EWCの楽しみ方

伝統の「鈴鹿8時間耐久ロードレース」を含むオートバイ耐久シリーズ、それが「FIM世界耐久選手権(FIM EWC)」。

近年は真夏の日本で開催される「鈴鹿8耐」が最終戦に設定され(2021年は11月に延期)、国内のトップチームが年間でシリーズ参戦するなど、年を追うごとに注目度が上がっているレースだ。

このページではFIM EWCの魅力、知っておくべきポイントをご紹介していこう。

年々ステータスが向上するFIM EWC

オートバイの耐久レースがシリーズ化されて「FIM世界耐久選手権(FIM EWC)」が誕生したのは1978年。1949年に始まった「ロードレース世界選手権」(MotoGP/グランプリ)が今年で72年の歴史があるのに比べると、FIM EWCは誕生からまだ43年。シリーズ戦としての歴史は意外にも短い。

しかし、シリーズ発足以前からフランスを中心に耐久レースは行われていた。その中心となっていたのは「ボルドール(Bol’dor)」と呼ばれる格式高いオートバイ耐久レース。Bol’dorとはフランス語で金杯(ゴールデンカップ)を意味する言葉で、1922年の初開催から間も無く100周年を迎える伝統のレースイベントである。FIM EWCはフランスのオートバイ競技ナンバーワンを決めるイベント「ボルドール」を中心に世界選手権としてシリーズ化された選手権なのだ。日本の「鈴鹿8耐」は1980年からシリーズに組み込まれている。

通常は5戦程度のシリーズ戦が組まれるが、新型コロナウィルス感染症の影響で今季は「ル・マン24時間」(フランス)」、「エストリル12時間(ポルトガル)」「ボルドール24時間」(ポールリカール/フランス)」、そして「鈴鹿8時間」の4戦が開催。レース数が少なくなっても「ル・マン24時間」と「ボルドール24時間」というフランスの2つの24時間レースが外されないことからも、フランスの耐久レース文化がベースになっているのがよく分かる。

近年までFIM EWCは世界選手権でありながらフランスのローカル色が強いシリーズだった。MotoGPやスーパーバイク世界選手権(WSBK)などグローバルな人気を獲得しているシリーズと比べると、FIM EWCはフランスが中心。日本では鈴鹿8耐が人気だが、優勝を争うのはスポット参戦する日本のトップチームばかりで、10チームほど来日するチームの目標はあくまで完走狙い。観客が鈴鹿8耐を世界選手権の1戦として意識する要素はあまりなく、ちょっと異質な世界選手権シリーズだった。

そんなシリーズの雰囲気が変わってきたのが5年ほど前。ヨーロッパのスポーツ局「ユーロスポーツ」がFIM EWCのプロモーターに就任し、鈴鹿8耐を含む全戦をテレビで生中継し、グローバル化を進めてきたのだ。2016年からは鈴鹿8耐ウイナーの「TSR」や「トリックスター」が参戦。さらに今季からはフランスの名門チーム「SERT」と組んで「ヨシムラ」も参戦を始めるなど、長年ヨーロッパのローカルシリーズの域を出なかったFIM EWCは近年劇的に変わってきている。

市販車ベースながら、マルチメイクで面白い!

FIM EWCに出場する車両は排気量約1000ccの市販スポーツバイクをベースにした、いわゆるスーパーバイクと呼ばれるカテゴリーのマシンだ。信頼性が何より重要な耐久レースにおいてはホンダ、スズキ、ヤマハ、カワサキなど日本のバイクが強みを発揮し、エントリーの約90%を占めている。しかし、近年はBMWの台数が増加し、ドゥカティも体制を強化して参戦するなどバラエティが増えつつある。

クラスは「EWC」クラスと「SST」クラスがあるが、両クラスに排気量の差などはなく、基本的にベース車両は同じ。ただ改造範囲が異なるため、それぞれのチーム規模に合わせたクラスを選んで参戦することになる。

まず「EWC」クラスは総合優勝を争うメインクラスとなる。基本的には全日本ロードレースの最高峰クラス「JSB1000」クラスとほぼ同じ規定になっており、エンジンの性能アップが可能であるほか、フロントフォーク、スイングアーム、ブレーキ、マフラーなど市販車から改造できる範囲が広く取られている。

チームとして独自のパーツを導入することやエンジン開発を行うことも可能であるし、開発の自由度の高さから鈴鹿8耐にはメーカーがファクトリーチーム(=ワークスチーム)を率いて参戦するのが恒例。ドイツのBMWはファクトリー体制で年間参戦している。ちなみに「世界選手権」としてのタイトルは「EWC」クラスにかけられており、ワールドチャンピオンを名乗れるのは同クラスのチームだけだ。

そして、「SST」クラスは「スーパーストック」とも呼ばれるクラスで、世界選手権ではなく「ワールドカップ」というタイトルをかけて、鈴鹿8耐以外のレースで争われる(今年は全3戦)。

ストックには「市販車状態」という意味があり、マシンはほぼ街乗りバイクと変わらず、改造範囲が非常に狭い。エンジンも市販車のままであり、ベース車両の素性に影響を受けやすいものの、誰でも手に入れられる部品を使って参戦することができ、低コストである。プライベートチームが参加しやすいルールといえよう。

EWCとSSTの違いはピットインにもある。EWCクラスでは素早いタイヤ交換が可能な「クイックホイールチェンジシステム」が使えるが、SSTクラスは市販車でホモロゲーションされたホイールを使うため、タイヤ交換に時間がかかるのだ。レースではEWCとSSTのマシンがテールトゥノーズで争うシーンが度々見られるが、タイヤ交換で約40秒もの差がついてしまう。手間と時間がかかるため、SSTクラスは2スティント、あるいは3スティント連続して同じタイヤで走ることが多く、総合優勝争いはやはりEWCクラスが中心になる。

そして「FIM EWC」シリーズの最大の特徴がタイヤだ。複数のメーカーが参戦し、タイヤの開発競争が許されている部分だ。これは日本のJSB1000も同じだが、近年の上位はブリヂストン装着車ばかりになってしまっている。しかしながら、「FIM EWC」ではブリヂストン、ミシュラン、ダンロップが参戦。MotoGPやWSBKにはないタイヤ戦争が存在する。

国内外6メーカーのバイク、3メーカーのタイヤをそれぞれのチームが異なるチョイスで戦うことで長時間の耐久レースでは様々なドラマが生まれる。この状況を4輪レースで例えるならば、「SUPER GT」に近いレースと言えるかもしれない。

近年はMotoGP経験者も多数参戦!

オートバイメーカーだけでなく、タイヤ、ブレーキ、マフラーなど様々なアフターパーツメーカーが関与する余地がある「FIM EWC」は近年のステータス向上により、参戦チームや選手が年々レベルアップしている。

かつてはMotoGPやWSBKのライダーが参戦するのは、メーカーファクトリーチームがスポット参戦する「鈴鹿8耐」だけで、他のレースはフランス選手権のライダーが中心という時代が長く続いたが、ここ数年は競争の激化により、速さに定評のあるMotoGP、WSBKで活躍したライダーがレギュラーで参戦するようになってた。

日本の「F.C.C. TSR Honda France」(TSR)からは元MotoGPライダーで125cc時代には世界チャンピオンにもなったマイク・ディ・メッリオが参戦。耐久レースを当たり前のように見て育ったフランス人のプロライダーにとっては、FIM EWCをトップチーム体制で戦うことは非常に価値ある選択肢なのだ。今季からは同チームに元MotoGPライダーの高橋裕紀が加入。これまで外国人ライダー中心だったチームに海外レース経験が豊富な高橋が加わり、TSRはMotoGP経験者を2人擁することになった。

ヤマハのトップチーム「YART」にも元MotoGPライダー、ニッコロ・カネパが乗る。速さと安定感があるカネパに加えて、昨年からは元Moto2ライダーのカレル・ハニカが加入し、さらに戦力アップ。開幕戦では見事にポールポジションを獲得した。また、同じヤマハでは「MOTO AIN」にランディ・ド・ピュニエ、ロベルト・ロルフォら元MotoGPライダー2人が乗る。

そしてスズキのトップチーム「ヨシムラSERT MOTUL」には2018年までMotoGPで走ったザビエル・シメオンが2019年に加入。耐久レース未経験ながらフランスの名門SERTをチャンピオンに導いた。今季はさらにMotoGP開発ライダーのシルヴァン・ギュントーリが加わり、戦力が大幅にアップ。「ヨシムラSERT MOTUL」は驚きのハイペースで今季の開幕戦を制した。

このようにFIM EWCのトップチームには一流ライダー達が名を連ねている。日本のチームが中心となる鈴鹿8耐ではどうだろう?かつての鈴鹿8耐ではFIM EWCの年間参戦チームは頑張って5位完走くらいを狙う「亀さん走法」のレースをしていたが、今年の開幕戦ル・マン24時間を見る限り、日本のチームもうかうかしていられない状況ではないだろうか。

昨今の日本のレース事情を鑑みると、鈴鹿8耐の総合優勝争い、表彰台争いの中心がFIM EWCチームになってもなんら不思議ではなくなってきているのだ。今季の鈴鹿8耐を楽しむなら、FIM EWCは年間で見ておいた方が良いのではないだろうか。

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