ツール・ド・フランス2021

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ツール・ド・フランスとは

ツールがやってきた


ツール・ド・フランスとは

ツール・ド・フランスとは 栄誉ある「マイヨ・ジョーヌ」こと、黄色に輝くリーダージャージを目指して男たちが凌ぎを削る

世界最大の自転車ロードレース大会であり、フランスの7月の風物詩でもあり。選手たちは3週間かけて雄大な野山を駆け巡り、栄光の象徴、黄色いマイヨ・ジョーヌを奪い合う。そのコース上には1000万以上もの観衆が詰めかけ、地球上の190を超える国の熱狂的なファンたちが、連日TVの前で戦いの様子を見守る。

これがツール・ド・フランスだ。1903年に産声をあげて以来、世界大戦で2度の中断を除けば、毎年変わることなくバカンス大国の夏を彩ってきた。

その長い歴史の中で、唯一の例外が2020年。新型コロナウイルスの感染拡大による自転車シーズン中断の影響で、開幕は8月29日にずれ込んだ。9月にツール・ド・フランスのプロトンが走ったのは、正真正銘、史上初の事態だった。

2021年大会はいまだコロナ影響下で行われる。2020年開催予定だったサッカー欧州選手権の1年延期により、今年の開幕地はデンマーク・コペンハーゲンからフランス・ブルターニュへと入れ替えられた。また同じく1年延期された東京五輪の、7月23日(金)の開会式に間に合うように……と開幕日も1週間早められた。例年より1つ多い23チーム(8人体制、計184選手)がスタートラインに並ぶのも、コロナで減少した出場機会を補うための、やはり今年限りの特別体制だ。

それでも長いロックダウンが段階的に明け、いつもの夏を取り戻しつつあるフランスで、第108回ツール・ド・フランスは開催される。6月26日(土)から7月18日(日)まで、いわゆる時計回りで、全行程3383kmを走破する。全日程21日間の内訳は個人タイムトライアル2回、平坦ステージ8回、起伏ステージ5回、難関山岳ステージ6回。うち上りフィニッシュは起伏で2回(第1、2ステージ)と難関山岳で3回(第9、17、18ステージ)の計5回。また2度の休息日も設けられた。その2回目の休息日前日にピレネー山脈の小国アンドラでフィニッシュし、同地で休息日を過ごす。

近年は難関山岳バトルにとりわけ重点を置いてきたツールだが、今年はむしろオールラウンドな戦い。軽いアップダウンから個人タイムトライアル、さらには超がつくほどの長距離ステージまで、あらゆる能力が求められる。

しかも開幕から2日連続で、いきなりアップダウンの果ての急坂フィニッシュが組み込まれた。ツール初日の終わりにマイヨ・ジョーヌを着ているのが、スプリンターでもタイムトライアルスペシャリストでもなく、おそらくパンチャーとなるのは、2011年大会以来10年ぶり。

かといって今大会がスプリンターに優しくないわけではない。大集団フィニッシュのチャンスは全部で8回も用意された(第3、4、6、10、12、13、19、21ステージ)。昨大会が6回だったことを考えれば、俊足たちのやる気も向上するはず。キング・オブ・スプリンターの証マイヨ・ヴェール争いも、前回以上に加熱必至だ。

第5ステージには今大会1度目の個人タイムトライアル27.2kmが待ち受ける。第20ステージの個人TT30.8kmとあわせた全長58kmは、過去8大会で最長。しかも2区間ともほぼ平坦の、いわゆるスペシャリスト向けコースだから、線の細いクライマーにとってはいわゆる鬼門となる。

大会7日目に248km……という、とてつもなく長い「移動」ステージが登場するのは、コペンハーゲン開幕からブルターニュ開幕へと切り替えた帳尻合わせのため。ワンデークラシック顔負けの長距離をツールのプロトンが走るのは、2000年大会の254.5km以来、実に21年ぶり。一方で近年積極的に取り入れてきた超短距離の難関山岳ステージ(2017年101km、2018年65km、2019年111km)は、今年は130km(第18ステージ)と少々控えめ。

もちろん山を越えることができなければ、ツールの頂点は手に入らない。今年は開幕から1週間過ぎた第8ステージで、いよいよ本格的な山の戦いへと突入する。アルプスで過ごすのは2日間。1日目のル・グラン・ボルナンは2018年にジュリアン・アラフィリップが初めての区間勝利を手にした場所、2日目のティーニュ山頂フィニッシュは、2年前、土砂崩れによるステージ中断でアラフィリップがマイヨ・ジョーヌを失った場所と、なにやら意味深な地名が並ぶ。

第11ステージにはプロヴァンスの巨人モン・ヴァントゥが立ちはだかる。2013年にはクリス・フルームがマイヨ・ジョーヌ姿で制し、2016年にはフルームが黄色ジャージを着たまま「ランニング」した魔の山を、今区間では2回よじ登る。ただしフィニッシュは禿山のてっぺんではなく、下りきった先。登坂能力だけでなく、ずば抜けたダウンヒル能力も要求される。

大会最大の山場はピレネーで過ごす4日間。第15ステージのアンドラ入国時には、今大会最高標高地点2408mのアンドラ・ラ・ベリャ峠を越える。前半2日間は下り&平坦フィニッシュの一方で、後半2日間は超級山頂フィニッシュ。特に7月14日の「革命記念日」に行われる第17ステージ、ラスト55kmに3つの難峠が詰め込まれたクイーンステージとの呼び声が高い。そして大会最後の難関山岳、第18ステージは、2つの巨大超級登坂で締めくくられる。

果たして大会2度目の個人タイムトライアルが、2年連続の優勝逆転劇を演出するだろうか。パリ到着前日のストップウォッチ相手の最終決戦は、過去10年間で6回行われ、うち2回でマイヨ・ジョーヌ交代劇を、3回で表彰台の入れ替わりを演出している!

世界で一番美しい大通りシャンゼリゼが、プロトンに開放されるのは7月18日の日曜日。そして予定通りに行けば、わずか6日後に、東京五輪男子ロードレースが開催される。

text:宮本あさか












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