来歴
21歳で自転車を始め、26歳でプロ入りした元スキージャンプ世界選ジュニア団体王者。とてつもないスピードで成長を続け、真っ先にTT能力が開花する。
レースの朝は散歩やジョギングに出かけ、レース直後はヨガやピラティス。ホテルでも決してエレベーターは使わず、階段で部屋まで猛スピードで駆け上がる。ちなみに自転車トレーニングはひとりでひたすら黙々とやるのが好きらしい。
◆スキージャンプ界からの転向生
プロ1年目の2016年、ジロ・デ・イタリア初日。あのトム・デュムランにコンマ差の2位に滑り込み、あっさり個人タイムトライアルを勝利。その約1週間後にはTTを制し、グランツール区間1勝目を獲得。2017年2月には初のステージレース総合制覇を成し遂げた。
同年夏にはジャンプ台を高速で滑り降りていた要領を活かし、ツール・ド・フランスで超級からの下りフィニッシュをさらう。見事山岳ステージを手にし、恐ろしいダウンヒル能力を披露した。ジャンプのおかげで「柔軟性、爆発力、バランス感覚」は習得済み。「プロトン内走行」は大急ぎで鍛錬。最大酸素摂取量(Vo2max)は、ジャンパー時代にすでに82を超え、優れた持久力を持っていた。
◆ヴェロドール獲得!天井知らずの勝利無双
2019年には、3位に沈んだジロ以外、ブエルタ・ア・エスパーニャを含む出場レース全てで総合優勝という無双ぶり。29歳でグランツールを総合優勝し、近年稀に見るオールダウンダーに成長。そのポテンシャルはいまだ天井知らずだ。
2020年はツール以外のほぼ全てで勝利。ブエルタで人生2度目のグランツール、リエージュで初のモニュメントも制した。そして、2年連続でUCIワールドランキング年間1位の座を射止め、最優秀自転車選手賞「ヴェロドール」とスロベニア最優秀アスリート賞が贈られた。……ついでに言えば口癖の「フォ!」が、Jspocycleの流行語対象にさえ選ばれたほど。
◆切り替えの早さが武器!ツールは遠くも五輪で手にした金メダル
3度目の正直なるか。スロベニアに史上初のマイヨ・ジョーヌを持ち帰る夢は、パリ到着前夜に破れた。しかし、2021年ツール途中棄権後は、五輪TT金メダルを獲得。ミスも多いが、繰り返さないログリッチ。秋には中盤で少し息抜きを覚えた32歳の伸び盛り。
2022年夏のツールはヨナス・ヴィンゲゴーとの「ダブル」エース制に挑戦。それどころか「ワウト・ファンアールトのポイント賞ジャージとセップ・クスの山岳ジャージの同時獲得だって可能だよね」と、極めてポジティブである。
◆チーム移籍:新天地ボーラ・ハンスグローエへ
ヴィンゲゴー、セップ・クスとのトリプルエース体制を組んだ2023年のブエルタ。ところが、クスが手に入れたマイヨ・ロホをライバルチームから守るどころか、あわやチーム内で奪い合う寸前に。結局、チームオーダーにしたがってクスに主役を譲り、自身は個人総合3位。完全にチームにいる意味を見出せなくなってしまったログリッチ。
自身を見出し、育ててくれたユンボ・ヴィスマ(現ヴィスマ・リースアバイク)に恩義はあるけれど、「あのブエルタで勝っていたとしても、移籍を選んでいたと思う」と語る。前チームには違約金を払い、新たな環境にボーラ・ハンスグローエを選んだ。
◆ブエルタ・ア・エスパーニャで4度目の総合優勝
新たな環境で迎えた2024年シーズンは、イツリア・バスクカントリーでリーダージャージを着ながら落車リタイア。ダメージは最小限で、当初の目標であったツールへと調整を再開。前哨戦のクリテリウム・デュ・ドーフィネを勝ち、視界は良好…なはずだった。
しかしツールが始まると、ライバルのポガチャルらから遅れをとり、第12ステージでは落車で腰椎を骨折しリタイア。それでも回復は早く、ブエルタでは4度目の総合優勝で復権した。
©A.S.O./Pauline Ballet ©Unipublic / Cxcling
戦績
年 | レース・結果 |
---|---|
2015年 | ツアー・オブ・スロベニア総合優勝 ツール・ド・アゼルバイジャン総合優勝 |
2016年 | 国内選手権個人タイムトライアル優勝 |
2017年 | ヴォルタ・アン・アルガルヴェ総合優勝 ツール・ド・ロマンディ総合3位 世界選手権個人タイムトライアル2位 |
2018年 | ツール・ド・フラン総合4位 イツリア・バスク・カントリー総合優勝&ポイント賞 ツール・ド・ロマンディ総合優勝 ツアー・オブ・スロベニア総合優勝 |
2019年 | ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝&ポイント賞 ジロ・デ・イタリア総合3位&区間通算3勝 UAEツアー総合優勝 ティレーノ〜アドリアティコ総合優勝 ツール・ド・ロマンディ総合優勝&ポイント賞 ジロ・デッレミリア優勝 トレ・ヴァッリ・ヴァレジーネ優勝 |
2020年 | ツール・ド・フランス総合2位&区間通算3勝 ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝&ポイント賞 国内選手権ロードレース優勝 ツール・ド・ラン総合優勝&ポイント賞 リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ優勝 |
2021年 | ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝&区間通算10勝 イツリア・バスクカントリー総合優勝&ポイント賞&山岳賞 東京オリンピック個人タイムトライアル金メダル ジロ・デッレミリア優勝 ミラノ〜トリノ優勝 ラ・フレーシュ・ワロンヌ2位 イル・ロンバルディア4位 |
2022年 | ブエルタ・ア・エスパーニャ個人総合3位&区間通算12勝 パリ〜ニース ポイント賞 パリ〜ニース総合優勝 クリテリウム・デュ・ドーフィネ総合優勝 イツリア・バスク・カントリー総合8位 |
2023年 | ジロ・デ・イタリア個人総合優勝 ティレーノ~アドリアティコ個人総合優勝&区間3勝 ボルタ・ア・カタルーニャ個人総合優勝&区間2勝 ブエルタ・ア・ブルゴス個人総合優勝&区間3勝 ジロ・デル・エミリア優勝 イル・ロンバルディア3位 |
2024年 | クリテリウム・デュ・ドーフィネ総合優勝&ポイント賞 ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝 |