アイスダンスコーチングチーム『モントリオール』

――世界のアイスダンスファンが知りたい、モントリオールの練習体制なのですが、パトリス・ローゾン/マリー=フランス・デュブレイユ/ローマン・アグノエル/パスカル・デニスコーチはそれぞれどのような役割になっているのでしょうか。

立野:まず、ウォームアップ(氷上)は4人が日替わりで回しているような感じです。

深瀬:グループレッスンで練習の一番最初にあります。

立野:「これをやるように」と指示があって全員でやるんですけど、それも先生によってやり方は全然違いますね。

深瀬:今日はパトリスだったからエッジワーク、みたいな。

立野:彼らに“担当”というものはないと思うんですけど、4人共まったく違う教え方をされます。「パトリスはこう言ってたのにマリーはこう言い始めたぞ」っていうこともあります(笑)

――なかなか厳しい展開に(笑)

深瀬:2人(現役時代に)組んでたのに(カナダ選手権4連覇、世界選手権銀メダリスト)!全然違う!って(笑)

立野:でもそれはそれで、「パトリスはこう言ってたけどマリーの言うほうがやりやすいぞ」ということにもなって。

深瀬:結局はそれが繋がってたりするよね。同じことなんですけど、教え方が違う。

立野:そう、ローマンにもパスカルにも各々の教え方があって、自分に一番合ったやり方を見つけられます。教え方が違うと飲み込みも違うので。

深瀬:自分の分かりやすい教え方を選べます。結局、全部同じことを教わるんですけど。

立野:そこへ行くまでのプロセスが全然違いますね。

立野:パトリスは主に技術面で、エッジワークを指導されます。

深瀬:エッジワーク専門、というか、

立野:教えるのがうまい。

深瀬:そうなんだよね。

立野:パトリスはステップの手直しもされます。振付が力強い。なんか「カクカク」しています(一同 笑)昨季のショートの課題にマーチが入っていたんですけど、マーチがすごく「パキパキ」してマーチらしさが出るんです。パトリスの振付も「これはパトリスだな」と分かる。

深瀬:ローマンの振付も分かるんですけど、パトリスも「ここはパトリス」と分かります。

――ポージングがキメキメみたいな。

深瀬:そんな感じです、「絶対先生でしょ」って(笑)

立野:マリーは、2人のユニゾンが主ですね。技術面も教えられますが、マリーは特に「lean(倒す)」=上体の傾きやフリーレッグのマッチングについて言われます。あとは、マリーは振付が素敵ですし。振付の手直しもされますね。

深瀬:ステップ全部変えられたりする(一同 笑)

立野:僕らのイメージとしては、マリーは振付と見映えを見て下さる、という感じです。

立野:ローマンは、話しているように振付がすごいですし、

深瀬:マリーとパトリスの先生だったからね。

立野:そう。僕が感じるのは、表現力に関してよく言われますね、「もっと踊りなさい!それじゃ何やってるか分からない!」と。

深瀬:「技術はいいからとりあえず踊りなさい!」って。

立野:「技術は後からついて来る!」と。

――名言が出ましたね!

立野:多分そんなことを言われていると……僕らの印象としてはそんな感じです。

深瀬:私がアイスダンスを始めたばかりで何も分からないからかも(笑)

立野:(笑)とにかく「踊れ」って言われます。ローマンは、教えてるのにすごく踊ってます。僕らはローマンの現役時代の演技を生で観たこともないんですけど、教えてもらいながら演技を観てるって感じです。ほんっとに、すっごい綺麗なんですよ、ローマンの動きも。マリーもそうです。

深瀬:指先も表情も演技しながら教えられます。私だけかもしれないですけど、笑った時に目が細くなるので、演技中にそうなるとローマンが「笑う時に目を開けろ!」って(一同 笑)普通に笑ってたら目が細くなるからしょうがないんですけど(笑)

立野:俺も目めっちゃ細くなる。

深瀬:目なくなるじゃん(笑)

立野:うるせえ(笑)

深瀬:(笑)そういうところまで教えてもらえます。

立野:そう、言い方は悪いですけど、表情はすごくうるさく言われます。あとはもちろん、技術も教わります。ちょっとしたコツなんかも言われますし。「ホールドを大きく!」とか、よく注意されますね。

深瀬:ハリが足りないと「しっかり張って!」とか。しっかり張ってないと2人の距離感が崩れてしまうので。

立野:パスカルはスケーティングですね。よく言われるのは「glide(滑るように移動する)」=一歩の伸びですね。

深瀬:「グラーイド、グラーイド」って。基礎を教えるのが上手です。

立野:彼はシンクロチーム(Les Supremes 昨季カナダ王者)も教えているので、スケーティングの基礎的な指導は得意だと思います。選手の精神的なケアもされますね。

深瀬:パスカルが一番気にかけて下さいます。

立野:先生方は、演技の前に緊張していたら「普段通りに」「元気に」と送り出して下さって、励みになります。……パスカルと理香子は演技前にハグしていますね。

立野:技術面では全員がしっかり見て下さいますし、そこが大前提で、4人がすごくバランスが取れている感じです。

深瀬:それぞれ得意分野があると感じます。

――先生方の現役時代の動画は見られますか?

立野:マリーとパトリスの演技は動画でよく見ますね。最後のフリーダンスの『At Last』(2006-2007シーズン)とか。オリジナルダンスも素敵だと思います。

深瀬:すごく踊ってます。パトリスもカッコイイけどマリーがすごくカッコイイ。

立野:女性がすごく目立つように作ってあります。

深瀬:そう、強そうな!

立野:パスカルは「これ僕の」と見せてくれたこともあります(一同 笑)

深瀬:「先生達こんなことやってる!」「こんな振付してる!」と、先生達の演技が例えば新しいリフトの参考にもなったりします。先生達は旧採点時代の選手なんですけど、今でも通用するようなリフトばっかりなんです。マリーとパトリスのリフトは有名ですし、パスカルも派手なリフトをやっていると思いました。

ひとつひとつステップを踏んだ15-16シーズン

――昨季、シーズンに入ってからは先生方からどのようなアドバイスがありましたか?

立野:ここに来た当初は、僕らは周りの選手から比べたら「何してるの?」っていう感じでまったく踊れていなかったんです。だから「とにかく踊りなさい!」「passion 出して!」と言われましたね。

深瀬:「passion」は言われましたね。

立野:あとは、ジュニアなんだから怖がらずどんどん押しなさいと。押す=スピード出すことを言われたかなと思います。

――「押す」というのはスケーターの皆さんからよく聞かれる表現ですが、英語では何と言うのでしょう?

立野:「プ―――――ッス!プ―――――ッス!」と。

深瀬:それはフランス語だよ(笑)

立野:すみませんでした(笑)

――(笑)フランス語で push は pousser(動詞の命令形は pousse 「プッス」)なんですね。

立野:他には「ターンを正確に」と。

――レベルに直結しますね。

深瀬:グランプリ(ISUジュニアグランプリシリーズ)の前、夏頃は「押して押して押して」だったのにトルン杯(2016年1月・ポーランド)の前になったら急に「エッジワーク」と言われて(一同 笑)

立野:大会ごとに目標が違いましたね。

深瀬:そうだね。初戦のオーストリア杯(ISUジュニアグランプリシリーズ・2015年9月)に関しては、とにかく「世界ジュニア出場のミニマムスコアを取るように」と。「ターン」とか「キーポイント」について注意されていました。特に、ショートのミニマムスコアを取るのがフリーよりも難しいから。

立野:「キーポイント」はよく言われましたね。

深瀬:トルン杯もエッジワーク重視で。

立野:直前にミッドラインステップがまるまる変わったんですよ、要素1つ全部が(笑)

深瀬:びっくりしたよね!パトリスが変えました(笑)2週間前に「全部変えよう!」って(一同 笑)

立野:こっちのほうがレベルを取りやすい、と。

深瀬:私達が得意なステップが多く入っています。その先生達の作戦が当たったんです!

立野:レベルも取れて点数も上がりましたね(オーストリア杯を8.06点上回る)。

深瀬:世界ジュニアでの目標は、トルン杯でレベルが取れたので、次はGOE(技の出来映え点)とPCS(演技構成点)を上げようと。

立野:そこを重視しただけあって、世界ジュニアではGOEもPCSも上がりました。トルン杯よりも判定が厳しかったことやトルン杯前のようなレベルへの取り組みではなかったこともあって、レベルの取りこぼしはありましたけど。

深瀬:スピンは、練習した甲斐あってレベルも取れました(レベル4でGOE+0.43)!(立野選手に)ね?

立野:なんで俺に言うの!(一同 笑)

深瀬:昨季を振り返ると、それぞれの試合でそれぞれ違う目標だったけど、その目標を全部達成したことが良かったかなと思います。

立野:ひとつひとつステップを踏んで世界ジュニアまで繋がった感じです。

深瀬:昨季一番の目標は世界ジュニアのショート通過だったから、そこが達成出来てうれしかったです。

インタビュー後編ではアイスダンス談義が弾み、日本のアイスダンスの現状、未来に懸ける想いも伺います。

テキスト:Pigeon Post ピジョンポスト 島津愛子
インタビュー/構成:島津愛子、Pigeon Post ピジョンポスト
取材日:2016年8月10日

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Pigeon Post ピジョンポスト
フィギュアスケーターの"声" "今"を届ける記者チーム(Pigeon Post HP)。
日本チームを中心に、世界のフィギュアスケートを特集する日本語英語のバイリンガルサイトで、インタビュー・リポートを掲載。Twitterをポータルとして、新しい記事の紹介やニュース、イベントのリポートまで、ワンストップで伝える。FacebookもTwitterと連携させている。

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