マエストロ。芸術の領域の名人。ヤマハ発動機ジュビロの背番号10をそう呼んでしまいたい。実に見事だった。経歴のピークを目撃できた。

 大田尾竜彦。33歳。2月28日、サントリーサンゴリアスとの日本選手権決勝。15―3の堂々の勝利を指揮した。縦横、深浅、剛柔、遅速を自在に操り、その結実としてチームの2トライを引き出した。そこには「型」と「判断」というスポーツの古くて新しい命題のひとつの答えがあった。

 先日、サッカーの元日本代表監督、岡田武史さんとJリーグの村井満チェアマンの対談の司会というか進行をした。岡田さんは、四国リーグのFC今治のオーナーに就任、2月23日の体制発表会見で「自由の中から自由な発想は生まれにくい」と語った。対談でもそのことをクラブの柱にすえるのだと説明してくれた。型があって型を破る。いや型があればこそ型を破れる。詳しくはここに書けないが、それは、すなわち大田尾竜彦とヤマハの実践とも重なった。

 ヤマハのトライはいずれも敵陣ゴール前のセットプレーから始まった。モールを起点に自慢のFWが近場を前へ前へと攻め立てる。スクラムになれば押しにかかる。厳しい鍛練の成果で前進やサポートに粘着力がある。そして、マイスター、大田尾が機を見てパスを散らし、さっとBKが外で仕留めた。

 開始7分のトライは、まずモールでそのまま、届かぬなら縦また縦、波状の猛攻から、突然の右展開、大田尾が擬音を用いれば「くっ」と少しだけ長くボールを持ち、そこに深いところからマレ・サウが走り込んだ。ヤマハの清宮克幸監督は常に「強いFW」を発信しており、防御の意識、体の向きのみならず心までどうしてもそちらへ引き寄せられる。そこからの「プランB」はいっそう効いた。

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