コースの特徴
山巡りを一旦抜け出して、海辺でつかの間の骨休み。大西洋岸の保養地でのんびりと休息日を過ごした翌日、プロトンは2020年ツールで唯一、山岳ポイントがひとつも存在しない平地ステージを争う。
オレロン島からレ島へ。1903年に誕生したツールにとって、島巡りは初めての試みだ。灯台の光と、太陽の輝きをもじって「光の島」とあだ名される美しき島の、先端の城塞都市から、プロトンは走り始める。
素敵な観光地巡りでもある。フランスで3番目に長い2862mの橋を渡って、本土に上陸した後も、美しき海岸線とはつかず離れず。スードル河口の雄大さに感嘆し、ロマネスク様式の教会が点在するロワイヤンへと足を伸ばし、映画「ロシュフォールの恋人たち」の町をすり抜け、14世紀建立の2つの塔に守られたラ・ロッシェルに立ち寄る。美味しい生牡蠣で有名なマレンヌにも、序盤に2度、通過する……。
そしてフランスで2番目に長い2926.5mの橋を渡って、フィニッシュは「白き島」レ島へ。やはりヴォーバン様式の要塞で有名なこの島では、壮大なる大集団スプリントが予定されている。もちろんウインドサーフィンの盛んなこの地方で……風が集団をバラバラに砕いてしまわない限り。
文:宮本あさか
【こぼれ話】観光アピール
ツール・ド・フランスは無料で観戦できる世界最大のスポーツイベントである。ただし開催を受け入れる側の自治体にとっては、決して無料ではない。
2019年大会の区間スタート地は65,000ユーロ(約820万円)、区間フィニッシュ地は110,000ユーロ(約1390万円)を、開催主に支払っている。さらにこの「参加費」以外にも、世界最高の自転車レースを受け入れるための道路整備やイベント開催等々、さらに3〜5倍の出費がかかると言われている。
それでも毎年、300近い自治体が、ツール開催に名乗りを上げる。なにしろ世界中からたくさんの観客が詰めかけ、半径50km〜100km圏内のレストランやホテルは満員になる。しかもテレビ中継では、自慢の風景やらサイクリングロードが長時間映し出されるのだ。大会後も観光客やサイクリング客はあとをたたない。
ツールの宣伝効果たるや、絶大である。たとえば2016年開幕の地として2ステージ半受け入れたマンシュ県は、出費6億3000万円に対して、なんと最終的には2850億円の経済効果がもたさられたと言われている。
記念イヤーを大々的にアピールするために、自治体がツールを利用する場合もある。例えば今年の開幕地ニースは、この2020年に、フランス統合160周年を祝う。また第一次世界大戦開戦から100年目にあたる2014年大会では、記念行事実行委員会が、ツールの手を借りた。こうしてプロトンはいくつもの激戦地を巡った。フランス共和国大統領が戦没者記念碑に黙祷した後、そのままレースカーに乗ってツール観戦に出かけたこともある。
もちろんツール側は、自治体側がツールに魅了される理由を、十分に理解している。半年以上かけてコース上のあらゆる記念建造物や自然公園、美術館を調査し、レースの合間に映像を挟み込む。また中継責任者のジャンモーリス・オーグ氏は、写真家ヤン・アルテュスベルトランの作品「空から見た地球」にヒントを得て、空撮を効果的に使うようになったという。さらに大会後には、その年の美しい風景ばかりを集めた特別番組さえ制作される。J SPORTSで放送される「旅する自転車レース ツール・ド・フランス」もそのひとつ!
おかげで自転車ファンの脳裏には、ツールで見た美しい風景が焼き付けられる。新型コロナウイルスによる渡航規制が解除されたとき、そのうちのいくつかが、みなさまの次の旅行先になるかもしれない。
ちなみに現開催委員長のクリスティアン・プリュドムは、どうやら海が好き。海岸線を通るステージの紹介には、ことさら声に力がこもる。2020年は地中海岸コート・ダジュールで走り出し、大西洋岸ではツール史上初の「島から島へ」ステージが実現する。
文:宮本あさか
距離 | ポイント | 現地時間 | 日本時間 | ||||
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42KM/H | 44KM/H | 46KM/H | 42KM/H | 44KM/H | 46KM/H | ||
0km地点 | スタート地点 | 13:45 | 13:45 | 13:45 | 20:45 | 20:45 | 20:45 |
129.5km地点 | 中間スプリント | 16:45 | 16:37 | 16:30 | 23:45 | 23:37 | 23:30 |
168.5km地点 | ゴール地点 | 17:40 | 17:29 | 17:20 | 24:40 | 24:29 | 24:20 |