コースの特徴
いよいよツール一行はアルプスへと突入し、マイヨ・ジョーヌ争いは加速していく。この日のステージ距離は150km強と短めながら、獲得標高差は4200mにも至る。なによりスイス国境間近に散らばる5つの峠は、クライマーとしての脚はもちろん、ダウンヒラーとしての技量をも選手たちに求める。
アルプスでたっぷりと過ごす4日+休息日1日のうち、実に4日半もオート・サヴォワ県に留まる。4年に1度、複数の自転車種目が同時期・同会場でマイヨ・アルカンシェルを争う「UCIスーパー世界選手権」がこの8月に史上初めて開催されるが、2027年第2回大会の開催地が、まさしくオート・サヴォワ。そんな大イベントに向けて、郊外に新トラック競技場が建設される予定のアヌマスが、当然のようにこの日のスタート地に選ばれた。
今年のアマチュア向けシクロスポルティフ大会「レタップ・デュ・ツール」でも使用される同コースの、前半には、立て続けに3つの山岳が登場する。「見知らぬ山」との噂通り、うち2つが初登場で、1級クー峠も39年ぶりの登場だ。1級クー(登坂距離7km、勾配7.4%)&1級フー(5.8km、7.8%)は、上りも下りも「山の素敵な小道」とのことだから、つまりは恐ろしく幅の狭いくねくね道が待っている。
ステージ中盤で少し体制を整えたら、より大きく、よりおなじみの2峠へ。後半の約75kmは、ヨン・イザギレが独走勝利をさらい取った2016年大会第20ステージと、ほぼ同じ道を走る。まずは1級ラマズ峠の、13.9km・7.1%の上りへ。途中2kmにわたって、9.5〜11.5%の難しいゾーンも待ち構える。ちなみに7年前は、ラマズからの下りを利用したアタックも打たれたが、続く超級ジュー・プラーヌの上りであえなく回収された。
なにしろジュー・プラーヌの11.6km・8.5%の上りでは、いきなり登坂口でガツンと10%近い勾配を喰らうのだ。しかも後半5kmは延々10%前後の激勾配。幸いにも、上りきった先で3kmほど息をつく暇があるものの、その後にやってくる下りはまさにローラーコースター。上りに負けないくらい勾配がきつく、ヘアピンカーブも多い。このテクニカルな下りで、土砂降りの中、7年前のイザギレは独走態勢に持ち込んだ。ニバリ、パンタノ、アラフィリップ……という数々のダウンヒル巧者を退けて。
Fumyのステージチェック
ステージの距離自体は短いから、脚のある選手はどんどん飛び出していくんじゃないでしょうか。逃げも総合系も全部ひっくるめて、ひたすら前へ前へと展開していく、そんな厳しいステージになりそうです。後半の山は勾配もあるし、距離もある。たしかに下りフィニッシュではあるし、下りは間違いなくテクニカルではありますが、いわゆるピュアクライマー向きだと思います。
序盤からたくさんのアタックが続くはずです。こうして徐々に疲労が重なっていったところで、後半の1級と超級山岳を迎える。でも、中間スプリント後の少しゆるいところでアシストたちを大いに働かせて、たとえ全員を使い切ってしまったとしても、エースたちは最後の2つの山で勝負に出たいのではないかな。最後の最後はチーム力ではなく、総合エース本人の資質が問われるでしょうね。誰もが歯をくいしばって戦うしかない。タデイ・ポガチャル選手やリチャル・カラパス選手(※第1ステージの落車による骨折でリタイア)のような、個人として山岳力がずば抜けている選手に向いてます。
というのも前日のグラン・コロンビエのステージよりも、最後の山で勝負に出やすいんですよ。たった1つの上りじゃなくて、序盤からカテゴリー1級が続くようなハードな地形ですから。これが後々に響いて、おそらくステージ最終盤でタイムを落としてしまう選手が出てきます。しかも最後の超級は、調子次第でかなり大きなタイム差がつく。
スプリンターにとっては泣きそうなステージですね。いや、最初の1級峠で、すでに泣いてると思います。ここで集団に先に行かれちゃったとしたら、まだ100㎞以上も残ってるんですよ!まさに地獄。前日は最後1つしか山がなかったから、実はスプリンターたちには「休息日」だったんですけど、この日は最初から踏ん張らなきゃなりません。がんばりどころです。
解説:別府史之 / 文:宮本あさか
距離 | ポイント | 現地時間 | 日本時間 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
38 km/h | 36 km/h | 34 km/h | 38 km/h | 36 km/h | 34 km/h | ||
0 km地点 | スタート地点 | 13:20 | 13:20 | 13:20 | 20:20 | 20:20 | 20:20 |
18.7 km地点 | 3級山岳 | 13:46 | 13:47 | 13:49 | 20:46 | 20:47 | 20:49 |
35.3 km地点 | 1級山岳 | 14:19 | 14:22 | 14:27 | 21:19 | 21:22 | 21:27 |
52.7 km地点 | 1級山岳 | 14:45 | 14:51 | 14:57 | 21:45 | 21:51 | 21:57 |
65.5 km地点 | 中間SP | 15:03 | 15:09 | 15:16 | 22:03 | 22:09 | 22:16 |
101.6 km地点 | 1級山岳 | 16:06 | 16:16 | 16:29 | 23:06 | 23:16 | 23:29 |
139.8 km地点 | 超級山岳 ボーナスポイント |
17:06 | 17:21 | 17:38 | 00:06 | 00:21 | 00:38 |
151.8 km地点 | ゴール地点 | 17:18 | 17:33 | 17:51 | 00:18 | 00:33 | 00:51 |