ジロ・デ・イタリア2025

ここまで山を無事に乗り越えてきたスプリンターたちが、久々に輝ける機会。またクライマーでもスプリンターでもない、平地専門の逃げ屋にとっては、正真正銘、今大会最後のチャンスとなる。ステージ半ばに待ち受ける3つの上りが、果たして、どんな結果を導き出すのか。

スタート地のモルベーニョは、日本自転車界にとって、歴史的な快挙の舞台となった町。2015年女性版ジロで、萩原麻由子がステージ優勝をつかみ取ったのが、この谷間の小さな町だった。しかも今から10年前に、当時の日本チャンピオンがはにかみながら表彰式を祝った広場から、今回の男性版ジロ一行は戦いへと飛び出していく。

「落ち葉のレース」イル・ロンバルディアでおなじみコモ湖の、初夏の風景を眺めながら、序盤の約30kmはほぼ完全に平坦な道を行く。アタック合戦は長引きそうだ。そこからの60kmは、打って変わってアップダウンの繰り返し。ただ最も厳しい最初の2級山岳（登坂距離7.4km、平均勾配6.2％）を耐え切れば、残す2つの3級は、平均4％台の小さな上りに過ぎない。

しかも残り57kmで最後の出っ張りを越え、緩やかな下りをこなしたら、フィニッシュまではひたすら平坦だ。

逆に最終盤にチェザーノ・マデルノを起点とした周回コースに入ると、市街地特有の難解さが、チーム隊列を苦しめるかもしれない。一周12.5kmのサーキットに、全部で19ものコーナーが詰め込まれている。これを2周半もこなさなければならない。

3kmを切った直後に右への鋭角コーナーあり。2kmを切った直後にはロータリーが登場する。そして1kmを切った直後には、右への直角コーナー。最後の最後まで、気を抜くことは許されない。

text：宮本あさか