ツール・ド・フランスを知るための100の入り口
ツール・ド・フランスを知るための100の入り口:一風変わった記録
ツール・ド・フランスで最下位となった選手に与えられるランタンルージュの称号にも、記録がある。史上初となる3度のランタンルージュの称号を得たのは、2008年シーズンを最後に引退したベルギー人ヴィム・ヴァンスーヴナント。
彼は、2006年から2008年にかけ、3年連続で総合順位最下位という“離れ業”をやってのけた。彼は“ビリ”と揶揄されるより、根性を見せつけた選手として記憶されている。なにしろ完走しなければ達成できない記録なのだから。
「粘ったからこそ、制限時間をクリアし、ゴールに辿りついた。もしも最低のライダーだったら、ドロップアウトして、完走できないはず。むしろ胸を張りたい」、そう語ったのは2005年ランタンルージュのスペイン人イケル・フロレスだ。
2008年ツールで、ヴァンスーヴナントは時の人だった。来る日も来る日も母国ベルギーの記者が彼を取り囲み、インタビュー攻め。ランタンルージュ3連覇の記録がかかっていただけでなく、引退を決めてのぞんだ最後のツールだったからだ。
ベルギーのある自転車雑誌記者はこんなふうに語っていた。「最下位でも、なんとか食らいついてツールを完走した彼の執念はあっぱれだ。優勝も難しいけど、最下位も難しいからね。そんな彼が引退することになって、国内では惜しむ声が多いんだよ」。
ツールでは、最後から2番目より最下位のほうが、間違いなく目立つ。
※本企画は2013年6月に実施されたものです。現在と情報が異なる場合がございますが、予めご了承ください。