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かのホルメンコーレンの丘は、あのカミカゼカサイの帰りを待っていた。
日本国内W杯の最大イベント札幌大会にて第3位という最年長表彰台を飾り、ギネスを受け、ひとしきり微笑みに包まれていた葛西紀明(土屋ホーム)。
優勝は良き吹き上げの風に乗ってしまった小柄なファンネメル、続いたのはフライングに才能を発揮するフォルファンというノルウェーの飛ばし屋たち。
そこに鋭く食い込む葛西だった。
前日、ナイトゲームで表彰台独占のスロベニア、そして2試合目ノルウェーの上位入りに待ったをかけるべく、葛西は果敢に攻めに出た。
「最高でしたね、1本目は。なにもかもばっちりで、とくに飛形点は20点満点いけるだろうって感じでいました。2本目は緊張しているつもりはなかったんですが、飛ぶ瞬間にほんの少し力が入って、身体がよじれていました。それがなければ140mを超えて優勝できたのに(笑)」 意気軒昂、公式の記者会見ではそう言って気迫を込め、また、にやりとした。
それに先立つ表彰式と、ギネス認定式イベントでは、たくさんのメディア取材陣を前に、ひとつ語ることがあった。
「じつは昨日の朝方に赤ちゃんを授かりまして…」
「それは、もしかしたら妹の生まれ代わりのような…」
その瞬間に、心優しいフォトグラファーたちはファインダーを見ることができなくなった、いや、それこそ涙でぼやけてしまったのだ。
しばらくシャッターを押すことができず、それを指でぬぐい、深呼吸をひとつふたつと。よかったノリさん、良かったねとサイレントモードで。
みんながそんな気持ちで、いつもより丁寧にシャッターを切っていった。
W杯個人総合TOP10のシード枠で、来札しなかったのは、直前のザコパネW杯で1、2位表彰台となったクラフトとハインバックのオーストリア勢2名のみ。
実にハイレベルな闘いとなった今年の札幌W杯だ。
その強豪ぞろいの中で4位と3位に入った葛西選手、それはこれからも、とことん最前線でジャンプしていけるとの証明になった。
さて、カミカゼ葛西は、オスロ・ホルメンコーレン(ノルウェー)で過去に勝利している。
あれは1993年頃の話だ。あれからもう12年以上のときが経つ。
いまだ健在で、さらに飛距離がどんどんと伸びていく。
だからこそレジェンド葛西。
いつもながらに親日であるノルウェー国民は、超満員のお客さんすべてがカサイに大歓声を送り、それも幸せなひとときなのだ。
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