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「楽しくなかったですね(笑)」。
左腕の渡邊佑樹は、頬をゆるませた。久米島キャンプで、ミズノ社の開発した投球データを収集するボール『MA-Q(マキュー)』を使って、取り組んでいることについて尋ねた時のこと。
特殊なセンサーを内蔵したMA-Qは、見た目も感触も公式球とほとんど変わらない。投げると、球速、回転数、回転軸などの詳細なデータがその場で確認できる。
楽天イーグルスが今年のキャンプから導入したこの新兵器を使って、渡邊はブルペンで自身の投球に磨きをかけていた。
人懐っこい笑顔に爽やかな話しぶり。プロ2年目の渡邊は、初めて話した印象そのままに、とても職人気質でプロらしい内面をのぞかせる。「楽しくなかった」理由は、このボールに表れた数値が「自分の思ったのと違っていた」からだ。
「回転数や回転軸が、(思ったのとは)違うことがありました。自分の思ったとおりなら、楽しかったでしょうけれど、そうじゃなかった。だから、その差を埋めるために、次はああしよう、こうしようって試行錯誤していったんです」。
これまで“感覚”として掴みどころのなかった投球のカタチが、いくつか“データ”として数値化された。その感覚と実質の差異を埋めるのは、想像する以上に地味で、「楽しくない」ようだった。
◆背番号「47」、期待の本格左腕。まずは一軍デビュー。
横浜商科大学出身の渡邊は、2017年にドラフト4位で楽天に入団。近年、プロ野球で左のエースナンバーと認識されている背番号「47」を受け継ぐ、期待の本格派左腕だ。
183センチの高身長から、しなやかに振り下ろされるフォームが特徴。球の出どころが見づらく、最高球速は140キロ半ばだが、球速以上にスピードを感じさせることができる。
一流投手の証でもある、「ストレートと変化球の腕の振りが同じ」という技術も合わせ持ち、ゆくゆくは先発ローテーションの一角としての飛躍も期待される。
しかしながら、昨季のルーキーイヤーは、一軍での登板経験はなし。二軍でもわずか5試合と、プロの壁に阻まれた。
悔しい経験を糧にできたからなのか、どこか飄飄としていて気負ったところがない。2年目にして、落ち着きが格段に増したように見える。
「去年は何もわからない状態だったので、周りを見ながら動いていて、いっぱいいっぱいでした。でも、今年は2年目なので、自分のやりたいことをやれるようになった。特に、野球だけに集中できていることは大きいですね」。
どっしりとした様子で振り返るのだ。今年に向けて、しっかりと準備してきた自負も伺える。
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