モーグルとは(ルール解説)
フリースタイルスキーは、モーグル(デュアルモーグル)、エアリアル、スキークロス、ハーフパイプ、スロープスタイル、スキービッグエアーの6分野に分かれている。
ここではモーグルとデュアルモーグルについて解説する。
ルール
モーグルとは
ノルウェー語で雪上のコブを意味するモーグル(Mogul)競技とは、雪面に規則的なコブが配置された急斜面での滑走を、高いターン技術、エアー演技、
ハイスピードの3要素で審査する競技である。採点配分はターンが全体の60%、エアー20%、スピード20%。
華やかなエアーに注目が集まるが、あくまで最重要要素は「ターン」。柔らかなひざ使いで、滑らかに正確にコブを乗り越えることがモーグルの基本だ。
またレース中には音楽が使用される。ビートの効いたエネルギーあふれた音楽のおかげで、華やかなショー要素も高い。
モーグルのコースとは
- コース全長は235m±35m、デュアルモーグルは全長200m±50m。
- コース幅は最少18m、デュアルモーグルは最少21m。
- コースの平均斜度は28度±4度。37度以上、もしくは20度以下のセクションが20m以上続かないこと。
- エアバンプ(空中に飛び上がるためのコブ)は2箇所。第1エアの距離はスタートから15%下方、第2エアはフィニッシュから20%上方に設置する。
- 途切れぬフォールラインを有し、勾配の均一なコースであること。
- 斜面は過度な凹凸を含まず、勾配の急変を共わないこと。
- コース表面は出来る限り均等なモーグル(コブ)に覆われていること。
- エアバンプの高さは50〜60cm、勾配は26〜30度。エア後の着地ゾーンの長さは15m。着地ゾーンにはコブはない。
モーグルの採点方式
- 1本のランにつき満点は100pt。
-
ターン、エア、スピードの3点に分けて採点される。
❶ターン:全体の60%→最大60pt
❷エア:全体の20%→最大20pt
❸スピード:全体の20%→最大20pt
- スコア全体の60%を占める。ポイントは最高60pt。
- モーグル7人制審判の場合は、5人の審判がそれぞれターンの出来レベル(0.1~20pt)と減点(最大-6pt)を採点する。 ターンレベルの最高点と最低点、さらには減点の最高点と最低点を除いた6つのポイントが合計される。
- 5人制審判の場合は3人のジャッジが持ち点20ptでターンレベルと減点を採点し、全得点が合計される。
- 採点評価対象は以下の4点。フォールライン違反は減点対象。ターン基礎点を算出するための優先順位と割合は:カービング40%、体の伸縮30%、上半身の状態30%。
1)フォールライン
スタートからゴールまでの最短距離を走ること。
スタート時に選んだフォールライン上を滑り降りねばならない。
2)カービング
エッジングを有効に効かせて、スキーのトップからテールまで一本の軌道を描くべエッジングを有効に効かせて、スキーのトップからテールまで一本の軌道を描くべきである。横や斜めへのスライドは出来る限りするべきではない。
カーブ時は膝から下の伸縮を上手く使い、膝から上の動きは最低限に留めること。
腕の動きは小さめであることが好ましく、左右対称であること。
上半身と下半身の連動が自然であり、動作は機能的であること。
3)体の伸縮
コブの形に合わせて体を伸縮させること。コブの入りから頂部までは縮め、頂部以降はコブの形に合わせて伸ばすこと。
伸縮いずれの時も、スキーが雪面にかける圧力は同じでなければならない。
4)上半身の状態
頭部は常に前方を向いていること、胴体は真っ直ぐ自然な状態であること。
両手は体の前面に自然な状態で。ストックは軽快に。
- 減点対象はたとえば滑降停止6pt、停止なしの転倒・フォールラインの変更4.1~5.9pt。
さらには手つき、尻もち、横滑り、ストック2度突きなども減点対象とされる。
- 1エアあたりの最小ポイントは0pt、最大ポイントは10pt。1ランあたりの最大ポイントは20pt。
- エアの完成度を審判が10点満点で評価し、そこに難易度を掛ける(エア完成度×難易度)。
- 2人の審判が採点し、両者の出したポイントの平均が得点として採用される。
- エアの完成度の採点基準は1)質(テイクオフ、フォームとランディング)、2)エア(高さと距離)、3)滑らかさ(スピードチェック等)。
- エアのジャンプは全部で5グループ。
1)インバートフリップ(宙返り)
1回転のみ許可。1本のランで1回のみ許可。ただし回転方向が違う場合(フロントvsバック)、もしくはひねりが加えられている場合、グラブが加えられている場合は、それぞれ違う種類として認められる。
2)ループ(側転)
1回転のみ許可。1本のランで1回のみ許可。グラブが加えられている場合は、違う種類として認められる。
3)ストレートローテーション(水平回転)
ヘリコプター、360、720など。3回のポジション変更を組み込める。回転が360度以上違う場合、グラブが加えられている場合は2回許可される。
4)オフアクシス(ひねりを加えた回転)
A~Cの3つのカテゴリーに分けられる。
A:Dスピン、コーク、ループフル/B:ロデオ、フラットスピン/C:ミスティ、バイオ
同カテゴリーでも回転が360度以上違う場合、グラブが加えられている場合は回許可される。
5)アップライト(回転なしの立ち技)
スプレッドイーグル、コザック、ズートニック、ダフィー、バックスクラッチャー、ムールキック、アイアンクロス、ツイスターなど。 1回のジャンプで1~5つの技を組み込むことが可能。6個目以上やポジション変更はポイントにカウントされない。技の数が違う場合、グラブが加えられている場合は2回許可される。
★グラブ
スキー板を手でつかむこと。回転を伴う他のグループのジャンプと組み合わせて使用される。
- ジャンプ難易度は技回数、回転方向、ツイスト(回転度数)、ポジション、ポジション変化、グラブ、スイッチ(着離陸)、技種、性別etc.で細かくポイント化されている。
- スコア全体の20%を占める。ポイントは最大20pt。
- タイムは選手がスターティングゲートを出てからフィニッシュラインを越えるまで計測される。
- 女子8.8m/秒、男子10.3m/秒のペーススピード基準とコースの長さから、各コースのペースタイムを算出する。
- =スピードスコア=48−32(選手のタイム/ペースタイム)
競技説明
ワールドカップ開催時期
モーグル&デュアルモーグルのワールドカップシーズンは、例年12月上旬から翌年の3月まで。
ワールドカップ参加条件
FISポイントで計算された国別出場枠に従って、各国スキー連盟が選手を派遣する。
- FISポイントを50ポイント以上有していること。
- FISライセンスイヤー(シーズン開幕直前の7月1日~閉幕直後の6月30日)に15歳の誕生日を迎えること。
- 各国FISポイントを50ポイント以上有している選手が1人でも存在する連盟には、基礎枠が与えられる。基本枠は1。
- FISポイントを100ポイント以上有している選手が存在する連盟には、追加枠(最大5)が与えられる。
- 男女合わせて各国最大10枠。各性別の最大参加枠は6。
- 大会開催国は、国別出場枠以外に男女3枠ずつ加えられる。
- 前年度のワールドカップ総合勝者、前年度のコンチネンタルカップ総合勝者、同年のオーストラリアニュージーランドカップもしくはサウスアメリカンカップの勝者は、国別出場枠に関わらず大会出場が許可される。
- FIS主催のあらゆる大会で、大会レベルと順位に基づいたポイントが発生する。例えばワールドカップ1戦優勝で1000ポイント。
- 前シーズンに獲得したポイントの中で最高得点の2つの平均が、基礎FISポイントとなる。
- 現行シーズンに獲得した大会・順位ポイントの中で最高得点の2つの平均(もしくは最高得点1つと基礎FISポイントの平均)が、現行シーズンにおけるFISポイントとなる。
ワールドカップ・モーグル
- ワールドカップランキングリストの上位25選手には、各大会毎に、それぞれのランキングに該当する番号が入れられたビブが与えられる。 26位以下の選手には、ランダムな数字の入ったビブが与えられる。
- 予選と本戦とで戦われる。
- 予選・本戦共に最低でも1ラウンド、もしくは2ラウンドで行われる。
- 本戦進出者は男女ともに12~16名。本戦が2ラウンド制の場合、2ラウンド進出者は6名。
- 予選のスタート順は抽選にて決定する。本戦の滑走は、本戦進出者の中で最も成績の悪かった選手から行う。予選首位通過者が本戦の最終走者。
- 予選結果は本戦には反映されない。
ワールドカップ・デュアルモーグル
- 並列する2つのコースを2選手が同時に滑り降り、1対1で勝ち抜けを争う。
- 2つのコースはフィニッシュラインから見上げて右側が赤、左側が青に色分けされる。
- 予選のシード順位は、大会直前のワールドカップスターティングリスト、ワールドカップランキング、もしくはFISポイントに基づいて決定される。
- シード順位17位~32位の選手は、その後抽選により改めて17~32のシードナンバーを振り当てられる。33位以下の選手は全員で抽選を行い、新たな番号を振り当てられる。
- シード1位vs最下位、シード2位vs最後から2番目……という対決が組み合わせられ、1ランノックアウト方式でトーナメント戦を行う。
- 本戦進出者は男女ともに8/16/24/32人。
- 本戦上位1位~4位に限って、順位決定戦で順位を決する。
- 採点方法にはクラシック方式とダイレクトコンパリゾン(直接比較)方式の2種類が用いられる。
- 5人審判制はターン2人、エア1人、スピード1人、総合1人。7人審判制はターン4人、エア2人、スピード1人。
- 各審判には5票ずつ与えられ、赤と青に5-0、4-1、3-2、2-3、1-4、0-5という配分で投票(5人制の総合審判のみ持ち票はターン3、エア1、スピード1)。 各色のトータル得票数で勝敗を決する。
- 5人審判制はターン3人、エア2人。7人審判制はターン3人、エア4人。スピードは機械測定による計算。
- ターン50点、エア25点、スピード25点、計100点満点のポイント比較により勝敗を決する。
- ターン:1)審判は赤/青のいずれかを勝者と決定。2)勝者と敗者に20点満点でポイントを与える。敗者のポイントは、勝者のものより必ず低いこと。3)3審判のつけたポイントの平均×2.5を、最終的なターンスコアとする。
- エア:5人制の場合は1人ずつ、7人制の場合は2人組でジャッジする。それぞれに青エア1&赤エア2と青エア2&赤エア1を、1ジャンプあたり10点満点にて採点。 このポイントは1.25倍され、最終的なエアスコアが決定される(つまり1ジャンプあたり12.5点満点)。
- スピード:先にフィニッシュした選手に25点満点が与えられる。もう一方の遅くフィニッシュした選手には24.5点から(100分の1秒差ごとに0.025ポイント)を毎ナスした得点が与えられる。
ワールドカップ最終戦
- ワールドカップランキング・モーグル上位選手の最大男女各30人に出場権が与えられる。
- コンチネンタルカップ総合勝者、世界選手権ジュニアチャンピオン、最終戦開催国選手(男女1枠ずつ)にも出場権が与えられる。
- ワールドカップランキング上位4選手は直接本戦に出場する。それ以外の選手は予選(1回戦のみ)で本戦出場枠を争う。
ワールドカップ成績
- 各大会の上位30人にはワールドカップポイント100p~1pが与えられる。
- シーズン最終戦終了後、モーグル種目でシーズンを通してワールドカップポイントを最も獲得した選手が、男女それぞれの種目別総合個人チャンピオンとなる。
- シーズン最終戦終了後、モーグル種目でシーズンを通してワールドカップポイントを最も獲得した国代表が、種目別総合チームチャンピオンとなる。
- 初めてフルシーズン参戦を果たした若手選手の中から、各国代表による投票で、男女1人ずつ「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」が選出される。 選出基準は50%が成績、50%がパーソナリティーや態度。
- フリースタイルスキー(モーグル、エアリアル、スキークロス、ハーフパイプ、ビッグエアー)全種目を通して、 最もワールドカップポイントを獲得した個人・国代表チームには、フリースタイルスキーチャンピオンの称号が与えられる。
冬季五輪と世界選手権
4年に1度開催される冬季五輪の他に、五輪開催年と重ならないようにして2年に1度世界選手権が行われる。
2022年2月に北京にて冬季五輪が、2023年にはジョージアにて世界選手権が開催される。