運命の5月12日がいよいよ目前に迫ってきた。10日のJリーグ第13節は、2014年ブラジルワールドカップ日本代表23人の発表前の国内最後のJ1ゲーム。何とか最終メンバーに滑り込みたい選手たちにとっては、本当に最後のアピールの場となった。

「当落線上」と言われる選手たちは少なくない。GKで言えば、第3GK争いを繰り広げている権田修一(FC東京)、東口順昭(G大阪)、林彰洋(鳥栖)のパフォーマンスが気になるところ。DFでは第4のセンターバックの座を狙う塩谷司(広島)、鈴木大輔(柏)、槙野智章(浦和)らの動向に焦点が集まった。

MFではボランチ候補の青山敏弘(広島)、高橋秀人(FC東京)、中村憲剛(川崎)らの一挙手一投足、2列目のアタッカー陣の齋藤学(横浜)、工藤壮人(柏)、南野拓実(C大阪)、大久保嘉人(川崎)がゴールを奪うか否かが注目された。そしてFWのジョーカーに滑り込みたい豊田陽平(鳥栖)、川又堅碁(新潟)らは、得点という明確な結果が求められた。

こうした面々のうち、目覚ましい働きを見せたのが大久保だ。今週7日にアジアチャンピオンズリーグ(ACL)ラウンド16・FCソウル戦にフル出場し疲労困憊だったはずの彼が、J1上位につける鹿島アントラーズから2ゴールをマークしたのだ。

試合間隔が短くても運動量が落ちるどころか、走力が一段と増し、動き出しも鋭くなっている印象だった。本人は「とにかく待つしかない」とコメントをしているようだが、12日は1年前に亡くなった父の命日ということで、どうしても墓前に朗報を届けたいという思いが強いのだろう。

ザックジャパンの4年間で大久保が招集されたのは、国内組だけで挑んだ2012年2月のアイスランド戦(大阪・長居)1試合のみ。ワールドカップ予選など主要大会には一度も呼ばれていない。しかしヴィッセル神戸に所属していた頃と、今の彼はゴール前の凄味と怖さが全く違う。

本人も点取屋としての感覚を完全に取り戻し、つねに虎視眈々とゴール前へ飛び出すようになった。2列目とFWならではのポジションでもこなせる万能性は、日本代表の武器になるだろう。守備意識の高さ、熱いブラジルでも走り抜ける無尽蔵の体力を考えても、彼を選んだ方が得策ではないか。それだけのインパクトを今季J1とACLで彼は示したといっていい。

大久保と最高のホットラインを形成する中村憲剛も4ゴールのうち2アシストと明確な結果を残している。今季の中村憲剛は風間八宏監督の戦術を確実に理解し、大島僚太とともに中盤で小気味いいほどのパスワークを見せている。

中村憲剛は年齢が33歳になったが、衰えは全く感じられない。そのコンディションのよさに加え、2010年南アフリカワールドカップの経験値、トップ下のバックアップ役をこなせる器用さ、ザックジャパンの戦術理解度と、彼にはブラジル本大会に行く権利を与えられるだけの要素が数多くある。同じ枠を争う青山敏弘も確かに好調を維持しているが、総合力を考えると中村憲剛の方が上ではないか。それを彼は川崎戦で実証したといえる。

塩谷も力強いアピールを見せた。ザッケローニ監督が視察に訪れた清水エスパルス戦で、彼は右CKのこぼれ球をファーサイドから右足ジャンピングボレーで合わせてゴール。今季J1・5点目、ACLを含めると7点目の得点を奪ったのだ。この得点能力の高さはDFとは思えない。森保一監督も「広島の選手から代表に選ばれると思って待ちたい」と特に塩谷には大きな期待を寄せていたようだ。

最近は攻撃面でのアピールが際立つ塩谷だが、DFである以上、チーム戦術をどこまで理解しているかがポイントになる。これまでザックジャパンの第4のDFは、2011年アジアカップ(カタール)から代表に帯同し続けている伊野波雅彦(磐田)が担ってきた。彼の出場機会自体は通算20試合と多くないが、ずっとチームにいてトレーニングを積んできた事実は大きい。

伊野波がセンターバックと右サイドバック、時にはボランチもこなせることはザッケローニ監督もよく分かっているはず。それだけ長い年月をかけて築いてきたものを新戦力が超えるのは容易ではない。

昨年の東アジアカップ(韓国)に参戦した2012年ロンドン五輪代表の鈴木大輔なら、まだ計算できる部分がある。その鈴木も10日のアルビレックス新潟戦でリスタートから貴重な先制点をゲット。塩谷に負けじと存在感をアピールした。この日は右サイドバックで出場し、マルチな能力を示すとともに、攻守両面で安定感ある動きを見せていただけに、彼も捨てがたい。代表未経験の塩谷が伊野波の蓄積や鈴木の国際経験を超えるのはやはり難しそうだ。

ただ、今季J2で好不調の波が激しい伊野波、柏レイソルで絶対的中心になりきれていない鈴木より、絶好調男の塩谷を思い切って呼んだ方がいいという考え方もあるだろう。そこを指揮官がどう判断するのか…。この枠は最後の最後までどうなるか分からない。

いずれにしても全てが明らかになるのは12日・14時のザッケローニ監督の記者会見。そのスタートが待ち遠しい。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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