選手の役割
ロードレースは個人戦ではありません。チーム内では、それぞれの選手が、役割を与えられて走っています。また選手によっては得意・不得意があり、総合的に力を持つ選手もいれば、コースのレイアウトによって力を発揮する選手もいます。
以下の画像を例に説明します!
❶ エース チームNO.1の実力の持ち主!
それぞれのチームには、必ず「エース」と呼ばれる実力のある選手がいます。ただ、ひと口にエースと言っても、全員がステージレースの総合優勝を狙っているわけではありません。もちろん総合力のあるエースであれば総合優勝を狙いますが、上りの強いエースであれば山岳賞獲得を目的とし、スプリント力のあるエースはスプリント賞を目指します。
チームによっては、総合優勝も狙える実力を備えたエースを2人とする、ダブルエース体制を敷くチームもあります。
またエースがなんらかの事情(落車や体調不良)で戦線離脱した場合には、残った選手のなかでエースの次に力のある選手がエースとなり、勝利を目指すことになります。エースはただ強いだけでなく、このエースを勝たせるためにアシストに徹するんだと、チームのほかのメンバーが思えるような人格的な魅力も求められます。
❷ アシスト エースを献身的にサポート
ロードレースにおいては、サポートや役の「アシスト」なくして、エースの勝利はあり得ません。ツール・ド・フランスのようなグランツールでは、各チーム8名が出場しますが、基本的にエース以外の7人は全員アシストとなります。
アシストにはいくつもの仕事があります。その最たるものは、風よけです。エースの前を走り、自らが風よけとなることで、エースの体力を温存するわけです。そのほか、レース中に集団からサポートカーまで下がり、ドリンクボトルや補給食を運ぶのも大切な仕事です。
またエースの脚質によってどのようなアシストを揃えるかも、重要な戦略のひとつです。山岳に強いエースであれば、峠でエースを牽引できる実力を持ったアシストが求められますし、エーススプリンターを勝たせるためには、フィニッシュ直前まで猛スピードでエースの前を走る「発射台」アシストが不可欠です。
❸ クライマー 坂のスペシャリスト
峠の坂を上るのを得意とする選手をクライマーと呼びます。コース上にいくつもの山が登場する山岳ステージで、その真価を発揮します。
平均勾配が10%、登坂距離が10km以上も続くような険しい坂を、クライマーたちは軽々と上っていきます。こんな彼らがアシスト役を務める場合は、一定ペースでエースを山の上まで引き上げたり、ハイペースを刻むことでライバルたちの体力を消耗させたりする役目を果たします。
グランツールでは、上りに強いクライマー型のエースが総合優勝するケースが多くあります。山岳ステージでは単純な実力差はもちろん、駆け引きのうまさ、その日の調子によって数十秒から数分という大きなタイム差が生まれることがあり、山での大きなアドバンテージが総合リーダージャージを引き寄せるのです。
❹ スプリンター スピード勝負は任せろ!
殺到する集団のなかから飛び出し、自らのスプリント力を最大の武器にしてフィニッシュラインへ駆け込むのがスプリンターです。がっしりした体躯の選手が多く、レース最終盤で凄まじいパワーを発揮。時速70kmから80kmというスピードを叩き出します。
スプリンターが得意とするのは、平坦なコース。最終スプリントに備えて、レースの大半は、風よけ役のアシスト選手の後ろで脚を温存しながら過ごします。逆にアシストたちは、エーススプリンターをフィニッシュ手前数百メートルのいい位置まで連れていくために、数人で一列棒状の「列車」を組みスプリンターを引っ張っていきます。
スプリンターはスプリント勝利を目指すだけでなく、ステージレースではポイント賞ジャージ争いにも加わります。コースレイアウトによっては、ワンデーレースでの優勝も狙うことになります。
写真:全てYuzuru SUNADA