コースの特徴
長く厳しい金曜日。元選手にして、今区間招致責任者のS・モラビトが自信を持って送り出す「5つ星」コース。行く手には大会最標高地点「チーマ・コッピ」を含む3つの巨大峠がそびえ立ち、累積獲得標高は5100mにも達する。マリア・ローザ本命たちの真の能力が試され、山岳賞マリア・アッズーラを巡る争いも加速する。
全長207kmのステージは静かに始まる。スタート直後にフランス語圏のアオスタ渓谷に突入すると、序盤60kmはほぼ平坦。リタイアせずにマリア・チクラミーノを追い求める覚悟のスプリンターたちは、49.1km地点の中間ポイントを争いに行くかもしれない。ただし、その後すぐに、生き残りをかけたグルペット態勢に入らねばならぬ。
なにしろ「チーマ・コッピ」グラン・サン・ベルナルドの山道は、全長34kmと、気が遠くなるほど長い。しかも平均勾配こそ5.5%(最大10%)と控えめだが……標高1700mを超えたころから勾配は7.6%に、さらに2000m超で8%に跳ね上がる!
ところでツール・ド・フランスでも過去5回使用された「グラン・サン・ベルナール」の、公式な山開きは例年5月末から6月上旬。だからこそ「昇天祭の週末」にジロ一行が山越えできるかどうかは、すべては天候次第……。地元自治体はBプラン「トンネル通過」も用意しているとのこと。
標高2469mまで上り詰め、山頂でスイスへと入国すると、一転、約30kmもの長い急降下。しかも下りきった先では、休む間もなく、続く1級クロワ・ド・クールの急勾配へ挑みかかる。このグランツール史上初登場となる平均勾配8.8%の山もまた、上れば上るほど残忍さを増していく。全長15.4kmの山道の半ば以降は延々9%超が続き、最終4kmは平均10%超。標高2174mの山頂手前には、最大13%ゾーンも待つ。
クロワ・ド・クールからの20kmのダウンヒルを終えると、ローヌ氷河が作り上げた平原を約20km。谷間を走るこのわずかな時間を利用して、最終登坂に向けて、体制を立て直したい。なにしろ最終峠クラン・モンタナへと至る九十九折の山道(登坂距離13.1km・平均勾配7.2%)は、他の2峠とは違い、登り始めにいきなりガツンと13%ゾーンを迎える。
今大会唯一の外国フィニッシュであり、2025年にMTB世界選手権を開催するスイスのヴァレー州にとっては、60年ぶりのジロ通過。また1984年ツール第20ステージでローラン・フィニョンの勝利を見届けたクラン・モンタナで、国際的ロードレースが争われるのは2013年ツール・ド・スイス以来。ちなみに10年前に両手を挙げたのはバウケ・モレマで、3位はティボー・ピノだった。
ステージ本番の3日前、5月16日に急遽、コースの変更が発表された。
グラン・サン・ベルナルドに大量の降雪と、なにより雪崩の危険性があることから、山頂までの登坂路の迂回が決定された。2023年ジロ最高標高地点を予定していた標高2469mには至らず、「プランB」である標高1878mのトンネルを通過し、スイス側へと進入する。
自ずと走行距離は207kmから199kmへと短縮。累積獲得標高も5100mから、計算上では約4500mへと大幅に少なくなる。
また肝心の大会最高標高地点「チーマ・コッピ」の名誉は、第19ステージのトレ・チーメ・ディ・ラヴァレド2304mに冠されることに。
text:宮本あさか
距離 | ポイント | 現地時間 | 日本時間 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
36km/h | 34km/h | 32km/h | 36km/h | 34km/h | 32km/h | ||
0km地点 | スタート | 11:05 | 11:05 | 11:05 | 18:05 | 18:05 | 18:05 |
49.2km地点 | 中間SP | 12:11 | 12:14 | 12:17 | 19:11 | 19:14 | 19:17 |
87.5km地点 | 1級山岳 | 13:29 | 13:38 | 13:48 | 20:29 | 20:38 | 20:48 |
133.3km地点 | 中間SP | 14:40 | 14:54 | 15:10 | 21:40 | 21:54 | 22:10 |
129.8km地点 | 1級山岳 | 15:02 | 15:18 | 15:37 | 22:02 | 22:18 | 22:37 |
199.0km地点 | 1級山岳 ゴール |
16:34 | 16:57 | 17:22 | 23:34 | 23:57 | 00:22 |