ぬくい風が花と土の匂いを運ぶ。幸せで不安。春だ。さあ一歩を踏み出そう。ある高校のラグビー部員が、卒業から8年後に入部初日の思い出を綴った小文がある。タイトルは「最初の最初の日」(一部の固有名詞を省略)。

「2年生の強引な勧誘で、他の1年生と一緒に近所の大学のグラウンドへ連れていかれた。グラウンドには、寝ぐせのついた頭に、ところどころ破れたみすぼらしい黄色のウインドブレイカーをまとい、なぜか左右が異なるソックスとスパイクを履いたコーチが新入生を待っていた」

 現在、東北地方でその地域における唯一の弁護士として奮闘、本日もあちらこちら走り回っているだろう人物の追想は続く。

「なんだか、とんでもないスポーツをとんでもない人たちのもとで始めるんだなという予感にゾクゾクした」

 最後のくだりがよい。「とんでもない」が「ゾクゾク」に結ばれる。それを青春と呼ぶんじゃないのか。

 ざっと85年前、大阪・茨木のごく普通の小学校にもそんな邂逅があった。イトマンスイミングスクールの創設時からの名指導者、奥田精一郎さんにかつて聞いた。

「僕の人生のツキは大阪・茨木の小学生の時に一流の人間と出会えたことです」

 ひとりの代用教員、つまり、正式の教職資格を持たぬ先生がそこにいて、日曜を除いて朝7時から1時間、悪童たちにバスケットボールを教えた。造り酒屋の息子、奥田少年もさっそく夢中になった。「この人がごっつう気合い、かかっとんねん。行動力があって、理論があって、自分でも実技ができて。もう2年間、近隣で無敵でした」。遊津(あそづ)孟。のちに松下電器(現・パナソニック)バスケットボール部を牽引、社業でも取締役まで昇進する。『レクリエーション管理』『松下電器の労使関係』『日本スポーツ創世記』などの著書も残している。

お知らせ

◆ラグビー見るならJ SPORTS!
トップリーグや海外ラグビーなどをお届け!
≫特集ページを見る ≫詳しい放送予定を見る
オンデマンドでもラグビーを楽しもう!
≫オンデマンドページを見る

スカパー!×J SPORTS J SPORTS オンラインショップ