フレフ・ヴァンアーヴェルマート/Greg VAN AVERMAET

2017年ワールドツアー王者は、「幸運の歯」の持ち主だった

21歳の若者は、ひとりぼんやりと海を見ていた。前日に彼の存在を知った。2007年ツアー・オブ・カタールの第5ステージを勝ち取ったからだ。あの年の砂嵐レースは、文字通りトム・ボーネンとクイックステップボーイズの完全独占だった。そこに小さな風穴を開けたのが、大逃げの果てに小集団スプリントを制したGVAだった。おめでとう、と声をかけると、「実は背が伸びなかったから、サッカーのゴールキーパーの道を断念したんだ」と教えてくれた。にこっと笑ったその口に「幸運の歯」がちらり見えた。きっと自転車に転向したことは後悔していないだろう。だって昨夏のブラジルで五輪金メダリストを獲得し、この春にはついに、パリ〜ルーベの石畳トロフィーを天高く掲げ持ったのだから。



別府史之

3週間は長く苦しく、だけど楽しく美しい

グルペットをひとり飛び出して、観客の声を独り占めしながら、笑顔で山道を駆け上がってきた。伝説峠モン・ヴァントゥのてっぺんにたどりついた直後、その瞳から、ポロリと大粒の涙がこぼれ落ちた。2009年ツール・ド・フランス第20ステージ、日本人として、初めてのツール完走をほぼ確定させた瞬間だった。私にとっても、初めての、日本人選手を追いかけた3週間だった。胸がジーンと熱くなった。翌日パリのシャンゼリゼ大通りで華やかな逃げを打った時には、興奮に胸躍った。敢闘賞の盾を手にチームバスに帰ってきた姿を見て、誇りを感じた。ただでさえ楽しいグランツールが、日本人選手が走ればもっともっと楽しいことを、教えてもらった。



ワレン・バルギル/Warren BARGUIL

開けたてのスパークリングウォーターみたい

前年末からチーム監督に、「凄い選手が来るから楽しみにしてて」と耳にタコができるほど聞かされていた。2013年ブエルタ・ア・エスパーニャで初めてじっくり取材する機会を得た。まるでパチパチっと弾ける炭酸水みたいな選手だと思った。第13ステージで区間1勝目を上げた後、単独インタビューを申し込んだ。約束の日が来る前に、あっさり2勝目を上げてしまった。インタビュー当日は屈託のない笑顔で姿を現すと、生まれて初めてのグランツールを体験している真っ最中とは思えないほどに、のんびりリラックスして話を聞かせてくれた。砂田弓弦フォトグラファーの要望に応えて、生ビールをしゅわーっと注ぐポーズまでとってくれた!



新城幸也

全力疾走で後を追いかけたくなる人

フィニッシュと同時に、こちら記者陣もうわーーーっと選手たちの後を走って追いかける。ほとんどが状況も分からぬままに。初出場の2009年ツール・ド・フランスの、初めてのスプリントステージも、そうだった。無我夢中でチームバスまで走って行ったら、ゼネラルマネージャーに新城選手がぎゅーっとハグされている最中だった。そこに来てようやく、区間5位だったのだと気が付いた。2014年アムステル・ゴールドレースの時も同じ。好位置で日の丸ジャージが走り込んできたのが見えたから、瞬時に全力疾走。「うーん、15位くらいかな?」「もうちょっと上?」なんてぐだぐだと会話してからプレスルームに戻った。入室と共に「ブラボー」と声をかけられた。テレビ画面の順位表を見て衝撃を受けた。10位だった。



クリス・フルーム/Christopher FROOME

英国ジェントルマンの鏡

レース会場に詰めかけた人波をかき分けるために、選手たちはたいていは大声を張り上げる。中にはピーピーとホイッスルを吹きながら通過するツワモノもいる。でも現役のツール王者は「すみません」なんて優しく声をかける。さっと道が左右に開くと、丁寧にお礼を述べる。レース終了の瞬間に大勢のカメラや記者に囲まれるけれど、どんなに疲れていようが、何度だって同じ質問に礼儀正しく答える。記者会見では決して微笑みを絶やさない。「フランス人以上にフランス語が堪能」なサー・ウィギンスは仏語を使うことを拒否したのに、ケニア生まれのイギリス人は、対話相手に合わせて英仏伊語を使う。その走り方やチーム戦術を批判する人間はいても、フルーム個人の人格はきっと自転車界の誰もが尊重しているはずだ。素晴らしいチャンピオンとして。

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Cycle*2017 J:COM presents 2017 ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム
11月04日 (土) 午後02:30〜午後05:30
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宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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