コースの特徴
いよいよ大会最後の週末がやって来た。18日間の激戦を経て、総合争いのヒエラルキーはすでに堅固に打ち立てられているはずだが……ニース到着の2日前、ツール開催委員会は背筋が凍るほどのクイーンステージをねじ込んだ。本物のクライマーだけに許された過酷なコースで、文字通り「生き残り」をかけた戦いが繰り広げられる。脚だけでなく、あらゆる身体機能が悲鳴を上げそうなステージが、マイヨ・ジョーヌ争いさえ一気にひっくり返してしまわないとも限らない。
セール・ポンソン湖のほとりアンブランから、恐ろしき1日は幕を開ける。平地巧者が息をつけるのは序盤21kmだけで、残りはとことん山の中。行く手にそびえる3つの峠は、いずれも上り距離が長く(最低でも最終イゾラ2000の16.1km)、下り距離もうんざりするほど長く(最長でボネットからの39.5km)、合間には1mの平地もない。なにより3つすべての山頂が標高2000mを大幅に超える。
今大会最大の目玉は、超級山岳シム・ド・ラ・ボネット!
もちろん今ステージのメインにして、2024年大会最大の目玉は、超級山岳シム・ド・ラ・ボネット!あまりに大物過ぎるせいか、1962年に初めてツールで登場して以降、今回でわずか5回目の登坂でしかない。山道は全長22.9kmと気が遠くなりそうなほど長く、1時間以上も黙々とペダルを回し続けて、ようやく標高2802mの高みまでたどり着く。しかも標高2200m程度を超えた先で、難勾配ゾーンがいくつも襲い掛かる。特に標高2700mから山頂までの900mは、なんと10.3%へと跳ね上がる!スプリンターにとっては絶望でしかないが、赤玉ハンターにとっては朗報だ。フランスにおいて最も標高の高い位置にある舗装道路にして、3大ツールで最も標高の高い山では、特別に超級山岳ポイントが倍増される(1位通過40ポイント)。
苦行のような1日は、イゾラ2000の山頂まで終わらない。1993年ツールを最後に、メジャーレースで1度も使われてこなかった未知の上りには、登坂口で2kmにわたって勾配10%超のゾーンが、中盤にまたしても2kmにわたり9.5%ゾーンが待ち受ける。3週間の終わりに、身体中に残るすべての力を振り絞らねばならない。実質123.5kmの山岳決戦で、トータル獲得標高は4400mにも達する。
Fumyのステージチェック
シンプルなステージではあるんです。ひたすらコンスタントに上って下りるだけ。ただ単調ではあるんですけど、登坂距離も勾配も、標高も恐ろしくきつい。山岳は3つすべて 標高2000mを超えているし、ボネットに関しては、もはや「異常値」です。
レース展開を左右するのは、山岳賞をここまで誰が持っているのか、誰が狙っているのか。ジロのポガチャルのように、ステージを勝ちまくっていたら自動的に山岳賞もついてきた……というのは、今年のツールに関してはないような気がします。ステージ前半から1級や超級が上手く混ぜてあって、山岳賞を狙う選手が計算しながらポイントを重ねていけるような作りになってますからね。しかもボネットでポイントを取れば、山岳賞に大きく近づく。だからそういった選手をまずは前に行かせて、総合勢はしっかりがっちり体制を固めて上っていくでしょう。
体調を崩したり、失速したりする選手が絶対に出てきます。通常のようにはリカバリー出来ないですから。たとえば2000m超えが1つだったら、そこまで影響はないかもしれないけど、この日は酸素濃度が薄い場所に強制的に長時間滞在しなければならない。トータルで1時間を超えてくるんじゃないかな。高地で酸素を取り入れられない身体の選手は、間違いなく不調を感じることになります。踏みたくても踏めないような状況に追い込まれます。これは得意不得意とかじゃなくて、遺伝子レベルの話に近いです。
真のチャンピオンを決める、まさしくクイーンステージ
サバイバルですよ。アタックで前に出ていくというより、後方からどんどん脱落していく。標高が高すぎるから、アグレッシブには動けない。とにかくがんばってしがみついて最後まで行くしかない。最後に残るのは誰か。真のチャンピオンを決める、まさしくクイーンステージです。
解説:別府史之/文:宮本あさか
残り距離 | ポイント | 現地時間 | 日本時間 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
36 km/h | 34 km/h | 32 km/h | 36 km/h | 34 km/h | 32 km/h | ||
144.6 km | オフィシャル スタート |
12:30 | 12:30 | 12:30 | 19:30 | 19:30 | 19:30 |
123.5 km | 中間SP | 12:56 | 12:57 | 12:58 | 19:56 | 19:57 | 19:58 |
102.0 km | 超級山岳 | 13:44 | 13:49 | 13:55 | 20:44 | 20:49 | 20:55 |
57.1 km | 超級山岳 | 15:06 | 15:17 | 15:31 | 22:06 | 22:17 | 22:31 |
0.0 km | 1級山岳 フィニッシュ |
16:28 | 16:44 | 17:03 | 23:28 | 23:44 | 00:03 |