来歴


わずか29選手しか存在しないUEC(欧州自転車競技連合)「ホール・オブ・フェーム」の一員。欧州選手権、世界選手権、五輪(2008北京と2012ロンドンのチームパシュートで金メダル)の3タイトルを手にした者だけ許された「殿堂」であり、現役男子ロード選手としては唯一。


◆特殊なエリート街道


2007年から2012年まではトラック競技のチームパシュート英国代表として、世界選手権で3勝、五輪で2つの金メダルを手中にした。そんな超エリートトラックレーサーから転向し、2015年にクリストファー・フルームが所属していたチームスカイ(現イネオス・グレナディアーズ)に加入。


2016年以降はステージレーサーへ変身し、2016年にパリ〜ニース総合優勝。体重を最大時より5kg絞り、フルームのアシストとしても大活躍。いつしかそのエースを追い抜いて、2018年にはクリテリウム・デュ・ドーフィネ総合優勝。そして、同年ついにフルームに代わってツール・ド・フランス途中からエースとなり、マイヨ・ジョーヌを獲得した。


最終日のパリ・シャンゼリゼでは総合優勝者としてスピーチし、言葉を終えるとマイクを手から落とすという「勝利のマイクドロップ」を見せた。マイヨ・ジョーヌのインパクトは大きく、故郷ウェールズではスポーツ界で殿堂入りし、国立自転車競技場には自分の名がつけられた。


ゲラント・トーマス

◆次なるグランツールを求めて


2018年のマイヨ・ジョーヌ以降、新たなグランツール制覇のチャンスは2度巡ってきたが、1度目は同僚ベルナルに続くツール・ド・フランス総合2位。2度目の2020年ジロ・デ・イタリアは、路上のボトルに引っかかって落車、リタイアとなった。


2021年のツール・ド・フランス開幕時には35歳になっていて、「あらゆるチャンスを最大限に活用せねばならない年齢に差しかかった」と語った。そして、2022ツール・ド・フランスでは総合3位の結果を残し、まだ確実に頂点を争う場にいることをライバルたちに思い出させた。


◆39歳となる2025年はラストシーズン


2025年は、スカイ時代から通算してチーム在籍期間が全所属選手中最長の16年目となった。5月25日には39歳になるが、今季が現役最後とSNSで明言している。どんな有終の美を見せてくれるのか? そして最後にどんなアイロニックな名言を残してくれるのか?


ゲラント・トーマス

©A.S.O./Pauline Ballet   ©A.S.O./Billy Ceusters

戦績

レース・結果
2018年 ツール・ド・フランス総合優勝
クリテリウム・デュ・ドーフィネ総合優勝
ヴォルタ・アン・アルガルヴェ総合2位
ティレーノ〜アドリアティコ総合3位
国内選手権個人タイムトライアル優勝
2019年 ツール・ド・フランス総合2位
ツール・ド・ロマンディ総合3位
2020年 ティレーノ〜アドリアティコ総合2位
2021年 ツール・ド・ロマンディ総合優勝
クリテリウム・デュ・ドーフィネ総合3位
ボルタ・ア・カタルーニャ総合3位
2022年 ツール・ド・フランス総合3位&区間通算3勝
ツール・ド・スイス総合優勝
2023年 ジロ・デ・イタリア総合2位
2024年 ジロ・デ・イタリア総合3位