夏に強いフォーラムエンジニアリングADVAN GT−Rが久々のポールポジションを獲得

SUPER GT第6戦

 SUPER GTの一戦としては、そう長くはない歴史ながら、鈴鹿1000kmは今回で46回目と、まさに伝統のレースであり続けてきた。夕闇の中チェッカーが振られ、表彰式の後には花火が打ち上げられて夏の終りを告げる、まさに風物詩たるレースであったが、今年でその幕を閉じることとなった。そのことを惜しむからなのか、また夏休み最後の週末だからなのか、鈴鹿サーキットには土曜日から大勢の観客が詰め寄せていた。その中にはスポット参戦の元ワールドチャンピオン、ジェンソン・バトン目当てのファンもいたに違いない。

 予選で大いに話題を集めたのが、そのバトンがQ1を担当したことだ。普段は武藤英紀と中嶋大佑がドライブするMOTUL MUGEN NSX−GTに助っ人として加わっていたが、それは単なるファンサービスではなく、すでに行われてきた公式テストで適応能力あり、と判断されたからに他ならない。F1王者だからといっても、フォーミュラとGTカーでは性格が異なり、独自のドライビングを求めるだけに、正直いって驚きは隠し得なかった。しかし、結果はというと、9番手に留まって、あと一歩のところでQ2進出は果たせず。アタック中にトラフィックに引っかかってしまい、それがなかったら……とは思われたものの、それこそがSUPER GTの難しさなのだ。

 さて、ポールポジションを獲得したのは、意外にもチーム結成初となるKONDO RACINGのフォーラムエンジニアリングADVAN GT−Rだった。Q1で佐々木大樹がトップで、Q2ではJ.P.デ・オリベイラがレコードタイムをも更新。「本当にパーフェクトなアタックだった。夏場の難しいコンディションの中、完璧なセットを決めてくれたチームに感謝したい。タイヤも素晴らしくマッチしていたよ」とオリベイラ。2番手は小林可夢偉が助っ人として加わった、WedsSport ADVAN LC500が国本雄資の力走で獲得し、3番手には塚越広大がQ2を担当したKEIHIN NSX−GTがつけることとなった。

 一方、GT300ではVivaC 86 MCが、今季3度目のポールポジションを獲得。これまではQ2を松井孝允が担当していたが、今回は山下健太が担当。やはりコースレコードを更新していた。前週のスーパーフォーミュラでも初ポールを奪っていた山下、まさに今、乗れているドライバーということなのだろう。2番手はUPGARAGE BANDOH 86の中山友貴がつけて、3番手にはマッハ車検MC86 GTNETの坂口夏月と、マザーシャシー勢が上位を独占。そして、4番手にはMAXウエイトの100kgを積んだ、グッドスマイル初音ミクAMGの片岡龍也がつけていた。

序盤のレースはKEIHIN NSX−GTがリード

 フロントローに並んだフォーラムエンジニアリングADVAN GT−R、WedsSport ADVAN LC500はいずれもヨコハマタイヤを装着。予選ではピタリとはまったものの、予想より低めの気温がどうやら裏目に出てしまったようだ。決勝がスタートして、この2台で上位を独占できたのは、10周をわずかに超えただけだった。代わってトップに立ったのは、3番手スタートだったKEIHIN NSX−GTの塚越。明らかにペースが速く、11周目にはWedsSport ADVAN LC500の関口雄飛を、そして13周目にフォーラムエンジニアリングADVAN GT−Rのオリベイラをかわしてトップに躍り出る。そして、その勢いのまま後続を引き離していった。

 スタートから1時間20分ほど経過したところで、GT300車両が最終コーナーでストップしたためセーフティカー(SC)がコースに入り、塚越からバトンを託されていた小暮卓史はマージンを失うも、トップは譲らず。バトル再開後もまたマージンを増やしていった。レースが折り返しを迎えた86周目にも、KEIHIN NSX−GTのリードが続いていた。しかしながら、3時間15分経過した94周目に、130RでGT300車両のクラッシュがあって、2回目のSCランが行われる。またも奪われてしまったKEIHIN NSX−GTのマージン……。思えば、このあたりから暗雲が垂れ込めていたのではないか。

 引き続きトップを走っていたKEIHIN NSX−GTながら、147周にタイヤがバーストしてクラッシュ! その周にピットに戻る予定だった。異物を踏んだからなのか、タイヤが限界に達してしまったのか、あまりにダメージは大きく原因は定かではないが、あと1周保ってくれれば、そのままゴールまでトップを走り続けていた可能性は十分にある。それぐらい快調に飛ばしていたのだが……。

Epson Moduro NSX−GTが10年ぶりの優勝飾る!

 これによりトップに躍り出たのが、ベルトラン・バケットと松浦孝亮のドライブするEpson Modulo NSX−GTだった。予選は4番手で、それまで決勝でも派手なアクションはなかったものの、地道に、そしてコンスタントに走り続けていたことが実を結ぶことに。松田次生/ロニー・クインタレッリ組のMOTUL AUTECH GT−Rがこれに続き、松田が逆転を狙うも、松浦は近づけなかったばかりか差を広げていく。

 一方、この頃激しく繰り広げられていたのは、ヘイキ・コバライネン/平手晃平組のDENSO KOBELCO LC500、山本尚貴/伊沢拓也組のRAYBRIG NSX−GTによる3番手争いだった。山本が必死に攻め立て、そのつど平手がガードを固めていたものの、シケインでわずかながらもタイヤを落として失速したのを、山本は見逃さず166周目には順位を入れ替えた。なんとか4番手は守り抜きたい平手ではあったものの、山本との激しい攻防で完全にブレーキを使い切ってしまい、ゴールまであと3周というところで、デグナーでクラッシュ。無念のリタイアを喫している。

 その間にも、Epson Modulo NSX−GTのトップは盤石。まったく危なげのない走りを披露し続けていた。そして、2回のSCランがあったこともあり、本来の173周をクリアできないまま、規定の午後6時28分を迎え、ファイナルラップが宣言される。最後の鈴鹿1000kmをEpson Modulo NSX−GTが制し、松浦にとっては通算2勝目、バゲットにとっては初優勝。そしてNAKAJIMA RACINGと装着するタイヤのダンロップにとっては、2007年の最終戦・富士以来、実に10年ぶりの優勝となった。

 レース後の記者会見では感極まって、言葉を詰まらせていた松浦。「正直、まだ実感がわきません。いろんな思いがこみ上げてきて……。19年間お世話になったARTAを離れ、NAKAJIMA RACINGでダンロップを立て直してくれ、と言われて。ホンダさんにはインディカーという世界の頂点まで連れていってもらったのに、大した成績も残せず、ARTA共々申し訳なく思っていたのですが、この勝利で自分がまだレーシングドライバーとしてやれるんだ、というのを再確認できました」と語っていた。

 2位でゴールはMOTUL AUTECH GT−Rで、松田とクインタレッリはランキングのトップにも浮上。3位はRAYBRIG NSX−GTが獲得、山本は脱水症状で、表彰台に立つのがやっと。そんな状態でありながら、平手と激しいバトルを繰り広げていたことには敬意すら感じられた。

 話題のMOTUL MUGEN NSX−GTは、2度のペナルティと、度重なるタイヤトラブルによって12位でフィニッシュ。バトンはファンの声援に応えられずに終わる。一方、ポールポジションのフォーラムエンジニアリングADVAN GT−Rは5位に。また、今回は6戦目にして初めてレクサス勢が表彰台に1台も上がれず、最上位はWedsSport ADVAN LC500の4位だった。

スタート直後に他を圧倒したマザーシャシー勢

 GT300ではVivaC 86 MCの山下、UPGARAGE BANDOH 86の中山、そしてマッハ車検MC86 GTNETの坂口が連なる形で決勝レースが開始された。その一方で、注目されたのは黒澤治樹/蒲生尚弥組のLEON CVSTOS AMGがスタート直後に、さっそく最初のピットストップを行なっていたことだ。これでいったんは最後尾まで後退するも、この作戦が大正解だったことはのちに明らかになる。

 ピットタイミングがそれぞれ異なることで、特にGT300ではめまぐるしい順位変動があったものの、少なくとも中盤まではVivaC 86 MCとUPGARAGE BANDOH 86が支配していたのは間違いない。ところが、もう一台のマッハ車検MC86 GTNETがパドルシフトのコンプレッシャー、ABSに相次いでトラブルを抱え、順位を落としたあたりからマザーシャシー勢にも暗雲が垂れ込めることとなる。

 2回目のSCラン最中に、なんとトップを走っていたUPGARAGE BANDOH 86がピットに戻ってきたではないか! ご存知のとおりSUPER GTではSC走行時のピットインは、ペナルティの対象となる。右フロントのタイロッドのボルトが抜けて、ハンドルが正常に機能しなくなっていたのが原因だった。スローペースだったからよかったものの、通常のペースでの走行時であれば、大クラッシュにつながっていた可能性もある。

 代わってトップに立ったのは、1周目にピットに入ってきたLEON CVSTOS AMGだった。あえていったん後方へと退き、自分たちのペースで走り、しかもクリアラップを取り続けてきたことで順位を上げてきたというわけだ。しかし、すぐ後ろにはVivaC 86 MCも。4回目のピットストップはタイヤ無交換としたVivaC 86 MCが、ロスを最小限として山下は黒澤の前に出たばかりか、寄せつけずにいたのだが……。

LEON CVSTOS AMGが今季初優勝、ランキングでもトップに

 最終スティントを迎えた段階でも、VivaC 86 MCはトップをキープ。松井がLEON CVSTOS AMGの蒲生を従えたものの、その差は20秒。残り1時間ほどゴールまであることを思えば、絶対的なマージンとは言い難い。ところが、ペースは明らかに蒲生の方が速く、間隔はあっという間に詰まっていく。そして、ゴールまで10周を切った150周目の1コーナーで、蒲生はついに逆転を果たすこととなった。この周はまた、ポイントリーダーに悲劇をもたらしていた。11番手を走行していたグッドスマイル初音ミクAMGが、タイヤにトラブルを抱え、ピットには戻ってきたものの、大きく順位を落とすこととなっていたからだ。

 さらにレースは大きく動く。シリーズタイトルのことを思えば、2番手キープでも十分だったはずの、VivaC 86 MCが逆バンクでクラッシュ! しかも転倒しているではないか。「転倒したのは何かに引っかかったからで、突然滑ってカウンター当てたんですが、左に持っていかれてしまって……。とにかく僕のミスです。チームに申し訳ない」と松井。これで手にしかけていたポイントリーダーの座も失うことに。レース終了まで、あと8分で起きた悲劇だった。

 強敵のリタイアで、難なく逃げ切ったLEON CVSTOS AMGは昨年の開幕戦以来となる、今季初優勝を飾り、さらにランキングのトップにも浮上した。「ランキングでもトップ? 初めて知った(笑)。でも、これからも気を抜かず、まだ2戦ありますからね。もともといろんな作戦を考えていたんですが、1周目に入ってきたのは混雑したところを走りたくなかったから。それとSUGOでトップを走って、20秒ちぎっても勝てなかったことに対し、なぜだろうと考えた上で戦略をより緻密にする必要があると。それで今回、こういう作戦を採ることにして、成功したんで、本当に良かったです」と黒澤。

 2位は織戸学/平峰一貴/山西康司組のマネパランボルギーニGT3がつければ、3位も細川慎弥/佐藤公哉/元嶋佑弥組のショップチャンネルランボルギーニGT3がつけて、JLOC勢が揃って表彰台に立つことに成功。終盤にチームメイト同士、バトルを繰り広げて順位を入れ替えはしたが、それまでは目立つことなく、それでいて着実に順位を上げていた。2台とも、時にリヤのみタイヤを2本交換としたり、「素早いピット作業に助けられた」りと織戸。

 これで鈴鹿1000kmは終了するが、サマーエンディランスとして歴史はFIA−GT3による、10時間耐久に受け継がれることになっており、またレース後の花火を楽しむことはできる。高額賞金を最大の魅力として、海外からも多くのエントリーを集めそうだ。

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秦 直之
大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。

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