だが、蓋を開けてみれば、ブラジルも「型」=戦術の実行に気持ちが集中してしまっていたため、ブラジルらしい奔放なテクニックとアイディアが見られなくなってしまっていたのだ。つまり、ドイツの場合も、ブラジルの場合も、戦術的な「完成度の高さ」が逆に足かせのようになってしまっていたのである。 それに対して、「完成」には程遠かったはずの日本チームがクレバーな戦い方で溌溂とプレーしている。前監督から「あれはしてはいけない。これはしてはいけない」と様々な制約を受けていた選手たちが、選手の本来のプレーを尊重しようという西野監督の下で自由を謳歌してプレーしているわけである。

西野監督だって、時間があったら戦術的な縛りを設けていたかもしれない(それは、当然のことだ)。だが、時間も準備試合も与えられなかった西野監督としては、選手の主体性を尊重する以外に選択がなかったのだろう。

つまり、「完成度」が低かったことが、逆に功を奏して日本が快進撃を始めたのだ。日本選手にはもともとポゼッション・サッカーが身についていたし、あまりメンバーが変わっていなかったこともあってザッケローニ監督時代の記憶を共有している選手が多かったことも、自然とコンビネーションが生まれてきた原因であろう。

そう、ザッケローニ監督時代にしても(2014年)、あるいはトルシエ監督の時にしても(2002年)、日本代表の完成度は今回よりはるかに高かった。そして、ワールドカップ本大会に入ることには、マンネリ感が漂っていたように記憶する。そして、2010年の岡田武史監督のチームも、今年のチームも何も期待できないような状況の中から、急激に方向性が固まって結果につなげていった。

サッカーのチーム作りというのは本当に難しいものだ。そのことを痛感させられたワールドカップの序盤戦だった。

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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