来歴


標高2400mの高地で生まれ育ったギルマイ。13歳でマウンテンバイクを始め、15歳でロードに転向。ジュニア時代に大陸選手権で3つの金メダルを手にすると、UCI国際自転車競技連合から大急ぎでスイスのワールドサイクリングセンターへ連れて行かれた。


プロ初勝利後にオファーをくれたのは、仏籍の小さな2チームだけだったけれど、静かな環境で経験を積んでいった。


◆アフリカ大陸のサイクル史を紡ぐ若き才能


18歳の時に、2000年以降に生まれた選手として、レムコ・エヴェネプールよりも早くプロ勝利を上げたギルマイ。2021年秋のベルギーではU23ロード2位の成績を収め、アフリカの黒人として史上初めて世界選表彰台に上がる。


そして2022年春、ヘント~ウェヴェルヘムで、アフリカ人として史上初めてUCIワールドツアー登録のクラシックレースをたったの21歳で制した。さらに、初のグランツール参戦となったジロ・デ・イタリアで第10ステージのスプリントを制し、アフリカ大陸出身の黒人選手として、史上初のグランツール区間優勝に輝いた。


「国の若者の模範となりたいし、たくさんのアフリカ選手に後に続いて欲しい」と語り、その若さで国や大陸の歴史を背負って立つ覚悟は出来ているようだ。


ビニヤム・ギルマイ

◆試練の始まり


2023年は試練のシーズンに。ロンド・ファン・フラーンデレンでは時速75km出ていた状況からバランスを崩した他選手に絡み落車。脳震盪に見舞われ、2週間ほど安静を余儀なくされた。


それでも復帰して、ツール・ド・スイスで1勝するも、初出場のツール・ド・フランスはステージ3位が最高。たびたび体調不良にも泣かされた。


それでも、大きなレースをいくつも走れたことは良い経験に。とりわけ、ツールはプロトンの緊張感がまったく違うことを知り、本気で向き合わないと勝てないと悟ったようだ。


◆ツールでアフリカ勢初となるマイヨ・ヴェール、まだまだストーリーは続く「Make History」


ギルマイにとって、そしてアフリカの自転車界にとって2024年は新たな歴史が生まれるシーズンとなった。ツール第3ステージで、アフリカ系黒人ライダーとして初となるステージ優勝。


ここから快進撃が始まって、第8・第12ステージでも勝利。1大会で3勝を挙げ、その勢いのままマイヨ・ヴェールを獲得した。彼が活躍するたびに、「Make History」のフレーズが踊った。秋には日本に初来日。ツール・ド・フランス さいたまクリテリウムを勝った。


ビニヤム・ギルマイ

©A.S.O./Charly Lopez   ©A.S.O./Billy Ceusters

戦績

レース・結果
2019年 ラ・トロピカル・アミサ・ボンゴ区間優勝
ツアー・オブ・ルワンダ区間優勝
2020年 ラ・トロピカル・アミサ・ボンゴ ポイント賞
ツール・デュ・ドゥー2位
ジロ・デッラ・トスカーナ4位
2021年 クラシック・グラン・ブザンソン・ドゥー優勝
ツール・デュ・ドゥー2位
2022年 チャレンジ・シクリスタ・マヨルカ(トロフェオ・アルクディア)優勝
ヘント〜ウェヴェルヘム優勝
国内選手権個人タイムトライアル優勝
2023年 トロフェオ・セス・サリナス3位
トロフェオ・パルマ2位
ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ 区間優勝
ブリュッセルサイクルクラシック4位
ツール・ド・スイス 区間1勝
2024年 サーフコーストクラシック優勝
シルキュイ・フランコ・ベルジュ優勝
ツール・ド・フランス ポイント賞