サイクルロードレースとは

ひとことで自転車レースと言っても、自転車競技場内で行われるトラックや、屋外に特別に作られた周回コースを用いるマウンテンバイク、シクロクロス、BMX等々があります。そして私たちが普段使用している一般道を走るのが、ロードレースです。

ロードレースでは、フィニッシュの着順や所要時間を争います。レース規模により出場する選手の数は違いますが、ツール・ド・フランスのようなトップカテゴリーのレースでは、約200人もの選手が一斉に走ります。マラソンと違うのは、選手それぞれが優勝を狙う個人競技ではないこと。チーム単位の出場であり(ツールでは1チーム8名)、各チームのエースを勝たせるために他の選手がアシスト役となる団体競技です。団結力や戦術を駆使する、そんな側面がレースを面白くするのです。

一般道を走るため、コースは様々。起伏の少ない田園地帯や海岸線を走ったり、標高2000mを超える高山を登ったり。時には石畳や土を踏み固めただけの道を進むことさえあります。

またほんの数Kmから、長いレースでは300Km近い距離をたった1日で走ることも。1日で勝負がつくレースもあれば、3週間かけて勝者を選び出すレースもあります。


MOVIE

  • ツール・ド・フランスってどんな大会?

  • ツール・ド・フランスってどんなルール?

  • 逃げって何?

  • 屈強な男たちの戦い!スプリント

  • タイム差

  • 選手たちの食事

  • アシスト

  • 横風分断

  • チームスタッフのお仕事

  • ロードバイク



レースの種類

基本的には同時にスタートし、一番早くゴールできた選手の勝ちとなります。しかし、大会によってレース内容が違うので、それによって勝ちの基準も異なります。


タイムトライアル(通称TTと呼ばれる)

<個人タイムトライアル>
通称ITT。選手がひとりずつ時間差でスタートし、個人単位で走行タイムを競います。距離は短くて数km、長い場合は50kmを越すことも。

<チームタイムトライアル>
通称TTT。チーム単位で時間差スタートを切り、チーム単位で走行タイムを競います。チーム全員で出走しますが、規定に則った数の選手がフィニッシュラインを通過した時点で(例えば8人出走のうち5人目など)、チームタイムが計測されます。


ステージレース

数日間から最長3週間で勝負を競います。「ステージ(区間)」と呼ばれる1日単位のレースで順位とタイムを争いつつ、全ステージを終えた時点で合計所要タイムが最も少ない選手が総合優勝に輝きます。

総合優勝の他にも、各ステージでも勝者を選び出します。また毎日のコース上には山岳ポイント(峠の頂上に設定)やスプリントポイント(主に平坦路に設定)が設けられ、通過順位によって与えられるポイント合計数で山岳賞やポイント賞を競います。

ステージレースの最高峰は、3週間を闘い抜く「グランツール」。「ジロ・デ・イタリア」「ツール・ド・フランス」「ブエルタ・ア・エスパーニャ」の3つで、3大ツールとも呼ばれます。特にグランツールではタイムトライアル、平地、山岳など異なるコースが組み合わされるため、持久力と共に高い総合力が求められます。


ワンデー(クラシック)レース

1日のレースで勝者が決まります。一番最初にフィニッシュした選手が優勝、という単純かつ明快なレースです。また1日ですべてが決するため、「勝ち」を意識した選手/チーム同士の激しい攻防が最初から最後まで繰り広げられます。

ワンデーレースには100年以上の歴史を持つ伝統的なレースも多く、それらを総称して「クラシック」と呼びます。特に格式の高い5つのレースは「モニュメント」と称され、そのレースで勝つことは自転車選手にとって非常に名誉なこととされています。

またクラシックやモニュメントのコースは、難易度の高さでも他レースと一線を画しています。パンクが続出するほどゴツゴツした石畳を高速で走り抜けたり、勾配が20%を越すような激坂をよじ登ったり。ほぼ毎年同じコースを通過するため、伝統の勝負地を巡る駆け引きも大きな魅力のひとつです。


ステージレース&ワンデー(クラシック)レース比較表
レースの種類 ワンデー(クラシック)レース ステージレース
期間 1日 数日間(最大3週間)
ルール 最初にフィニッシュした選手が勝利/td> 累計タイムが少ない選手が勝利
表彰 レース後、上位3名 各ステージ後にステージ勝者、総合首位、各賞
魅力 一発勝負の緊張感 全期間を通しての戦略
代表的なレース フレッシュ・ワロンヌ、※パリ~ルーベ パリ~ニース、グランツール

ジャージの意味

ステージレースでは総合首位の選手や、他の副賞の首位選手に、各ステージ終了後に特別なジャージが与えられます。各レースによってジャージの色や副賞の種類は様々。

ここではツール・ド・フランスを例に、ジャージの意味を説明します。


ツール・ド・フランスのジャージ

  • 黄色い「マイヨ・ジョーヌ」総合リーダージャージ。各ステージを終えた時点で、通算所要時間が最も少ない選手が着用します。トップの選手が集団のなかでも目立つようにと、1919年に登場しました。最終ステージの終了時点でこのジャージを着ていた選手が、総合優勝者となります。

  • 水玉模様の「マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ」山岳賞ジャージ。各ステージのコース上に立ちはだかる峠の頂上に設定された山岳ポイントを、最も多く収集した選手が着用します。山の難しさにより4級(最も易しい)から超級(最も難しい)までクラス分けされ、ポイント配分は変わります。一般的には単純に「マイヨ・ア・ポワ」と呼ばれます。

  • 白い「マイヨ・ブラン」新人賞ジャージ。25歳以下の選手に与えられ、若手のなかで総合所要タイムが最も短い選手が着用します。なおひとりの選手が複数のジャージを獲得した場合、黄色、緑、水玉、白という優先順位で着用し、着られなかったジャージは、該当する賞の2位の選手が着用します。

  • 緑の「マイヨ・ヴェール」ポイント賞ジャージ。各ステージのフィニッシュ順位とステージ上に設定された中間ポイントの通過順位によって与えられるポイントを、最も多く収集した選手が着用します。通常スプリント力のある選手が狙いますが、「レギュラリティジャージ」とも呼ばれ、3週間通して安定した走り求められます。

※レースによってジャージの種類や呼び名が違います。


世界チャンピオンジャージ

毎年秋に世界選手権が開かれます。ロードレース(ワンデーレース)と個人タイムトライアルの2レースが行われ、各レースで優勝した選手には、白地に五大陸を表す5色の虹が描かれたジャージ「マイヨ・アルカンシェル」が与えられます。このジャージは、翌年の世界選手権までの1年間、該当レースで着用することが許されます。


ナショナルチャンピオンジャージ

所属国の国内選手権で優勝した選手には、「ナショナルチャンピオンジャージ」が与えられます。やはり翌年の国内選手権までの1年間、母国の国旗をモチーフにした特別なジャージを、該当レースで着用することが許されます。


ロードレースを深く知ろう

ロードレースには特有のルールや習慣、展開が存在します。ちょっと複雑難解にも見えますが……これを知っていたら、レース観戦がきっともっと楽しくなりますよ!


スタートはのんびりと

全員一斉に走り出すマスドスタートでは、大抵は、いきなりヨーイドンではありません。スタートしてもしばらくはゆっくり流して走ります。つまり最初のスタートラインは「仮スタート」であり、非競技区間を「パレード区間」、この区間での走行を「パレードラン」と呼びます。同区間でメカトラや事故があった場合、問題が収まるまで、決してレースが本当の意味で始まることはありません。
そして数キロ先で、走りながら本物のスタートラインを越え、先導車からスタートフラッグが振り下ろされた瞬間、いよいよ真のレースが始まります。


なんのために逃げるのか

必ずと言っていいほど、ロードレースでは「逃げ」が発生します。メイン集団から飛び出し、1人〜数十人の少集団を形成し、レースを先行するのです。スタート直後に一発のアタックで逃げが決まる場合もあれば、1時間以上も激しくやり合った果てにようやく抜け出す場合もあります。
起伏の激しいコースで、大人数で逃げ出せば、最終勝利を争う確立はぐんと高まります。一方なんの変哲もない平坦コースでは、数人で逃げたところで、たいていは最終盤でメイン集団に追いつかれてしまいます。後方の集団で複数のチームが隊列を組み、平地でスピードを上げたら、数人の逃げなどひとたまりもないからです。
たとえ結末は分かっていても、それでも選手たちは逃げを選びます。理由はコース途中に点在するスプリントポイントや山岳ポイント収集だったり、後方に残してきたチームメートたちの仕事を減らすためだったり。小さなチームにとっては、逃げて長時間TV中継に映るのも大切な仕事の一環であり、来季の契約が心配な選手にとっては、自らがどれほど勇敢な選手であるかのアピールタイムでもあります。
もちろん、曲がり角や、風向きで、後方の追走体制に誤算が生じることも。こうして時には、わずか数十メートル差で、衝撃的な、平地逃げ切り勝利が決まるのです。


走行中にコミュニケーション

プロカテゴリーのレースでは、各選手たちは無線機を携帯しています。監督からは逃げとのタイム差や道・天候状況、作戦指示が無線を通して伝えられますし、チームメート同士の意思疎通もほとんどが無線で行われます。
もちろん肉声でコミュニケーションを取ることも。たとえば選手がレース中に集団を離れて、集団後方のチームカーへと下がることがあります。そんな際は補給の受け取りと同時に、監督から作戦が伝えられます。選手が逃げている場合には、選手の横までチームカーが上がってきて、やはり選手に作戦を授けます。
また他チームの選手とは、直接声を出したり、身振り手振りで交流するしかありません。特に逃げ集団の中では、選手同士が腕をぐるぐる回したり、肘をくいっと前に動かしたりと、協力して先頭交代をうながす合図がよく見られます。
レースが終盤に差し掛かり、勝負が緊迫してくると、集団内から怒鳴り声のようなものが聞こえてくる場合もあります。


風:味方であり最大の敵

自転車選手に欠かせない資質は、ペダルを漕ぐ脚力や持久力、作戦能力など多々あります。その中でも欠かせないものが、風を味方につける能力です。選手たちが「プロトン」と呼ばれる密集した集団で走行する理由は、ずばりスリップストリーム(高速走行する物体の後方に発生するらせん状の空気流)。つまり集団内部では小さな力で前進することができ、体力を温存することができるというわけです。
逃げ集団は先頭交代をこまめに行うことで、1人1人の風による体力消耗を最小限に減らせます。また縦一列に並び、高速走行する「トレイン」も、このスリップストリームを最大限に利用した作戦です。最後尾に控えるエースは、ドラフト効果を利用しつつ前方へ飛び出すことで、一瞬最高速度へと達するのです。
急な風向きの変化は、自転車は得意ではありません。特に斜め横から強い風が吹いてきた場合、時に集団は千切れ千切れになってしまうことも。このタイミングをあえて狙って、横風分断を企てるチームも多々あります。斜めに隊列を組み、一気にスピードを上げ、激しく先頭交代を行うと、あっという間に集団は長く細く伸び……いつしか、風と速度に耐えきれなくなった選手が、ぷちん、と切れてしまうのです。


塊に属していることの大切さ

ロードレースで把握しておくべきルールの1つが、「同じ集団内でフィニッシュした選手には、全員同じタイムが与えられる」ことです。集団がひとつの塊である限り、1位でも、10位でも、100位でも、等しく0秒差と記録されます。
塊の定義は、通常であれば「立て続けにフィニッシュする選手の間が1秒以内」。平地での大集団フィニッシュの場合は、特別に3秒差が設けられることもあります。
集団内で走っていれば、不測の事態が起こった際にも、救済される可能性があります。フィニッシュ地形が平坦な場合、最終3km以内で落車やメカトラブルで遅れを取ったとしても、事故の時点で属していた集団と同じフィニッシュタイムが与えられるのです。ただ上り坂でレースが締めくくられる場合は、残念ながらこのルールは適応されません。


落車からは逃れられない


ロードレースが過酷と言われる理由のひとつに、落車があります。
カーブで曲がりきれずに単独で落車したり、下り坂で猛スピードを出しすぎて道を外れてしまったり。濡れた路面でつるりと滑ったり。
最も辛いのが、集団落車です。ぎゅうぎゅうに密集した集団内で、ホイール同士がぶつかったりしたら、さあ大変。バランスを崩して、ひとりが落車し、 それに巻き込まれるようにして次々とドミノ倒しが起こって……。また2021年ツールでは不注意な観客が手にしていたボードが、走行中の選手に接触し、大きな集団落車が起こってしまいました。
落車による擦過傷は、自転車選手にとってはもはや日常茶飯事。骨折や脱臼で即時リタイヤを余儀なくされることもあります。
だからこそ選手たちは、集団落車に巻き込まれぬよう、できる限り集団前方での位置取りを心がけます。ただ誰もが前へ前へと突進しすぎて、それが落車を引き起こすことも多々……。


トイレもまたサドルの上で

トイレもまたサドルの上で
食べながら飲みながら、選手たちは5〜6時間も走り続けるわけですから、当然トイレにだって行きたくなります。 だからこそレース序盤や、勝負所に差し掛かる前に、多くの選手が沿道に停止し、サドルに跨ったまま用を足す姿が見られます。時には走りながらしてしまう場合も……。
ごくたまに、沿道に停まっているファンのキャンピングカーや、さらには草むらにに駆け込む選手もいます。


食事はサドルの上で

ロードレースは1日に7000キロカロリーを消費することもある、激しいスポーツです。
そのため選手はレース中に「食事」をします。誰もが高カロリーの機能性食品やバナナ、タルトなどをジャージのバックポケットに入れており、 走りながらそれらを口にするのです。補給に失敗するとハンガーノック、つまり糖質不足で体が動かなくなることもあるので、食べることも大事な仕事です。
補給食やドリンクは、集団の後方を走るチームカーから受け取ることもあり、アシスト役の選手がボトルを運搬をする姿を映像で目にすることができます。またコース上には補給ポイントがあり、路上に立つチームスタッフが補給食が入ったサコッシュ(布袋)を選手に手渡します。補給ポイント前後にはゴミ捨てポイントもあります。

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