ノルディックとは(ルール解説)
スキージャンプとクロスカントリースキーを戦い、両種目の成績の組み合わせで争われる。ノルディック・コンバインドとも呼ばれる。
冬季五輪、世界選手権、FISワールドカップでは、現在ではスキージャンプ→クロスカントリーの順に行われるグンダーセン方式が採用されることが多い。
クロスカントリー→ジャンプの順に争われるものはマススタート方式と呼ばれる。また個人戦の他に、1チーム4人制で争われる団体戦、
1チーム2人制で争われるチームスプリントがある。
2つのまったく異なる運動能力が必要とされることから、ノルディック複合の王者は「キング・オブ・スキー」と賞賛される。
ルール
グンダーセン方式とは
スキージャンプの成績に従って、クロスカントリーを時間差スタートによる追い抜き(パシュート)方式で争う。
- スキージャンプを争い、飛距離点+飛形点の合計ポイントで順位を決める。
- ポイントをタイム差に換算。(※)
- スキージャンプの成績順(首位→最下位)に、タイム差をつけてクロスカントリーをスタート。
- クロスカントリーのフィニッシュライン通過順に、ノルディック複合の総合成績が決定。
(※)ポイント→タイム換算
個人戦(5・10・15km):15pt=1分
チームスプリント(2人×7.5km):30pt=1分
団体戦(4人×5km):45pt=1分
-
換算時の数字は小数点第6位まで使用されるが、換算後のタイム差はコンマ以下は四捨五入。
例)団体戦では1pt=1.333333秒、ジャンプの結果が50pt差の場合は50×1.333333=66.66665、実際にクロスカントリーのスタートで使用されるタイム差は67秒 - 団体戦は4人の、チームスプリントは2人の合計ポイントでタイムが換算される。
マススタート方式とは
- クロスカントリー→スキージャンプの順に争われる。
- クロスカントリーは全選手が一斉にスタートを切る「マス」方式が採用される。
- クロスカントリーでフィニッシュラインを1位通過した選手を基準に、タイム差でポイントが配分される。 1位通過=0pt、1分差=マイナス15pt(10kmレースの場合、その他グンダーセン方式と換算方法は同じ)
- スキージャンプの結果による飛距離点+飛形点の合計ポイントと、クロスカントリーでのポイントを合算する。
- 2種目の合計ポイントの最も多い選手がマススタートレースの勝者となる。
団体戦とは
- 1チーム4人制。男女ミックス戦の場合は男女2選手ずつ。
- 4選手全員がスキージャンプを1本ずつ飛行し、4選手全員の合計ポイントをタイム差に換算する。
- ジャンプに出場できなかった選手、失格になった選手がいた場合、その選手のポイントはゼロとして計算する。
- 算出されたタイム差に従って、4選手がリレー形式でクロスカントリーを争う。
- クロスカントリーの距離は1選手あたり5km。コース全長は2.5kmで、各選手が2周回ずつ走ってリレーを行う。
- 男女ミックス戦の場合、クロスカントリーの距離は男子5km、女子2.5km。出走順は男→女→女→男。
チームスプリントとは
- 1チーム2人制。
- 2選手全員がスキージャンプを1本ずつ飛行し、2選手全員の合計ポイントをタイム差に換算する。
- ジャンプに出場できなかった選手がいた場合、チームはクロスカントリーに進出することは出来ない。
- ジャンプを失格になった選手がいた場合、その選手のポイントはゼロとして計算する。
- 算出されたタイム差に従って、2選手がリレー形式でクロスカントリーを争う。リレーは1周毎に行う。
- クロスカントリーの距離は1選手あたり7.5km。コース全長は1.5km。
- エクスチェンジ・ゾーン(リレーゾーン)手前には待機ボックスがあり、走行していない選手はボックスで待機しなくてはならない。 ボックス内でコーチの指示を仰いだり、ワックスを塗り直すことは可。
- エリミネーションシステムが2選手ともに2周回ずつ走り終えた以降に発動される。すなわち1周回以上遅れて追い抜かれた場合、その時点で競技終了となる。 終了時点の順位で国別ランキングポイントが与えられる。
- FISワールドカップの場合、1カ国あたり2チームまで出場できる。ただし 国別ランキングにポイント反映されるのは上位1チームのみ。
スキージャンプのルール
- ジャンプ台はノーマルヒルかラージヒルのいずれかが使用される。
- 基本的に1本の飛行で争われる。FISワールドカップでは最終戦のみ2本。
- 各ジャンプ後に飛距離点(K点=60ポイント)と飛形点(最大60ポイント)が算出され、ポイント合計の多い順に順位が与えられる。
- 競技方式や飛距離点・飛形点の算出方法は、スキージャンプ競技と同様のルールが適応される。
- 個人戦の飛行順は、現行ワールドカップスタンディング(個人ランキング)の下位→上位。団体戦&チームスプリントは、 現行ネイションズカップスタンディング(国別ランキング)の下位→上位。
クロスカントリーのルール
- ジャンプ1位が第1走者、2位が第2走者、3位が第3走者……(以下同様)となる。
- ジャンプのポイントを基にタイム差が算出され、2位以下の選手はそのタイム差に従ってインターバルスタートを切る。
- フィニッシュラインの通過順に、ノルディック複合の総合順位がつけられる。
<グンダーセン方式>
-
<マススタート方式>
- 全参加選手が一斉にスタートを切る。
- ストレートスライディング走法
- 1左右のスキーを
平行に動かす - 2雪面に掘られた
2本の溝を使う - 3先端部の反りが大きい
- あらゆる走法が許されるが主に
スケーティング走法
- 1ストックは
長いものを使用 - 2スピードが出せる
半面、強靱な
威力が求められる
- 男子個人戦の走行距離は5km、10km、15kmのいずれか。コース全長は2km、もしくは2.5kmで、周回方式が採用される。
- 団体戦は4人×5kmで争われる。コース全長は2.5kmで、各選手は2周回ずつ走る。
- チームスプリントは2人×7.5kmで争われる。コース全長は1.5kmで、各選手は1周回ずつリレーしながら全部で5周回ずつ走る。
-
コースには以下の3つの要素が均等に含まれていなければならない。
❶【上り】勾配は9~18%、標高差10m以上であること。勾配18%超の短い上りもいくつか含む。
❷【平坦】土地本来の性質を活かしたうねりのあるパート。小さな起伏も含む(標高差は9m以内)。
❸【下り】性質の異なるテクニカルな複数の下り。
- 団体戦&チームスプリントのコースには、次走者へ引き継ぐための「エクスチェンジ・ゾーン」が設けられる。 団体戦は全長30m、チームスプリントでは30~40mのゾーン内でリレーを行う。
- エクスチェンジ・ゾーン内で前走者が次走者の手、もしくは体の一部に触れることでリレーが行われる。後押しは禁止。
- フィニッシュラインの雪上25cm地点に電子計測レーダーが設置され、そこに体の一部が触れた時点でフィニッシュタイムが記録される。 手動の場合は前足がフィニッシュラインを通過した時点でタイムを計測する。同時フィニッシュの場合は写真判定で順位を決定する。
競技説明
ワールドカップ開催時期
FISワールドカップスキー・ノルディック複合は、毎年11月末から3月中旬に渡り、4つのピリオドに分けて開催される。
ノルウェー・リレハンメルでの大会は伝統的に「リレハンメル・ツアー」と呼ばれ、3日間で男女異なる試合が執り行われる。またシーズン中盤には「ノルディック・コンバインド・トリプル」と銘打たれた、3日間の総合成績で争うシリーズ戦も行われる。
3月中旬開催の、ワールドカップランキング上位30選手のみの参加が許された最終戦で、シーズンの幕は閉じる。
ワールドカップ参加条件
- (シーズン終了時の)年内に16歳の誕生日を迎えるか、それ以前に生まれた者。
- ワールドカップポイントをすでに獲得した経験のある者。
- 前シーズン、もしくは現行シーズンにコンチネンタルカップポイントを獲得した者。
- 前回のジュニア世界選手権ノルディックコンバインドの個人戦でメダルを獲得した者。
- 各ピリオド終了後に計算し直される。
- ワールドランキングリスト(過去4ピリオドのポイント累計によるランキング)の上位55選手に出場権が与えられる。ただし各国最大6名まで。
- 現行ピリオドのコンチネンタルカップスタンディングの上位3選手に出場権が与えられる。ただし各国最大1名まで。
- 1つの連盟に許される最大出場人数は11(ワールドランキング+コンチネンタルランキング+ジュニア世界選メダリスト+開催国枠最大4人)。
- 上記条件により1枠の場合でも、前・現行ピリオドに個人・団体問わずワールドカップポイントを1ポイントでも獲得した国は、最大8ピリオドに渡り2枠追加することができる。
- 開催国は最大4枠追加できる。
- 枠のない国、もしくは1枠の国は最大2人まで、2〜3枠の国はそれぞれ1人ずつ追加で大会に出場させることができる。
- 団体戦が予定されている大会の場合、3枠以下の国も最大4人まで個人戦に出場させることができる。
ワールドカップ成績
- 上位30人にはワールドカップポイント100~1ptが与えられる(ノルディック・コンバインド・トリプルのポイント配分は下記参照)。
- ワールドカップスタンディング(個人ランキング)は、現行シーズンの個人戦のワールドカップポイントの累計で決定される。
- ワールドカップスタンディングで首位に立つ選手は、ワールドカップ・ノルディックコンバインド・リーダービブ(黄)を着用して試合に臨む。 個人戦1戦終了ごとに該当選手にビブが授与される。
- 同様にベスト・ジャンパーズ・ビブ(青)とベスト・クロスカントリースキーヤー・ビブ(赤)も選出される。各会場での全戦終了後に該当選手にビブが授与される。
- シーズン最終戦終了時にワールドカップスタンディングで首位に立っていた選手が、ワールドカップ・ノルディックコンバインドのシーズン総合優勝に輝く。 シーズン総合覇者にはFISワールドカップ・ノルディック・コンバインド・トロフィーが、上位3選手にはメダルが贈られる。
- 団体戦(4人制)では上位8カ国にワールドカップポイント400~50ptが与えられる。
- チームスプリント(2人制)では上位8カ国にワールドカップポイント200~25ptが与えられる。
- 団体戦とチームスプリントによるポイントと、連盟に所属する全選手の保持するワールドカップポイントの合計で、国別ランキングが決定される。
- シーズン最終戦終了時に国別ランキングで首位に立っていた国には、FISネイションズトロフィーが与えられる。
ノルディック・コンバインド・トリプル
- 3日間で争われる。
- 1日目はジャンプ1本+クロスカントリー7.5km、2日目はジャンプ1本+クロスカントリー10km、3日目はジャンプ1本+クロスカントリー12.5km。いずれもグンダーセン方式。
- 1日目の上位50選手のみが2日目に進出できる。初日・2日目の総合上位50選手のみが3日目に進出できる。
2日目以降は、前日の成績をもとにジャンプの飛行順が決定される。 - 3日目のクロスカントリーのフィニッシュラインを最初に通過した選手が、ノルディック・コンバインド・トリプルの総合覇者となる。
- 1日目と2日目は上位30人にワールドカップポイント50~1ptが与えられる。3日目の上位30人には200~2ptが与えられる。
ワールドカップ最終戦
- 最終戦に出場できるのはワールドカップスタンディングの上位30選手のみ。
- ジャンプ2本とクロスカントリー15kmで争われる。
冬季五輪と世界選手権
4年に1度の間隔で冬季五輪が、2年に1度の奇数年にはノルディックスキー世界選手権が行われる。
次回2023年はスロベニアのプラニカで、2025年はノルウェーのトロンハイムでの開催が予定されている。