各種目のルール・見どころ
各種目のルール・見どころ
スピード
スピードとは、『いかに速く登れるか』をトーナメント勝ち抜き方式で競われる。高さ15m、95度に前傾した壁に、星芒形(せいぼうけい)のハンドホールドと半球形のフットホールドが決められた位置、角度に配置されている。選手は、手順足順を1ミリ1度の単位で洗練させ、タイムを縮めるトレーニングを相当量積んだ上で競技に挑んでいる。トーナメント相手より0,001秒でも遅くても負け、途中で落ちても負け、フライングしても一発で失格、という緊迫した状況の中、たった数秒に全競技人生をかけスタートに立つ。選手の心臓の音がこちらにも聞こえて来るほどの、スタート前の一瞬の静寂と鋭く次のホールドを見つめる姿に、観ている側も自然と呼吸が速くなり手に汗握る。2022年7月現在、世界記録は5.00秒となり、人類初の4秒台は誰になるのかも大注目である。
ボルダリング
ボルダリングとは、高さ4m程度の壁を制限時間内で『いくつ登れるか』を競う。様々な傾斜の壁にホールドが配置されたコースは特に『課題』と呼んでいる。予選・準決勝は5課題を各5分間、決勝では4課題を各4分間のトライで挑む。決勝では競技前にオブザベーションタイムと呼ばれる下見の時間が与えられ、選手たちが相談しながら攻略法を考える。目の前の難題に競技者全員で解き明かそうとする様子は、単なるライバルという存在を超えた、選手同士の絆、信頼を垣間見ることができる。
ゴールは、ホールドを両手でしっかり保持すれば完登。スタートからゴールの間にゾーンと呼ばれるボーナスポイントがひとつあり、それが保持できたかどうかでも、同じ完登数だった場合は、勝負の分かれ目となる。
時間内なら何回でもトライできるが、同じ完登数、同じゾーン数の場合、トライが少なければ順位が上がる。選手は課題という”謎解き”をパワー、バランス、テクニックを駆使し、手順足順をいかに攻略していくか?が問われる。選手のアクロバティックで華やかな動きや登り方で、謎が解き明かされていく爽快感が見て味わえる。
リード
リードとは、高さ15m以上のコースを6分の制限時間内に『どの地点まで登れるか』を競う。事前に6分のオブザベーションと呼ばれる下見が設けられ、双眼鏡を使って上部のホールドまで細かく観察し、40手ほどのホールドの手順を頭にインプットしていく。傾斜は高さを増すごとに強くなり、上部は持ちにくいホールドで、選手の体力と保持を限界まで奪う。一度でも落ちてしまえば、そこまでの記録となり、一発勝負の緊張感と持久力が試される。選手はハーネスにロープを装着し、カラビナにロープをかけることで安全確保をしながら登っていくが、どのタイミングでかけるかも選手の作戦のうちとなる。同じ地点のホールドでも、手が引っ掛かって落ちたか、保持して落ちたかの、ほんの僅かな違いで順位が変わってしまうため、最後の1ミリまで力を振り絞り、頭をフル回転させて登っていく選手の極限的な姿に思わず息を呑んでしまうだろう。全く同地点の判定だった場合、前ラウンドのカウントバック、1〜3位の決着に関しては、カウントバックしても同着の場合、早いタイムの選手が上位となり、単なる持久力だけでは済まされない切羽詰まる戦いにも制さなければならない。
ボルダー&リード
ボルダー&リードとは、ボルダー(ボルダリング)とリードの2種目複合のことで、2024パリオリンピックでは、このボルダー&リードとスピードでそれぞれメダルが競われる。ボルダー、リードでそれぞれ最大100ポイントを獲得でき、その合計200のうち最も高いポイントの選手が優勝となる。ボルダリングでは1つしかなかったゾーンが2つに増え、最初のゾーン獲得で5ポイント、2つ目のゾーン獲得で合計10ポイント、1完登で合計25ポイントの全4課題に挑む。トライ数に応じて0.1ポイント減点されていく。リードはトップホールドから10手まで1手につき4ポイント、それより下10手は3ポイント、さらにその下10手は2ポイント、さらに下10手1ポイントが加算される。トップに近づけば加算されるポイントが大きい。同高度で有効な保持が認められて+判定になった場合、0.1ポイント加算。40手目より下部はどれだけ登っても0ポイントとなる。総合力が要求される上、オリンピックに向けたこの新ルールをいかにものにし、戦略的にこなすかが勝負の分かれ目となる。