6月8日から15日まで、8日間の日程で開催される2025年のクリテリウム・デュ・ドーフィネ。1947年に初開催、フランス南部の新聞社「ル・ドーフィネ・リベレ」の発行部数増加を目的に大会が創設された。社名と同じ「ドーフィネ・リベレ」として親しまれてきた大会は、ツール・ド・フランスを主催するA.S.O.が2010年から運営を引き継ぎ、現在の大会名とシステムに落ち着いている。
今回は何といっても、昨年のツールトップ3のドーフィネ集結が大きなトピック。ツールの覇権を奪取し、今年も春のクラシックを席巻したタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)。2年ぶりのツール制覇を目指し調整を続けるヨナス・ヴィンゲゴー(チーム ヴィスマ・リースアバイク)。パリ五輪のロードレース・個人タイムトライアル2冠で、現在の個人タイムトライアル世界王者であるレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)。この3人がそろってドーフィネに乗り込む。今大会制覇はもちろん、その先にはツールを見据える。
今回のステージ構成は、7つのロードレースステージに、1つの個人タイムトライアルを加えた、全行程1199.6km。
後半に7つの4級山岳が連続する第1ステージ(195.8km)で、まずは脚試し。第2(204.6km)・第3ステージ(207.2km)はスプリンターと逃げを狙う選手との駆け引きに注目。
総合争いが本格化するのは、第4ステージからか。17.4kmの個人タイムトライアルは、総合系ライダーの間に大なり小なりタイム差が生まれることとなる。続く第5ステージ(183km)は、スプリンターや逃げ屋にとっては実質最後のチャンスデーに。
大会終盤の3日間に、本格的な山岳ステージが詰め込まれた。第6ステージは126.7kmと短距離ながら、5つのカテゴリー山岳を登坂。後半に入って上る1級山岳コート・ド・モン=サクソンヌウー、少しばかりの平坦路と経て迎えるコート・ド・ドマンシーとコート・ド・ラ・クリーの2級山岳連続登坂で、総合争いの有資格者を決める。
今大会の最難関は、第7ステージ。レース距離131.6kmのうち、半分以上の63.5kmが上り。しかも、3つのカテゴリー山岳はすべて超級だ。スタートと同時にマドレーヌ峠へ飛び込み、約20kmの下りをこなしたらすぐにクロワ・ド・フェール峠へ。長くテクニカルな下りをこなし、最後にそびえるのはヴァルマニエ1800。スタートからフィニッシュまで、「平坦な道は1メートルも存在しない」との評まであるルートは、まぎれもなく今回のクイーンステージ。
第7ステージである程度の形勢は見えるかもしれないが、続く第8ステージ(133.3km)を走り終えるまで一寸の気の緩みは許されない。ほぼ中間地点に位置する1級山岳ボーヌ峠をきっかけに山岳地帯に入ると、3級・2級の連続登坂。そして最終決戦の場、1級山岳モン・スニ峠へ。9.6kmの上りをこなし、さらに5km先のフィニッシュラインを通過したときに、今年のドーフィネ勝者が決定する。
大会には18のUCIワールドチームに加え、同プロチームからイスラエル・プレミアテック、トタルエネルジー、チューダープロサイクリングチーム、ウノ・エックスモビリティが出場。22チームがスタートラインに就く。また、ロマン・バルデ(チーム ピクニック・ポストNL)は、これがロードキャリア最後のレース。第3ステージでは、故郷ブリウドを出発。長きキャリアを盛大に祝福する。
なお、ツールの前哨戦として重要なレースであるドーフィネだが、同一シーズンに両レースを勝ったのは歴史上11人しか存在しない。直近では、2023年のヴィンゲゴーが達成。ツールに向けた各選手・チームの状態を計る絶好の機会ではあるが、この大会での走りやリザルトが必ずしもツール本番にすべて反映されるわけではないあたりは、押さえておきたいところ。それこそが、サイクルロードレースの難しさであり、おもしろさでもあるのだ。
文:福光 俊介