・ヴェール狙いのスプリンターが逃げの形成を許さないだろうか?
2級峠ポルト(7.4km、6.8%)の、実質19kmほど続く山道が終わる頃には、間違いなく逃げが出来上がっているはずだ。やはり20kmほど下ったら、2級ルヴェル(6km、8%)をこなす。そこからグルノーブルの町を迂回するように谷間を走ると、再び選手たちは長い上りへ。1級サン・ニズィエ・デュ・ムシュロット(11.1km、6.5%、ボーナスポイント)は、運命の分かれ道。続く長くなだらかな下り坂で、起死回生のチャンスはまだまだある。もちろん最後に3級ヴィラール・ド・ランス(2.2km、6.5%)で、勝利へ向けてもうひと踏ん張り。
総合争いの選手たちは、「休息日ぼけ」には要注意。そもそも強豪自らが、激しい区間争いを繰り広げる可能性はないだろうか。なにしろヴィラール・ド・ランスでは過去6回のフィニッシュが争われ……うち3回をその年の総合勝者、2回を総合表彰台選手が勝ち取っている。こんな重要なポイントを、みすみす逃したくはないはずだ。
文:宮本あさか
【こぼれ話】全天候型スポーツ
雨ニモマケズ。これぞ屋外スポーツの定めである。風にも雪にも、夏の暑さにも、自転車選手たちは負けてはならない。
たとえば1月に南半球オーストラリアで開催されるツアー・ダウンアンダーでは、時に摂氏40度近を超える。2月は氷雨に打たれ、3月は雪に降られ、4月は大風に吹かれる。5月の高山では、時にぼたん雪さえ降り積もる。
例年7月に開催されるツール・ド・フランスだって、厳しい天候にさらされてきた。欧州の夏はたいていはからりと過ごしやすいのだけれど、地球温暖化のせいで、近年は必ずひどい暑さに襲われる。沖縄で生まれ育った新城幸也選手は、幸いにも暑さは大得意。一方でスロバキア生まれのペーター・サガンは、「オーブンで蒸し焼きにされてるみたい」「こんな暑さで山を登るなんて自殺行為」としょっちゅう愚痴をこぼす。
気温の高さが、大事故につながることもある。2003年にヨーロッパが記録的猛暑に襲われたときなどは、道路のアスファルトが溶け出し……なんとホセバ・ベロキのタイヤが張り付いて、そのまま自転車から放り出されてしまった。大怪我を負い、総合2位のまま、泣く泣く途中リタイアを余儀なくされた。
しかも下界が猛暑になればなるほど、山の上は悪天候になる。2015年の第12ステージの、スタート地は30度で快晴だったのに……フィニッシュ地の山の上は、まるでバケツの底を抜いたような土砂降りだった。さらにひどかったのは2016年大会第9ステージ。山の下は41度、標高2000mを超えるアンドラ・アルカリスは10度。しかも雹やあられが降り注いだ。観客が大急ぎで避難し、誰もいなくなった道の上を、トム・デュムランは黙々と勝利に向かって上り続けた。
昨年の夏は、ついに雹のせいで、ステージが中断された。第19ステージ、フィニッシュへと続く山道は真っ白になり、土砂崩れさえ発生した。走行中の選手たちに慌ててストップがかけられ、途中の山の通過タイムが成績として記された。
ちなみにUCI国際自転車競技連合の規則により、あまりにひどい天候(氷雨、大雪、大風、極端な気温、視界が悪い、大気汚染)の場合、実はレースを中止にすることも可能だ。
さて、2020年のツール・ド・フランスは、史上初めて9月にまたがって開催される。この第16ステージが行われるのは、9月15日。ちょうど1年前の同じ日、ブエルタ・ア・エスパーニャが最終日を迎えている。そう、いつもブエルタの終盤は、山の上はすっかり秋。寒くて、小雨が降って、深い霧に覆われて。日も短い。
つまりはティボー・ピノが「故郷の山みたいで大好き」な天候だ。また痩身のクリス・フルームは、寒さが痩身に堪えるに違いないが、「暑い中を走るほうが好きだけど、雨と寒さは自転車競技の一部」とすっかり悟りを開いている。
文:宮本あさか
距離 | ポイント | 現地時間 | 日本時間 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
39KM/H | 41KM/H | 43KM/H | 39KM/H | 41KM/H | 43KM/H | ||
0km地点 | スタート地点 | 13:20 | 13:20 | 13:20 | 20:20 | 20:20 | 20:20 |
12.5km地点 | 4級山岳 | 13:41 | 13:39 | 13:38 | 20:41 | 20:39 | 20:38 |
44.5km地点 | 中間スプリント | 14:30 | 14:26 | 14:23 | 21:30 | 21:26 | 21:23 |
66.5km地点 | 2級山岳 | 15:13 | 15:06 | 15:01 | 22:13 | 22:06 | 22:01 |
94.5km地点 | 2級山岳 | 15:58 | 15:49 | 15:41 | 22:58 | 22:49 | 22:41 |
143.5km地点 | 1級山岳 ボーナスタイム |
17:21 | 17:07 | 16:54 | 24:21 | 24:07 | 23:54 |
164km地点 | ゴール地点 3級山岳 |
17:52 | 17:36 | 17:23 | 24:52 | 24:36 | 24:23 |