J SPORTSが誇るサッカープログラム「デイリーサッカーニュース Foot!」。
5月16日(金)は、MC:倉敷保雄、ゲスト:西村雄一の2人が登場。西村雄一さんのレフェリー論とは?

番組の一部を、テキストでお送りします。
それでは、今週のFoot! FRIDAY“ESPECIAL”をお楽しみください。どうぞ!

――ワールドカップのホイッスルというのはレフェリーが選べるんですね?

西村:自分の使い慣れたものを使うという形になっていますね。

――金色のこのバルキーンをお使いになっていますけれど、これもブラジルに持って行かれるんですか?

西村:多くの試合を一緒に戦ってきた笛なので持って行こうと思っています。

――これは4オクターブの音が出て必要な表現をコントロールできるという優れものです。誰が吹いても上手に吹けるかというと、僕はあまり上手に吹けなかった。

西村:笛というのは1つの道具なんですけど、要は自分の衣装を使うようなもので、ただ単に音が出ればいいってわけでもなくて。レフェリーの気持ちを音に乗せて伝えるという形なので、そういった意味では訓練が必要かもしれないですね。

――この笛はどこが優れものかというと、南アフリカ大会の時にもブブゼラに負けなかったという笛なんですね

西村:そこに関しては開発の方に心から感謝していますね。

――ワールドカップに臨む日本代表23名も発表されましたけれど、世界のエリートレフェリーたちも発表になって、日本から西村雄一さん、相楽亨さん、名木利幸さんの3名も含まれています。非常に誇らしいのは、日本代表も5大会連続ですが、ワールドカップに臨むレフェリーも5大会連続ということになりますね

西村:FIFAの日本人の審判員に対する信頼というのが少し伺えるかなと思いますね。

――国際サッカー歴史統計連盟というのがあり、昨年の2月に1987年から2011年までの25年間における世界最優秀審判というのを発表しました。1位はイタリアのピエール・ルイージ・コリーナさんでした。2位がドイツのマルクス・メルクさん。3位がデンマークのキム・ミルトン・ニールセン。西村さんも83位にランクインされています。世界25年間の83位、すばらしいですね

西村:恐縮です。僕自身としては本当にその試合の選手たちが目一杯活躍してもらえればいいなというその思いだけでやっているんですけどね。

――トリオが全部日本人というのも、誇らしいことですね

西村:日本人ならではのあうんの呼吸ですとか、そういう所がうまく選手のために伝わればいいと思いますね。

――西村さんはセットでできること、西村メソッドと言いますか、どのように試合をコントロールするのが良いのかという自分なりの考え方とかアプローチがあります。その考えとか気持ちを汲んでくれるトリオということですよね

西村:本当に2人の副審は自分が判定しやすいように私のために全力を尽くしてくれるので、2人には感謝しています。

――驚くほど足が速いんですけど、それでも世界にはクリスチャーノ・ロナウドとかギャレス・ベイルとかアシスタントレフェリーでさえ置き去りにするすごい選手がいます。そこはまたコントロールの仕方というのはあるんですか?

西村:彼らも副審の位置からゲームを読んでそのスピードに対応するように動いているので、副審のテクニックというのは彼らが良いポジションということで証明してくれると思います。

――西村メソッドというのはゲームを読もうとする力ということですよね。「ここパスを出したら良かったのに、失敗したな」、なんて思うことはあります?

西村:ありますね。ピッチに居る時にはそのチームの一員になったつもりで立っています。その攻撃がここでやったら一番効果的な攻撃になるという所に向けて僕も走ってスタートを切っていますので、そこにパスが来ないと「いや、ここに出してもらったらどうだったかな」っていう思いは持っていますね。

西村雄一さんのレフェリー論

――西村さんの他25のトリオがワールドカップブラジル大会のジャッジを務めます。うまいなと思うのはどのへんですか?

西村:それぞれの大陸によってサッカーが違うので、スピーディーなゲームになればヨーロッパのレフェリーは非常に速いサッカーに対応できますね。逆に南米とかであれば、選手同士が揉め合うような、集団的対立が起きそうな所は南米のレフェリーはうまく捌いていきますね。

――特にクラシコとか多少ぶつかり合ってもレフェリーに止めてほしくないっていうゲームがありますよね。ああいう時のケンカの仲裁っていうのは南米のレフェリーはうまいですね

西村:そこはもうケンカ仲裁という覚悟を持ってゲームに臨んでいる、試合の中で1回2回はケンカ仲裁があるぞっていう覚悟があると思うんですよね。日本だとなかなかそういうことがないので、ケンカが起きちゃったってなると対応ができない。そこら辺が大陸の差があるんじゃないかなと思いますね。

――西村さんのジャッジというのは研究のジャッジですよね。その国がどういうサッカーをするのか、そのチームがどういうサッカーをしたいのか、戦術がどうなのか。今まで経験された中で、これはおもしろかったなとか難しかったなというものはありますか?

西村:2010年大会で優勝したスペインですけど、スペインのサッカーというのは相手、レフェリーを全く気にしないサッカーなんです。自分たちがボールをキープしてそれが相手に触らせることなくゴールを決めれば、相手から点を多く取って勝てるということをわかっているので、レフェリーの多少のミスは気にしないですね。相手のどれだけ激しいタックルが来ても味方が点をとってくれればと思っています。そういう所でスペインは真の王者なんだと感じましたね。

――イングランドのハワード・ウェブレフェリーは、元パートタイムの警察官で、今回のワールドカップが最後ということなんですけど。ハワード・ウェブさんも「レフェリー」という映画の中で厳しい局面に立たされてそこからまた良いレフェリーになっていった方ですよね

西村:ハワードは2010年の決勝をフォースとして一緒にやらして頂けたり、日本にも来てもらって1試合吹いてくれたりということで非常に親交も深いし、今回また一緒にやることができるので非常にお互い選ばれて良かったね、と話していますね。

――この人もケンカを捌くのがうまいし、ポジショニングが良いという点では西村さんと似ていますね

西村:彼のポジショニングというのは、体も大きいので邪魔になってしまう可能性もあるんですけど、そこは彼もどこを見ればいいか考えていますね。

――邪魔になることもあるんだ。最近の選手でわざと審判をブラインドにしてパスを出してきたりするじゃないですか。あれは大変ですよね、避けなきゃいけないし。

西村:避けれる距離が近づける最大という感じになるんですけど、ボールに当たらないというのはレフェリーとしては必要な所だと思いますね。

――体が大きい方が睨みも効くしフィジカルでも大きい方が良いと思っていたらそうでもないんですね。西村さんも180cmあるじゃないですか

西村:逆に小柄なレフェリーは縦横無尽に走ることで、みなさんを納得させるということができるので。レフェリーにとっては体格は大きければいいか小さければいいかということはないと思いますね。

――2010年の南アフリカ大会で特筆すべき点は、フェリペ・メロに対するレッドカード。僕は拍手しました、中継を見ながら。すばらしいレフェリングだと思って。でも勇気は要りましたね

西村:こういうことが起きるということを事前に知っていればいいんですけど(笑)。突然起きるものなので、でも本当に見間違わなくて良かったと思いましたし。あの判定を1つ間違えるだけで日本人の価値を下げてしまう可能性があることをやっているということは、帰国してからよくわかったことだったので。1つの判定の重みというのはあの大会で身を持って学んだという感じですね。

判定について

――選手とのコミュニケーションという点ではどういうことを心がけていらっしゃいますか?

西村:正直にやるということを心がけていますね。レフェリーはミスというものがどうしても取りざたされやすいんですけど、見えたものを見間違えたということは非常に少ないんです。逆に見たかったけど選手とかぶって見えなかった、という判定不能ということがよくあって、それがどうやら映像で見ると違っていた、そういったミスはどうしても起きます。でもその時に素直に見えなかった、申し訳ないと選手には話すようにしています。そうすると選手も次はお願いしますねという形で受け入れてくれたりします。ですので正直にやるということが大事。多分こうであろうという自分に嘘をついた方が信頼を失いますね。

――ゴールラインテクノロジーに関してはどんな意見ですか?

西村:ゴールラインテクノロジーは私たちレフェリーにとってもすごく有益なんですけど、実はサッカーを楽しんで頂いているすべてのみなさま、選手を含めて良いシステムだと思います。

――上手に使っていけばいい

西村:ゴールというのはサッカーの醍醐味の一番大切な所なので、それをやはり正確に判定する上で機械の力を得た方がよりみなさんに納得して頂ける時代になったということだと思いますね。

――Jリーグが開設した頃にオフィス機器販売メンテナンス会社のボナファイドという所に就職されて、それはレフェリーという仕事をしたかったので土日が空いている仕事をしたかったということなんですよね?その間もレフェリーの仕事を勉強されていて

西村:営業をやりながら週末は審判の方でいろんなピッチに行くという感じでしたね。

――土日が休みの仕事というと海外だとお医者さんとか学校の先生とか。日本はどうも学校の先生が多いという印象がちょっと前までかなりありました。難しいんですけど、西村さんは営業だったでしょ?営業って頭を下げられる人ですよね。頭をあまり下げる機会のない人というのはコミュニケーションていうのが難しいんじゃないのかなというのが、僕の偏見かもしれないけどそういうジャッジも多く見受けられた時代もあった

西村:わかります。先生は先生なりのコミュニケーションで、逆にケンカの仲裁が得意なんですね。生徒の仲裁が得意ですから、ケンカの仲裁は任しとけと。私は営業ですから、信頼して頂く、判定を商品として売っていくという形なんですね。僕の商品は判定なので、それを1個1個売っていってコツコツと売っていくと信頼して頂ける。それがお客様のためになる。選手として信頼を得られるので判定は任せた、任されたという所で信頼が築けていって選手が判定を忘れてプレーに集中してもらえる。それを作り出すことができるかというのが僕のスタイルには少し入っているかもしれません。

――西村さんは近くでジャッジしているじゃないですか。僕らも中継席にいて、レフェリーが近くにいる時には言わないです。スローで見ていて細かい所があっても、でもここで見ていたんだったら選手も納得しますよねっていう

西村:プレーからの距離感というのは説得力にかかってくるんですね。近くても遠くても実は見えるものって大体同じなんですけど、そこに距離感を加える事によって説得力が増して全てその判定を信頼したという風になると思いますね。

――中継する側からのアプローチで言うと、1つ先が見えているって大事なことだと思っているんですよ。この次のプレーがこうなる、こうなったらうまくいくしこうならなかったら失敗するだろうなというのは、僕は高い所から俯瞰で見ているからある程度わかる。1つ先を読んでいるとゲームに遅れない中継というのができるんですよ。それってレフェリングでも同じですか?

西村:全く同じですね。実際このチームは誰で点を取りたいんだという所くらいまでは広げて考えるようにはしていますね。いつ攻撃を仕掛けてきて誰で点を取りたいんだということを逆算するのはやっています。

ブラジルW杯に向けて

――西村メソッドはいろんな研究に基づいてその戦術も見ていく。特に攻撃的な視点に立って見ていくというのが西村メソッドということでいいですよね?

西村:気持ちは攻撃側なんですけど、ファールを見極める目は実はディフェンスの行為を見ています。ディフェンスがどうするからファールになるのかという行為ですね。ですから気持ちは攻撃側と一緒なんですけど、接触するタイミングはディフェンスにパッとフォーカスが当たるようになっていますね。

――32カ国のうちの半分くらいは頭に入れておかないと難しいと思うんですが、まだわからないですよね。情報収集も大変ですね

西村:ナショナルチームの試合というのが日本では見ることが少ないので、そういった面ではその国のレフェリーが来ているのであれば、その人に聞けば正しいことがわかるので、レフェリー団の中では各国同士で情報のやりとりをしていますね。

――これが悪い例のシミュレーションですっていうビデオとかあるじゃないですか。ああいう勉強は普段からされるんですか?

西村:選手の悪さはどうかというのを、人に落とすことはしないようにしています。行為を見ていますので。どうしてもカードが多くなる選手が中盤の選手でいるとします。でもその選手は監督の指示でチームの役割として、相手の動きを止めてくれと言われている。そういう指示のもとなので、その選手が悪いわけじゃなくて行為が悪いと。私たちとしては先入観じゃなくてチーム戦術の中でここを止めていきたい役割のポジションは誰なんだ、という見方になってくるので、そういった所は心がけていますね。

――中継もそうですね。選手のことを悪く言ってはいけない。今のプレーがこの試合のこの時間におけるこのプレーだけは彼はよくない、ということですね

西村:選択を間違えた、ということはよくあるでしょうね。この時間帯この状況ではこれを選択してはいけなかったということはあると思います。

プレーヤー性善説

――アシスタントレフェリーとは交信した方がやりやすいですか?

西村:アシスタントレフェリーというのは私が見えない角度からの目を持っていますので、私からしてみればプラス6個の目があるんですね。そういった目をうまく使って正しい判定に導きたい、そういった形ではコミュニケーションを取ることは大事ですね。

――ずる賢いチームとあまり上手じゃないチーム、どっちの方が捌きにくいですか?

西村:実はレフェリーはずる賢いのはすごく苦手でして、なぜかと言うとプレーヤーはみんな良い選手だと思ってやっているんですね。

――性善説

西村:プレーヤーはフェアプレーでやってくれないとこのスポーツは成り立たないので、急に騙されると騙されます。シミュレーションというのは選手がフェアプレーを忘れた瞬間に起きることなので、これを見抜くのが一番難しいです。選手の心を見抜かなきゃいけないということになるので。

――この笛でどんな世界の名選手でも止めることができる。この笛は重みですか、誇りですか?それとも苦しさですか?

西村:これも仲間としてのツールの1つだと思っていますね。この笛を逆に嫌いだという風に思っている選手はいないと思っていて。吹かれるときは吹かれるし、味方になってくれる時はなってくれるし。この笛でみんなここに集まれ〜みたいな感じですね。

――西村さんが大きな大会で経験してくる1つ1つが日本のサッカーの財産になってくると思いますし、大きな試合ですばらしい笛を吹いてほしいなと思って期待していますので、がんばって下さい

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J SPORTS 編集部

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◆Foot! FRIDAY“ESPECIAL”(05/16)
5月18日(日)午後10:00 J SPORTS 2
5月19日(月)午前04:00 J SPORTS 2
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