期待通り、自己ベストも12点以上更新し、3シーズンをかけ「ショートとフリーで四回転3回」のトップクラスの構成を完成した矢先、競技人生の大詰めで襲った怪我。右膝の古傷に受けた痛みを負いながら、全日本選手権、ソチ五輪と演じ切りました。
「自分の人生の中でもきっとおもしろいシーズン」。それが最後の【髙橋大輔時代】でした。

【佐野先生が見た髙橋大輔時代(3)】

大輔のスケーティングはテクニック。年齢的に若くて「馬力(筋力)」が上のパトリックとはイメージが違うけど、伸びがある。2012年のグランプリファイナルでもパトリックに勝った。この時点で僕は、オリンピック銅メダル、世界選手権金メダル、ファイナル金メダルを取った大輔は「本当によく頑張った」と思ってたんだ。 そこからソチ五輪シーズンに入って、NHK杯の「すげぇーーー演技」で五輪代表選考基準で優位に立った(ワールドランキング日本人2位・シーズンベスト世界3位)後に怪我をして……全日本もオリンピックもよく頑張った。怪我のない状態で花道を飾らせてやりたかった。

……逆に言えば、それが「大輔らしい」のかもしれない。

誰しも選手としての「辞め時」がある。髙橋大輔が選んだ辞め時は、(バンクーバー五輪シーズン後やグランプリファイナルで優勝した)「自分が一番上にいる時」じゃなかった。「もぅーーーーだめだ!」っていう限界まで頑張った。
ソチ五輪でも日本人が大輔を乗り越えて行った。
「もう俺がいなくても日本男子は大丈夫だな」と、それは物凄く「カッコイイ辞め方」だと僕は思うんだよね。
男が一番華々しい時に栄光を掴んでスパッと辞める、それも一つの辞め方だけど。
ここまで引っ張って来た自分自身を後輩達の土台にして「あとは頼むぜ!」って辞めていく、それは男としてカッコイイやり方でしょうね。……僕は一番良い時に辞めたから(笑)今とはアマチュア競技を取り巻く環境が違ったんだけど。
引退の発表も(地元)岡山で発表して、そういうところも「大輔らしい」のかもしれない。
これからもずっとそんな「髙橋大輔」を演じてほしいっていうかなー、そのまんま今まで通り出して生きていってほしいと思いますね。「もし悩むことがあったらいつでも連絡して来い!」

(髙橋大輔さんの一番好きなところ)「優しい」ところかな!(笑)人に対して優しいんだよ、アイツ。……俺もそうだけどね(笑)男は人に優しくなきゃね!

【鬼・四回転時代の名演技】

マンボ、タンゴ、コンテンポラリー、ブルース(陸のダンサーにも至難の「抜け」感を表現)、ロックンロール、クラシック、オペラ、ビートルズ……
と多様な音楽と多彩な踊りを一つ一つ見比べて味わいたいところですが、2012年全日本選手権FS『道化師』の演技にはまたもうひとつのフィギュアスケートの醍醐味がありました。

*2012年全日本選手権FS『道化師』(シェイリーン・ボーンさん振付、フリー1位)*
ショートで四回転にミスがあり、1位羽生結弦選手に9.64点離されて臨んだ最終グループの1番滑走。演目は道化師の性や苦悩を描くオペラ。
何があってもショーを続ける道化師の壮絶な生き様を歌う『Vesti la giubba』。怪我をしてから決まっていなかった冒頭2回の四回転を降りると、会場は一気にオペラ『道化師』の「夢とも現実ともつかない世界」に入り込みます。
ポージングを連続させる激情的な振付を、無重力のようなスケーティングで止まることなく流れるように魅せていく、26歳となった道化師。陸では不可能な踊りと成功を重ねるエレメンツに会場は昂ります。愛を失った道化師の絶望がフィナーレの『No! Pagliaccio non son!』のコレオシークエンスで放たれ(情熱のあまり振り付けたタイミングより早まり、1歩目が楽器を率いる形になった髙橋大輔さん)、道化師と会場はカタルシスを迎えます。
スポーツが生み出す勝負、心技体を鍛錬し尽くしたトップアスリートによるフィギュアスケートならではの演舞。最後のスピンで舞い落ちた(1ポイント減点となる)衣装の手先の彩りのひとひらは、「このショーを忘れないように」という運命の計らいにも見えました。

テキスト・インタビュー:島津愛子 Aiko Shimazu

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Pigeon Post ピジョンポスト
フィギュアスケーターの"声" "今"を届ける記者チーム(Pigeon Post HP)。
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