ジロ・デ・イタリア2021

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ジロ・デ・イタリアとは

ジロがやってきた

ジロ・デ・イタリアとは

ジロ・デ・イタリアとは 栄誉ある「マリア・ローザ」こと、ばら色に輝くリーダージャージを目指して男たちが凌ぎを削る

フランスのツール・ド・フランス、スペインのブエルタ・ア・エスパーニャと並ぶグランツールのひとつで、毎年5月にイタリア全土をピンク色に染めるもの。それがジロ・デ・イタリアであり、「コルサ・ローザ(ばら色のレース)」だ。1909年に誕生したイタリア一周レースは、大戦による2度の中断も新型コロナウイルスによる日程変更をも乗り越え、この春もまた、勇者たちの戦いを美しく演出する。

ずいぶんと長い間、イタリア人によるイタリア人のためのレースだった。外国人選手の総合制覇は第33回大会まで待たねばならなかったし、ほんの最近……1997年から2007年までの11年間もイタリア人が表彰台の最上段を独占した。以来、国際化は大きく進み、特に過去10年はイタリアを含む7カ国の選手が総合優勝を飾っている。中でもコロンビア、オランダ、英国はジロの勝利者リストに初めて名を連ね、カナダ(2012年へシェダル)とエクアドル(2019年カラパス)も、史上初めてグランツール覇者を生み出した。

ツール・ド・フランスが史上最高峰の自転車レースなのだとしたら、ジロ・デ・イタリアこそ最も美しく最も過酷な大会だ。5月の空や海は、まさにイタリアを象徴する「青」で光り輝き、他のグランツールでは滅多に実現できないような、旧市街や歴史的遺跡がその懐にプロトンを迎え入れる。アルプスやドロミテの山々はいまだ頂に白き冠を抱き、レース自体が雪に見舞われることも決して珍しくはない。また大会最標高地点「チーマ・コッピ」を含む標高2000m級がいくつも連なる山越えステージに、さらに未舗装登坂路、勾配20%超の激坂、距離200km超え……の難条件を詰め込むことさえ、開催委員会は厭わない。

すべての苦難を乗り越えた勇敢な者だけが、勝者の証「マリア・ローザ」に身を包むことを許される。そして21日の激戦の終わりには、黄金の螺旋型オブジェ「トロフェオ・センサ・フィーネ」、つまり「終わりのないトロフィー」に、新たな勝者の名前が刻み込まれるのだ。

2021年ジロ・デ・イタリアのコース概要

ジロ・デ・イタリアが、5月のイタリアに帰ってくる!

昨年は新型コロナウイルス禍によるシーズン中断・再編成のせいで、季節外れの10月に延期開催となった。また開幕「グラン・パルテンツァ」は予定されていたハンガリーから、本来なら2021年開幕地のシチリア島へと変更。そのため今第104大会は新たにスタート地が選定され、ピエモンテ州に白羽の矢が立った。

つまりイタリア統一150周年の2011年に、開幕タイムトライアルの舞台となった旧首都トリノが、ちょうど10年後の今年5月8日(土)に改めて8.6kmの独走種目を迎え入れる。その後ピエモンテでスプリンター向けステージを2つ戦ったら、プロトンは一旦は南を目指す。ただし南発だった昨秋とは異なり、今回は「長靴」と称されるイタリア半島の足首付近までしか南下しない。

本格的な総合争いは大会4日目から始まる。山頂フィニッシュではないものの、フィニッシュ手前2.5kmに2級山頂が立ちはだかる。肝心の山頂フィニッシュは第6区間(2級)、第8区間(4級)、第9区間(1級)と、大会前半に早くも3度登場する。

特に第9ステージは、フィニッシュ手前に約3kmに渡って未舗装路あり。むしろ大会1回目の休息日明け翌日の第11ステージには、トスカーナ地方のおなじみ「白い道」が待っている。ストラーデ・ビアンケでも使われる未舗装路を、全部で4ヶ所・全長35.2km走り抜ける。

また今年が没後700周年となるイタリアの詩人ダンテ・アリギエーリの、代表作『神曲』が印刷された地フォリーニョ(第10ステージフィニッシュ)や、埋葬の地ラヴェンナ(第13ステージスタート)を巡りつつ、プロトンは本格的な山地へと近づいていく。

そして大会3度目の週末の第14ステージ、ジロの歴代峠の中でも屈指の難度を誇るゾンコランでの山頂フィニッシュを皮切りに、いよいよ山での争いが勃発だ。残り8日間は文字通り山場続き。最難関と謳われる第16ステージは、終盤に標高2239m「チーマ・コッピ」のポルドイ峠を含む2000m超の3峠が登場し、締めくくりは2026年冬季五輪の舞台となるコルティナ・ダンペッツォへのダウンヒル。さらに畳み掛けるように第17、第19、第20ステージと、最終週に3つの1級山頂フィニッシュが組み込まれた。しかもミラノ到着前日の第20ステージは、行く手に2000m超峠が2つ。過酷な戦いだ。

もちろんジロ・デ・イタリアは、最終日のフィニッシュラインを越えるまで終わらない。他の2つのグランツールは最終日にパレード+スプリンター向けステージを選ぶ傾向にあるが、イタリア一周は過去20年で9回も個人タイムトライアルを採用してきた。しかも過去4回のうち、なんと3回で総合首位交代劇が見られた。つまり2021年に誕生90周年を祝うマリア・ローザの行方は、30.3kmの個人タイムトライアルを全員が走り終えるまで、絶対に分からないのだ。

全21ステージ、全3,479.9kmの戦いの内訳は個人タイムトライアル2、平坦6、起伏7、難関山岳6。最長ステージは第18ステージの231kmで、第16ステージの累計獲得勾配は5700mにも達する。スタートとフィニッシュはすべてイタリア国内ながら、第15ステージでスロベニア、第20ステージでスイスを通過する。またコロナ禍によるレース機会の減少を救うため、今季に限りジロを含む3大ツールは例年よりも1つ多い23チームで争われる。

text:宮本あさか

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