初の1部で苦戦するかと思われたが、ホッフェンハイムは開幕から2連勝を飾る。ラングニック流の縦に速い攻撃がはまり、2トップのイビセビッチ(現シュツットガルト)とバ(現上海申花)が爆発した。

カルロス・エドゥアルド(現アトレチコ・ミネイロ)が中盤で創造性を発揮し、サリホビッチ(現貴州人和)とヴァイス(現ボーフム)が馬力を生かしてピッチを走り回る。ブラジル代表のルイス・グスタボ(現ボルフスブルク)がDFラインの前で門番となった。オバシ(現無所属)がFWに入って、3トップを採用することも。とにかく攻撃力が売りだ。

3節にレバークーゼンに2対5、6節にブレーメンに4対5で敗れたが、ラングニックは縦に速いというコンセプトを変えなかった。7節でフランクフルトに勝利すると、勢いに乗って5連勝。9節に首位に立った。11月にはMFヴァイスとDFコンパーがドイツ代表に初招集された。

縦に速い攻撃は、偶然生まれたものではない。ラングニックはそれを実現するための練習を用意した。たとえば、幅15m×縦90mという極端に縦に長いピッチ内で、タッチ数を2回に限定してゲームを行う。このときのポイントが、バックパスを禁止(もしくはバックパスを受けた選手は1タッチのみ許可)すること。常に前にボールを進める意識を植え付けた。

また、試合後の初練習では、うまくいかなかった10シーンをピックアップして修正点を伝えた。

16節に2位バイエルンとミュンヘンで対戦し、イビセビッチのゴールで先制しながらも、2点を返されて逆転負けしてしまった。だが、それまでの貯金が効いて、17節も首位を守って「秋の王者」になった。まさに「ホッフェンハイムの奇跡」だ。

残念ながら後期はエースのイビセビッチが負傷離脱したことが響いて急失速し、結局7位まで順位を落とした。それでも初めて挑んだ1部において、「秋の王者」に輝いたことはドイツサッカー史に刻まれる波乱だった。

それにしてもこのホッフェンハイムの例を見ると、1年間を通してジャイアントキリングを継続することの難しさも感じる。今季のレスターの快進撃は1シーズン持ったという点で、2008年のホッフェンハイムをしのぐ、奇跡中の奇跡と言ってもいいのかもしれない。

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木崎 伸也
木崎伸也1975年1月3日、東京都出身。 02年W杯後、オランダ・ドイツで活動し、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材した。現在は帰国し、Numberのほか、雑誌・新聞等に数多く寄稿している。

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