都市対抗野球とは
大会概要
「都市対抗野球大会」は「社会人野球日本選手権大会」と並ぶ社会人野球の2大タイトルで、毎年夏に開催される。第1回大会はプロ野球が始まる前の1927年に遡る。大会はMLBのフランチャイズ制を参考に、各都市を代表するチームが戦う社会人野球大会としてスタート。そのため、出場チーム名には地域の代表として都市名が併記されるほか、ユニフォームの右袖に都市町章をつけている。優勝チームには「黒獅子旗」が送られる。
また、個人表彰は以下の通り。
橋戸賞(最優秀選手賞)
優勝チームから選ばれる。名称は都市対抗野球を創設した橋戸信から。
久慈賞(敢闘賞)
準優勝チームから選ばれる。名称は全日本で沢村栄治とバッテリーを組んだ名捕手・久慈次郎から。
小野賞(特別賞)
大会で活躍した選手、監督、チームに送られる。名称は都市対抗の発展に寄与した小野三千麿から。
若獅子賞(新人賞)
大会で活躍した高卒2年目まで、大卒1年目の選手が選ばれる。複数選ばれる大会もある。
予選形式
全国を12地区に分け、各地区に1~6の代表枠、計31枠が与えられている。また、前回の優勝チームは主催者推薦で出場する。1次予選は主に都道府県単位で行われ、勝ち上がったチームと、1次予選を免除されたチームが2次予選に参加する。2次予選の形式はリーグ戦、トーナメント、敗者復活併用トーナメントと各地区連盟ごとに異なる。
各地区の代表枠は以下の通り。
- ・推薦(前年度優勝):1
- ・北海道:1
- ・東北:2
- ・北信越:1
- ・北関東:2
- ・南関東:3
- ・東京:4
- ・西関東:2
- ・東海:6
- ・近畿:5
- ・中国:2
- ・四国:1
- ・九州:2
補強選手
本戦に出場したチームが、同じ地区で予選敗退したチームから上限3人までを補強できる制度。複数の代表チームが出場する地区は第1代表から順に3人を選んでいく。そのため、地区内での勝ち上がり順位も重要となる。また、前年度優勝の推薦で出場するチームは補強選手を加えることができない。
試合方式
32チームによるトーナメントで行われる。木製バットを使い、指名打者制度。7回以降、10点差があった場合はコールドゲーム(決勝戦では適用されない)。また、タイブレークは延長10回から適用。打順は前のイニングからの継続で、無死1・2塁から開始される。
都市対抗野球の歴史
第1回大会は1927年8月3日から8月9日まで、明治神宮野球場で行われた。出場は12チームで優勝は満洲倶楽部(中国・大連市)。満洲倶楽部は第3回(1929年)大会も優勝し、第2回(1928年)優勝の大連実業団と併せ、大連市が3連覇を果たしている。
戦前は第4回(1930年)・第5回(1931年)の東京倶楽部(東京市)、第12回(1938年)・第13回(1939年)の藤倉電線(東京市)が連覇を達成している。第12回大会(1938年)から会場は、神宮球場から後楽園球場に移った。その後、1941・43・44・45年は戦争のため開催が中止となっている。
戦後は1946年の第17回大会から再開された。第17回(1946年)・第18回(1947年)は大日本土木(岐阜市)が連覇を達成している。第21回大会(1950年)からは補強選手制度が開始された。その第21回大会から全鐘紡(大阪市)が3連覇を達成。これ以降、3連覇を果たしたチームは出ていない。
その後、連覇は日本石油(横浜市)が、第32回(1961年)・第33回(1962年)に達成するが、これ以降は第83回(2012年)・第84回(2013年)に、名称は変わったが同じJX-ENEOS(横浜市)が達成するまで半世紀もの間、出なかった。補強選手を加えられない前回優勝チームの連覇は難しくなったと言われている。
試合形式も時代とともに変化し、第48回大会(1977年)からコールドゲームが適用。第50回大会(1979年)からは金属バットの使用が開始されたが、第73回大会(2002年)で禁止となり、木製バットに戻った。第60回大会(1989年)から指名打者制度、第74回大会(2003年)からタイブレーク制度が導入されている。会場も第59回大会(1988年)からは東京ドームに移っている。
また、近年は例年と異なり夏の開催でない年もあった。第82回大会(2011年)は東日本大震災の影響で、京セラドーム大阪で日本選手権を兼ねて、10月22日から11月1日の日程で開催された。第91回大会(2020年)は東京オリンピック(開催延期)の影響で11月22日~12月3日に、翌年の第92回大会(2021年)も東京オリンピック開催のため、11月28日から12月9日に開催されている。
都市対抗野球ランキング
優勝回数
・12回:ENEOS(横浜市)
・7回:東芝(川崎市)
・4回:日本生命(大阪市)、東京倶楽部(東京市)
・3回:三菱ふそう川崎(川崎市)、ヤマハ(浜松市)、熊谷組(東京都)、全鐘紡(大阪市)
最多得点試合:30点
・三菱重工広島(広島市)18-12 NTT北海道(札幌市)第67回(1996年)
1試合チーム最多得点:27点
・全藤倉(東京都)第19回(1948年)
1試合チーム最多安打:29安打
・全藤倉(東京都)第19回(1948年)
大会チーム最多本塁打:17本
・東芝(川崎市)第62回(1991年)
1試合個人最多本塁打:3本
・杉山孝一(NTT北陸・金沢/新日鉄名古屋から補強)第57回(1986年)
・金久保孝治(日本鋼管・川崎市)第57回(1986年)
・丹波健二(東芝・川崎市)第62回(1991年)
・原井和也(松下電器・門真市)第63回(1992年)
・高林孝行(日本石油・横浜市)第64回(1993年)
個人通算本塁打:14本
・杉山孝一(新日鉄名古屋・東海市)
・西郷泰之(Honda・狭山市)
大会個人最多本塁打:9本
・丹波健二(東芝・川崎市)第62回(1991年)
完全試合
・村上峻介(日鉄二瀬・二瀬町)第28回(1957年)※現在、二瀬町は福岡県飯塚市
・森内寿春(JR東日本東北・仙台市)第82回(2011年)
ノーヒット・ノーラン
・市田夏生(中山製鋼・大阪市)第14回(1940年)
・岡本教平(トキコ・川崎市)第25回(1954年)
・阿部良亮(日本通運・さいたま市)第88回(2017年)
最多奪三振:17奪三振
・松沼博久(東京ガス・東京都)第49回(1978年)
最多奪三振(延長15回):21奪三振
・西五十六(丸善石油・松山市)第29回(1958年)