サッカー史の大御所、ブライアン・グランヴィルの『ワールドカップ・ストーリー』(新紀元社)にこんな一節がある。
「ミドルズブラ、北朝鮮との試合、イタリアにとって究極のトラウマである」
 1966年、ワールドカップ(W杯)のイングランド大会、かの地で、優勝候補のイタリアは、ミステリアスな北朝鮮にまさかの敗北を喫する。1―0。あれから49年、いまなおフットボールのヒストリーから消えることなき「世紀の番狂わせ」である。帰国後、イタリアの選手たちがスタジアムに登場するたびに「コ・リ・ア!」という「あざけりの声」がこだました。

「ブライトン、日本との試合、南アフリカにとって究極のトラウマである」
 ラグビーのW杯、こちらもイングランド大会、かの地で驚愕の事態は発生した。34-32。スコアだけ耳にしたら、地球上のひとり残らず、えっ、スプリングボクスがジャパンにそんなに苦しんだのか、と反応したはずだ。そうではなくて負けた。

 異なる種類のフットボールの異なる時代の出来事を並べた。ふたつの金星には共通の根拠が存在するからだ。すなわち「ファナティックなキャンプ」。狂信的なまでの合宿。前掲書より古いエディションの一冊には以下のくだりがあった。英語で目にした昔の記憶なので正確な引用ではないが、確か、こんな表現だった。
「北朝鮮は、3年にわたり、ピョンヤン郊外でファナティックなキャンプを行ない…」
 これだ。これしかないのだ。極東の民が、西洋列強とフットボールのような集団球技で対抗しながら機をとらえて白星をたぐり寄せるには。北朝鮮は、おそるべきスタミナと機械のごとき連係を身につけていた。イタリア戦では、前後半、こっそり選手を入れ替えているのでは、との疑惑まで浮上する。東洋人の風貌がみな似て映るという偏見とともに語り継がれる「伝説」である。

 ラグビーの日本代表は、エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)の信念と実行力と計画策定能力による「原則固定メンバーの長期拘束・長時間練習」を宮崎で敢行した。本年は約160日、これは南アフリカのざっと2倍に相当する。6月のトレーニングの回数は「91」にもおよんだ。国際ラグビーのトップに位置する相手を上回るフィットネス、反復ゆえのスクラムとラインアウトの精度の高さ、細かなパスにエラーのない連動の確かさ。ジャパンには実力があった。

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