コースの特徴
特別な年の、特別なセレブレーション。「フィナーレと山を近づけたい」という歴代開催委員長の夢を実現させた町ニースが、史上初めて「パリ以外」で締めくくられるツールの、閉幕を受け入れる。もはや伝統とも言えるパレード走行&大集団スプリントフィニッシュの代わりに、全長33.7kmの個人タイムトライアルで、選手たちは最後の全力疾走を行う。1989年大会最終日のTTでグレッグ・レモンが大逆転優勝を果たしたように……3週間の長い戦いの終わりに、総合上位の顔ぶれが大きく変わる危険性もはらんでいる!
別府&新城の参戦で沸いた2009年大会の、開幕タイムトライアルのスタートラインから、2024年大会最後のステージは切られる。スタート台が設置されるのはモナコのF1グランプリでおなじみオートモービルクラブの前で、ここまで激戦を生き残ってきた勇者たちは、1人ずつ大歓声の中へと走り出していく。
地形図はどこか星の王子さまの「象を丸飲みにしたウワバミの絵」に似ている──今年は著者サンテグジュペリの没後80周年だ──。つまりコース上には2つの小さな起伏が待ち受ける。そしてスタートから3.9km地点でモナコ公国を抜け出す前に、早くも1つ目のラ・テュルビへ上り始める。ヘアピン満載の全長8.1km、平均勾配5.6%の山道を上り切った先には、第1中間計測(残り22.5km地点)と同時に2級の山岳ポイントがが配分される。
パリ〜ニースでおなじみエズ峠
スピードの出る下りを経て、続いてパリ〜ニースでおなじみエズ峠へ。1.6kmと短いものの、平均勾配は8.7%、頂上までの1kmは10.4%という爆発的な激坂だ。てっぺんで第2中間計測(残り17.1km)を越えたら、後は下りと平地しかない。3月の「太陽へと向かうレース」ではハラハラの駆け引きが繰り広げられるダウンヒルを、この日は誰もが孤独にこなし、残り5kmの第3中間計測を経てついには真夏の地中海岸へ。
プロムナード・デ・ザングレを選手によってはのんびりと、選手によっては猛スピードで往復したら、ニースの中心地マセナ広場へ。ほんの4年前、コロナ禍の真っただ中で、四方を壁に囲まれた中で密かにグランデパールを行ったこの地も、今回こそはきっと鈴なりのファンとともに華やかな大団円を祝うのだろう。
Fumyのステージチェック
最終日がタイムトライアルというのは、勝負が最後まで分からないという点では面白いんです。ただツール・ド・フランスの良さって、やっぱり最後はパレードステージで勝者を讃え、シャンゼリゼで華やかにフィニッシュするところ。あの雰囲気が好きなんですけどね。だから華やかなグランドフィナーレを見届けられないのは、ちょっと寂しいです。
タイム差が僅差のまま最終タイムトライアルに持ち込まれた場合、もちろん何でも起こりえる。主催者はそれを想定して今大会のコースを作ったのかもしれない。そもそも山で極端にばらける可能性のあるステージが少ないような気がするんですよ。最後のTTでみんなで勝負だ!っていうのを期待しているのかもです。ただ、そうはいっても、ここまでの段階でなんだかんだ確実に差はついているはずですけど。
タイム差がつくような下りではない
それにエズからニースまでは、それほどタイム差がつくような下りではないです。引き離せても10秒か20秒。そうなると前半勝負になってくる。上りを含む10kmなので、総合トップレベルではついても30〜40秒です。ツール最終日のタイムトライアルって、レモンがフィニョンを8秒差で逆転したステージの印象が強いけど、そういう劇的な展開はちょっと期待しづらい。
ステージ優勝候補は、最後まで残っていたとしたら、やっぱりレムコかな。本来のコンディションに戻りさえすればヴィンゲゴーだって行けるし、ログリッチだって強いし。もちろんポガチャルだって勝てる。とにかく総合上位の選手がステージを取ると思います。マイヨ・ジョーヌの選手が、最後にもう一度強さを見せつけるのかもしれないですね。
解説:別府史之/文:宮本あさか
ポイント | 残り距離 | 現地時間 | 日本時間 | ||
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第1走者 | 最終走者 | 第1走者 | 最終走者 | ||
スタート | 33.7 km | 14:40 | 18:45 | 21:40 | 01:45 |
第1計測 2級山岳 |
22.5 km | 14:55 | 19:00 | 21:55 | 02:00 |
第2計測 | 16.6 km | 15:02 | 19:08 | 22:02 | 02:08 |
第3計測 | 5.1 km | 15:17 | 19:23 | 22:17 | 02:23 |
フィニッシュ | 0.0 km | 15:24 | 19:30 | 22:24 | 02:30 |