コースの特徴
3週間の戦いの折り返し地点。海辺から始まった2020年ツールは、この日のスタート地を最後に、海とは完全に別れを告げる。つまり山だらけの戦いに戻る前に……もう1度、スプリンターたちにチャンスが巡ってくる。
9月に入り、海水浴客のすっかり減ったプラージュ=ビーチから、プロトンは内陸へと進路を取る。ただしステージ半ばでマレ・ポワトゥヴァン地方自然公園、いわゆる湖水地方を横断する。もう1つの「水辺の風景」を楽しむことができる。
公園を抜けた直後に、今ステージ唯一の山岳ポイント(4級)を通過。その後も小さな起伏は点在するものの、平地巧者たちを苦しめるほどではない。どうやら逃げ選手たちがやりたい放題するのは、難しそうだ。なにしろこの日を逃せば、「ピュア」スプリンターにとって、チャンスは19ステージまで巡ってこない。しっかり隊列を組み上げて、集団制御に励むに違いない。
26年ぶりのポワティエ到着は、今ツールで「最も長い直線フィニッシュ」で締めくくられる。全長1.5kmのロングストレートで繰り広げられる、勇壮な大集団スプリントに期待しよう。
文:宮本あさか
【こぼれ話】あだ名
カニバル、アナグマ、ププ。この単語を知らなかったとしたら、自転車ファンとしてはまだまだ勉強が足りない。いや、たしかに近年ならば、メッシーナの鮫、マーストリヒトの蝶、白いケニア人のほうが有名なのかもしれないけれど。
最初の3つは、ツールの伝説級選手のあだ名である。つまりツール・ド・フランス総合5勝を筆頭に全てを貪り尽くした「カニバル(人食い)」エディ・メルクスのことであり、恐れを知らず全てに噛み付く「アナグマ」ベルナール・イノーのことであり、ツールを勝てなかった代わりに国民の愛情を勝ち取ったレイモン「ププ」プリドールのこと。
プロレスラーのあだ名の多種多様さにはさすがに負けるかもしれないが、自転車選手にだって、あだ名がある。そのあだ名には、どうやらいくつかのパターンがあるようだ。
まずはいわゆる愛称。おそらく普段から両親や友達にそう呼ばれているのだろうし、ファンだってそのあだ名で気軽に呼びかける。ププはその最たる例だろう。ジャジャ=ローラン・ジャラベール、ワワ=ワレン・バルギル等々、フランスでは音を重ねるパターンが多い。史上初めてマイヨ・ジョーヌを着用したウジェーヌ・クリストフのあだ名も、クリクリだった。ジュリアン・アラフィリップ家族からはジュジュ、チームメートからはルルと呼ばれている。
またベルギー人なら語尾にクをつけるし(トムク=トム・ボーネン)、スペイン語ならイトをつける(プリト=ホアキン・ロドリゲス)。これにて「ちっちゃな」とか「可愛い」とかの意味を込めた愛称に早変わり。
ところでプリトとは、「ちっちゃな葉巻」という意味。そう、2つ目のあだ名のパターンは、選手のキャラクターを端的に一言で表現したタイプ。たとえば自転車界の隠語では、苦しそうなふりをしてあっさりライバルを出し抜くことを、「パイプをくゆらす」と表現する。ロドリゲスも練習中に仲間と騙しごっこで遊んでいたことから、このプリトというあだ名を頂戴したんだとか。
どうもスペイン語圏には、この単語ズバリのあだ名が多い。エル・インヴァティド=無敵=アレハンドロ・バルベルデとか、エル・ピストレロ=ピストル=アルベルト・コンタドールはすっかりおなじみ。またコロンビアではテレビ中継で、解説実況があだ名を絶叫する。スーペールマーーーーン(スーパーマン=ミゲルアンヘル・ロペス)とか、エル・コンドーーーールルルル(コンドル=ナイロ・キンタナ)とか。
一方でハルク=ペーター・サガンとか、ブリング=きらきら=マイケル・マシューズとか、ピカチュー=アレクシー・ヴィエルモ等々は、あだ名としては存在するけれど……、実際に誰かがそう呼びかけているわけではない。使用されるのは、記事内で、しかもかぎ括弧付き。
そして3種類目のあだ名が、地名+動物や特徴。すなわち最初に記したメッシーナの鮫、マーストリヒトの蝶、白いケニア人のことで、ヴィンチェンツォ・ニバリ、トム・デュムラン、そしてクリス・フルームのことである。
これに関してはバリエーションは無数に存在する。古くはトレドの鷲=フェデリコ・バアモンテス、タシケントの急行列車=ジャモリディネ・アブドヤパロフに、フランドルの獅子=ヨハン・ムーセウから、近頃ではマン島特急=マーク・カヴェンディッシュ、ロストックのゴリラ=アンドレ・グライペルまで。変形としてクライマー限定のあだ名、山の天使=シャルリー・ゴールも付け加えておこう。
文:宮本あさか
距離 | ポイント | 現地時間 | 日本時間 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
42KM/H | 44KM/H | 46KM/H | 42KM/H | 44KM/H | 46KM/H | ||
0km地点 | スタート地点 | 13:40 | 13:40 | 13:40 | 20:40 | 20:40 | 20:40 |
91km地点 | 4級山岳 | 15:50 | 15:44 | 15:39 | 22:50 | 22:44 | 22:39 |
108km地点 | 中間スプリント | 16:14 | 16:07 | 16:01 | 23:14 | 23:07 | 23:01 |
167.5km地点 | ゴール地点 | 17:39 | 17:28 | 17:18 | 24:39 | 24:28 | 24:18 |