ツール・ド・フランス2020

STAGE 12

第12ステージ

ショヴィニー>サラン・コレーズ

218Km
9月10日(木)午後8:55 - 深夜1:15
/J SPORTS 4J SPORTSオンデマンド
【現地実況・解説版】ステージ全編 午後6:35 ~ 深夜1:30/ J SPORTSオンデマンド限定
2020年ツール最長ステージ
 

コースの特徴

第1ステージ

2020年ツール最長ステージ。そもそも今大会で唯一、200kmを超えた理由は、どうしても立ち寄るべき2つの場所があったから。

1つ目が103km地点のサン・レオナール・ド・ノブラ。「永遠の2番手」レイモン・プリドールが、25歳で結婚して以来、生涯を過ごした村だ。そして2つ目がフィニッシュ地のサラン。元フランス大統領ジャック・シラクはこの村のビティー城の所有者であり、長年に渡り同地方の議員も務めてきた。奇遇にもこの2人は、昨年秋、その長い人生の幕を閉じた。2020年のコースが描かれた後に……!

想い出にゆっくり浸っていられるのは前半まで。「ププ」の村を通過する前後から、道は徐々に起伏を増していく。しかも4級×2→3級→2級と難度もクレシェンド。なにしろここはリムーザン。短い急坂が点在する土地である。2012年に我らが新城幸也がこの地方名を冠したレースで総合優勝を飾っているから、日本の自転車ファンには馴染みのある地名かもしれない。

残り25.5km地点の2級シュク・オ・メイ(3.8km、7.7%、ボーナスポイント)には、12%の急勾配ゾーンも待ち構える。その後もフィニッシュまで道は決して平坦にはならない。ちなみに19年前、人口275人という今大会で最も小さな村サランに初めてツール一行が到着した時には、25分以上もの大差がつく大逃げが決まっている。

文:宮本あさか

【こぼれ話】逃げの芸術家

逃げの芸術家

スプリンターでも、クライマーでも、パンチャーでも、タイムトライアリストでもない選手にとって、勝つための方法はひとつ。ただスタート直後から逃げること。フランスではこんな選手のことを「バルドゥール(Baroudeur)」と呼ぶ。言葉の本来の意味は「冒険人生を送る旅人」であり、「戦いに自ら飛び込む人」。そう、逃げる、と言う行為は、サイクルロードレースにおいては積極果敢な攻撃なのだ。

もちろん逃げにも色々種類はある。ツール・ド・フランスの初日数日間に多く見られるのは、山岳ジャージ着用目的のポイント収集タイプ。平坦ステージで時に見られるのは、逃げ切り不可能と悟った上でのジャージアピール。起伏ステージを利用したマイヨ・ヴェール用ポイント収集逃げは、ジャージ2回獲得のトール・フースホフトが発明し、7回獲得のペーター・サガンが流行らせた。

そして大会終盤の難関山岳ステージでの、前待ち。ある程度逃げたところで、突然減速して(ときにはペダルを漕ぎ止めて)、後方からチームリーダーが合流してくるのを待つ。この極めて高度な戦術は、上手くさえ行けば、総合をひっくり返すほどの破壊力がある。2012年ブエルタでアルベルト・コンタドールが、2016年ジロではヴィンチェンツォ・ニバリが、前待ちを成功させ逆転優勝を収めている。

大逃げで、自らの名声を築き上げた選手もいる。近年ではトマ・ヴォクレールが代表格だろう。2004年大会序盤の大逃げで、マイヨ・ジョーヌを10日間着用し、2011年大会序盤の大逃げで、さらに10日間も黄色の日々を堪能した。2012年には逃げを繰り返し、山岳ジャージさえ獲得している。このヴォクレールに言わせると、逃げはフィジカルの問題ではない。ノウハウだ。

逃げはゲーム。こう語るのは現役最高の逃げ男、トーマス・デヘントである。大逃げでグランツール区間4勝をもぎ取り、大逃げで標高2758mのステルヴィオを制し、大逃げでジロ・デ・イタリア総合3位に滑り込んだ。2017年ツールでは3週間で1000km以上も逃げた。2018年は年間で3000km、2019年は1月から6月までに1400km逃げている。

なんでも後方から追いかけてくる集団に必死で抵抗する時に、アドレナリンがどっと出るんだとか。ただしデヘントは決して快感を求めて逃げているわけではない。逃げは荒々しく、ただ辛く、ひたすら勝つためだけに行うものだとも語る。むやみやたらに飛び出すのではない。地形と戦況とを冷静に判断して、行動に移す。

面白いことに、数年前のデヘントは「自分が逃げようと思ってる日に、アレッサンドロ・デマルキが逃げ準備していると、『ああ、これは間違いない!』って安心するよ」と語っていた。2019年大会の第8ステージでは、この2人は一緒に逃げて……そしてデヘントが勝った!

文:宮本あさか

Difference in height
高低差図
第12ステージ
Time schedule
タイムスケジュール
距離 ポイント 現地時間 日本時間
40KM/H 42KM/H 44KM/H 40KM/H 42KM/H 44KM/H
0km地点 スタート地点 12:00 12:00 12:00 19:00 19:00 19:00
51km地点 中間スプリント 13:16 13:12 13:09 20:16 20:12 20:09
104.5km地点 4級山岳 14:36 14:29 14:22 21:36 21:29 21:22
121.5km地点 4級山岳 15:02 14:53 14:45 22:02 21:53 21:45
177.5km地点 3級山岳 16:26 16:13 16:02 23:26 23:13 23:02
192.5km地点 2級山岳
ボーナスタイム
16:48 16:34 16:22 23:48 23:34 23:22
218km地点 ゴール地点 17:27 17:11 16:57 25:27 24:11 23:57

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