コースの特徴
魔の山、一本勝負。道の終わりにそびえ立つモン・ヴァントゥが、マイヨ・ジョーヌ争いに激しく揺さぶりをかける。不吉な逸話だらけのこの山で、2025年もまた、誰も想像だにしなかった出来事が起こるのかもしれない。
ついに大会最終週に突入し、パリ到着へのカウントダウンが始まった。ただし、今ステージも含め、いまだ3つの超級山岳フィニッシュが待ち受ける。2週間かけて築き上げられてきたヒエラルキーが、新たにシャッフルされる危険性は十分にある。特にこの日は、前日の休息日で緩めたリズムが、命取りにもなりかねない。
序盤130kmだけ見れば完全なる平坦ステージ。沿道にはフランスが愛する夏の風景が広がる。複数のビーチリゾートを近郊に擁するモンペリエから走り出し、プロヴァンス特有の乾いた風景の中をプロトンは突き進む。糸杉が風に揺れ、ラベンダーの香りが漂う。もちろん南仏の風物詩、強いミストラルが吹き荒れる可能性も。
ステージも残り60kmを切り、中間ポイントを争った頃から、地平線の先に「プロヴァンスの巨人」の姿が見え隠れするようになる。ヴォークリューズ平野にそそり立つ、孤高の禿山。
実際の山道には、残り15.7kmで挑みかかる。平均勾配は8.8%。登坂口から3kmにわたり9〜10%の険しい上りが続き、山頂間際の2kmも改めて9%を超える。この山の恐ろしさは、なにも勾配だけではない。晴れたら灼熱、風が吹けば嵐。山の上部には、選手たちを自然の脅威から守る木々は一切存在しない。まるで賽の河原のように、白い石だらけの世界になる。
今区間はいわば、2016年第12ステージのやり直し。9年前にもモンペリエからモン・ヴァントゥまでのコースが用意された。しかし暴風警報が発動し、山頂より6.2km下方でフィニッシュが争われた。ちなみに、実際にあの日、てっぺんには瞬間最大で風速47mの突風が吹き抜けた。しかも短縮された山道に詰めかけた観客に、メディアバイクが行く手を阻まれ、そこに走行中の選手たちが突っ込んだ。ついにはマイヨ・ジョーヌのクリス・フルームが壊れたバイクを捨て、自身の「足」で山を駆け上がった……。
2021年第11ステージでは、モン・ヴァントゥを2回よじ登った。黄色のタデイ・ポガチャルに対して、いまだ無名に近かったヨナス・ヴィンゲゴーが初めて力強い攻撃を仕掛け、4年間にわたる一騎打ちの始まりのゴングが鳴った瞬間でもあった。
文:宮本あさか


残り距離 | ポイント | 現地時間 | 日本時間 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
42 km/h | 40 km/h | 38 km/h | 42 km/h | 40 km/h | 38 km/h | ||
171.5 km | オフィシャル スタート |
12:40 | 12:40 | 12:40 | 19:40 | 19:40 | 19:40 |
59.1 km | 中間SP | 15:07 | 15:13 | 15:21 | 22:07 | 22:13 | 22:21 |
0.0 km | 超級山岳 フィニッシュ |
16:44 | 16:57 | 17:12 | 23:44 | 23:57 | 00:12 |