文:木村浩嗣

「お昼のニュースが終わるとブエルタの中継が始まる。それを家族で見るのが楽しみだった」とは友人のブエルタファンの子供の頃の思い出だ。ブエルタ・ア・エスパーニャはスペインでは国営放送で中継される。高校野球がNHKと教育テレビのリレー形式で中継されるのと同じように、こちらではTVEとTDP(スポーツ専用チャンネル)のリレーでお茶の間に届く。このうちメインチャンネルのTVEによる16時からの放送が最も人気があり視聴率が高い。昼食が14時からと遅いスペインでは、昼食後のこの時間が夕食時(こちらも遅く21時以降)に次ぐ、第2のゴールデンタイムになっているからだ。

サッカーのスペインリーグの試合開始時間が日本なら昼ご飯の最中である12時に設定されることがあるのも、スペインなら試合後でもまだ昼食に間に合うから。しかも、自宅に帰って家族で昼食を取る習慣があるから、昼休みは14時から17時までと余裕たっぷりに取られているのが普通。この間に家族でテレビも見るし、有名なシエスタ(お昼寝)もしてしまうわけだ。

だが、このゴールデンタイム、視聴者にはありがたいが、選手には過酷である。スペインで最も暑い14時から16時と一致しているからだ。スペインの夏は暑い。特に今年のスタート地点となっている南部のアンダルシアは暑い。都市部である第1ステージのマラガ、第5ステージのグラナダは特に暑い。最高気温30度超えは間違いなく、下手すると40度近くになるだろう。昨年の第13ステージ、私の住むセビージャを通ったレースでは中継車の計測で気温38度を記録した。

今年の夏は45度の酷暑もあったのでこの程度は普通なのだが、日本の人なら“熱中症の危険はないのか?”と心配するのではないか。だけど、30度台後半くらいの暑さなら、熱中症にかかったという話はほとんど聞かない。私自身、こちらで少年サッカーの監督をし5月、6月には30度超のかんかん照りの下で練習や試合をすることも日常茶飯事だが、倒れる子なんか見たことはない。指導者として給水に気を配っていることもあるが、最大の理由はスペインの湿度が日本に比べはるかに低いからだ。

夏ほとんど雨が降らないアンダルシアでは湿度は海の近くでもせいぜい30%。空気が乾燥していると服が肌にべったりくっついたりせず、汗はどんどん乾いて気化熱を奪い、体温を下げていく。日陰と日向の気温差が大きく、木陰はまるでクーラーが効いているかのように涼しい。部屋の中で窓を閉め切っていた方が涼しいという日本の常識からすると奇妙な現象も湿気が低いからこそ起こる。

レーサーは給水はもちろん日焼け止めを塗り、体を濡らし、固形物で栄養補給しと万全の対策をしているが、それでも体調不良になる選手が毎年出ている。アンダルシアを中心に走る8月末の第7ステージ辺りまでは、酷暑での体調管理が勝敗を分けることになるだろう。

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J SPORTS 編集部

お知らせ

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