ツール・ド・フランスを知るための100の入り口

ツール・ド・フランスを知るための100の入り口:グランツール複数制覇の記録



グランツール、つまり、ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャの3つすべてを制した選手は、これまで5人。ジャック・アンクティル、フェリーチェ・ジモンディ、エディ・メルクス、ベルナール・イノー、アルベルト・コンタドールだ。

しかし、トリプルクラウン(同一年のジロ、ツール、ロード世界選手権の3つで優勝)を達成した選手は、1974年のエディ・メルクスと、1987年のステファン・ロッシュのふたりだけ。惜しかったのは、ミゲル・インドゥライン。1993年にジロとツールで優勝し、オスロの世界選手権は2位。その際の優勝者は、22歳のランス・アームストロングだった。

達成者の数が物語るように、3大ツール全制覇よりトリプルクラウンの方が難しい。同一年に達成せねばならないことに加え、ワンデイレースの世界選手権と、日ごとに地形に変化をつけられるグランツールでは、コースの特色が異なるからだ。前者のレースでは、ルーラー(スピードマンのフランス語)やパンチャー(アップダウンの地形におけるスピードマン)が有利なことが多い。後者ではスプリント以外をこなす、いわゆるオールラウンダーや、クライマーに勝機がある。

2000年代に入ってオールラウンダーでロード世界選を制した選手といえば、カデル・エヴァンスが浮かぶ(2009年メンドリージオ大会)。しかしツールでは総合30位。不完全燃焼の思いが、秋の世界選への起爆剤となったといえる。

60年代後半から70年代に活躍したメルクスは、ツール総合優勝5回、ポイント賞3回、山岳賞2回。主要クラシックレースはほとんど総なめ。しかし彼のようにマルチなライダーは特別製。今では狙うレースタイプを絞り、そのために年間スケジュールを組み立てるのが潮流だ。チームによっては、1日で完結するクラシックレース要員と、ステージレース要員を分けてトレーニングさせることもある。選手層が厚くなり、勝利を目指した分業化が進む今日、トリプルクラウンは、ターゲットにすることすらはばかられるような遠い記録だ。

※本企画は2013年6月に実施されたものです。現在と情報が異なる場合がございますが、予めご了承ください。

写真 ta_do (@ flickr) [CC-BY-SA-2.0 or CC-BY-SA-2.0], via Wikimedia Commons

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