基本的なショットの種類
サービス
ラリーの1球目に打つのがサービス。バドミントンのサービスでは、テニスや卓球と異なりスピードや回転を加えることができないため、相手に主導権がある守備的要素となる。そのため、正確なコントロールはもちろん、相手にコースを読まれないことや、返球リズムを崩すことも求められる。バドミントンのサービスにはショート・ドライブ・ロングの3種類があり、種目(シングルス、ダブルス)や状況に応じて打ち分けられている。
●ショートサービス
ネットすれすれを狙って打ち、相手コートのサービスライン付近に落とすサーブ。シングルスでは相手に攻撃的なショットを打たなせないため、ショートサービスを使う選手が増えている。ダブルスではコントロールしやすいショートサービスを主に打つが、相手レシーバーとの距離が近いため、少しでも球が浮いてしまうとプッシュされるなど、攻撃を受けるリスクも高くなる。相手に的を絞らせないよう工夫が必要となる。
●ドライブサービス
ショートサーブに似たサーブで、ネットぎりぎりを床と平行に打つサーブ。ここぞというときに相手の意表をつくことでミスを誘い、得点につながりやすい。一方、甘いサービスだと一発でスマッシュを決められて失点してしまう危険性もある。
●ロングサービス
主にシングルスで使われる。天井に向けて高く打ち上げ、エンドライン際に垂直に落ちてくる軌道を理想とする。高さがないと、相手はスマッシュのタイミングがとりやすく、1球目から攻撃してくる。主に相手をコート奥に追い込み、攻撃的なレシーブを打たせたくないとき、コート奥を深く狙って高く打つために使う。スマッシュを撃たれないことが重要であるため、Tゾーン近くと、サイドライン近くのコースを、ゲーム状況に応じて使い分ける。ダブルスでは、相手の意表をつくために、速くて低い軌道のロングサービスを打つのが効果的とされる。
ドライブ
コートに平行してネットすれすれの軌道を理想とするショット。お互いがドライブやプッシュを多用するラリーテンポの速い攻防が主流となっているダブルスで多く使われ、相手に攻撃権を与えないための重要なショットとなる。ドライブを使った攻防で対戦相手より優位に立つことができれば、ラリーの主導権も握りやすくなる。ネットを挟んで至近距離で打ち合うダブルスのドライブは、必然的にミスが多くなる。
プッシュ
ネット前に浮いてきた球を、コートに鋭く突き刺すショット。ドライブの撃ち合いから前につめてプッシュ、スマッシュのドライブリターンをプッシュ、ショートサービスをプッシュ、ヘアピンをプッシュするなど、プッシュはスマッシュよりエースを狙える攻撃球といえる。特にダブルスでは、どのタイミングで前に出てプッシュするか、的確な判断や思い切りの良さが求められる。タッチ・ザ・ネットを回避するためにラケットを横にスイングするワイパーショットも効果的な技の一つ。
ドロップ
コート奥から相手のネット前へ落とすショット。ヒットする瞬間にスイングスピードを緩めて、押し出すように打つ。他のショットに比べると球速が遅く、相手に読まれると失点につながるため、相手を迷わせるためにカットやクリアー、スマッシュと同じフォームで打つことが望ましい。狙ったコースに制球できれば、球の速さや勢いがなくても相手の体勢を崩すことが可能。ドリブンクリアやアタックロブなどの速い球を打たれたときの、ストレートの返球に効果的。ラリーに緩急をつけたいシーンでも有効。
カット
ラケットを切るようにして振り、相手の手前のスペースに鋭角に落ちるショット。スマッシュほど球速は速くないが、ドロップよりも低く速い球筋で相手コートに入る。スマッシュとドロップの中間にあたるショットのイメージ。フォアカットやリバースカット、チョップカットなど、さまざまな打ち方があり、トップ選手はこれらをシーンによって使い分ける。 相手の体勢を崩してチャンス球を作りたいときに有効で、フォア奥からクロスへ速いカットが打てれば、攻撃の幅が大きく広がる。
ロブ
相手を追い込む攻撃的なアタックロブと、滞空時間の長い返球で自分の体勢を立て直す守備的なロブの2種類がある。ネット前からアンダーハンドで相手コートの奥深くへ返球する。相手がドロップなどで攻めてきたときや、レシーブ、ヘアピンでネット前に落としてきたときに使う。エンドライン際に垂直に落ちていく軌道を理想とし、いずれも相手にとってチャンス球にしないことが大切。
クリア
クリアは相手を後へ深く追い込む攻守を兼ね備えたストローク。高く深い位置まで打つハイクリアと、低く深い位置を狙うドリブンクリアがある(ドリブンクリアより低い弾道のクリアを便宜的にミドルクリアと呼ぶこともある)。攻撃に結びつける「崩し球」としてのドリブンクリアとミドルクリア、劣勢に追い込まれた体制を立て直すハイクリアなど、ラリーにおけるクリアの役割は大きく、状況に応じて打ち分けることがポイントとなる。
ドリブンクリアでコーナーを狙い、相手を崩してスマッシュで攻撃するパターンがシングルスでは多く使われる。相手がドロップやヘアピンなど、ネット前の球に意識が集中しているときに有効だが、距離や高さに注意しないとスマッシュやドロップで攻守を逆転されてしまうので注意が必要。
スマッシュ
シャトルを叩きつけるように打ち込む、攻撃のための代表的な打ち方。世界のトップ選手では時速400km/h近いスピードが出ることがあり、バドミントンで最も迫力があるショット。相手が構える位置より手前に突き刺さる軌道が理想とされ、ジャンプしながら角度をつけて打ち込むジャンピングスマッシュは、豪快さと華やかさを併せ持つ。
ただ力まかせに打つのではなく、スピード・コントロール・角度などにも注意しなければならない。全力で打ち切るフルパワー(ハードヒット)だけでなく、カットスマッシュやハーフスマッシュなどを駆使して緩急をつけることも重要となる。
ヘアピン
ネット前から白帯ギリギリを狙って落とすショット。ドロップやヘアピンなど、ネット前に集まった球に対応する。ネットを挟んで戦うバドミントンは、ネット前の攻防がゲームの流れを大きく左右し、シングルスではヘアピンの優劣が重要なポイントを占める。回転をかけて返球ミスを誘うスピンネットや、ヘアピンと同じフォームからクロス方向へ切り返すクロスネットなど、さまざまな打ち方がある。