J SPORTSが誇るサッカープログラム「デイリーサッカーニュース Foot!」。
4月18日(金)は、元NHKアナウンサー山本浩さんと倉敷さんがサッカー実況とは何かを語りました。数多くの試合を伝えてきた2人の、サッカー実況論とは。

番組の一部を、テキストでお送りします。
それでは、今週のFoot! FRIDAY“ESPECIAL”をお楽しみください。どうぞ!

トラさんのスポーツ健康学

――この時期はどんな活動を?

山本:大学の教員ですので、新しい学生たちにちゃんと教えないといけない一方で、もう来年の入学試験どうしよう、と。少子化が言われているから、優秀な学生をどれだけ惹きつけるられかと日本中の私立大学ががんばっているんですよ。

――優秀な学生を集めるというのが大事なんですね。これはある国の話ですが、認知症という悲しい病気がありますよね。認知症対策として一番自分が楽しかった時、フットボールの思い出があって、スタジアムに通った人たちが会場で聞いた音や歓声を聞くと少し元気になったりとか、記憶を戻したりすることがあるそうですね。フットボールを見続けることで将来の健康に良いということが見つかる部分はまだあるんじゃないかと

山本:あるでしょうね。大事にしたいのは、スポーツの世界というのは小さな社会の縮図なんです。いかに相手を分析して、自分の用意をして、そして戦って結果が出る。これが自分の人生だと30年から40年はかかる。ところがスポーツは1日に1回くらい結果が出るんですよ。いろんなことをスポーツは学びの場として用意してくれるんですよね。

――新学期になったから、進級したから。やり直しがたくさんできるのは良いですね

山本:しかもそこで出た成績が自分の自信になって戻ってくるからすごく大事なんです、自信を持つって。人生の中で、会社に入っても自信が持てないようなこともありますよね。ところがスポーツはどんどん自分を改善していくことによって、自信を持てる自分を作ることも可能なんですよ。

――プレッシャーとの付き合い方も大事だと思うんですけど、教授はどうお考えでしょうか?

山本:自信が非常に強くあれば、過信になっていなければ。プレッシャーに対抗できるのはこれなんです。「こんなものどうってことないよ」という自分が出てきた時こそかなり良いアプローチができて、理想に近い形の結果が出ることが少なくない。でも「だからおまえはダメなんだよ」と言われると、プレッシャーの前に潰れてしまうこともあるんですね。スポーツはそういうことをいろいろトレーニングしてくれる機会。

――最近の学生って、プレッシャーに弱かったりしないですか?

山本:僕のゼミにいる学生は強いですね。プレゼンテーションをやる前にプレッシャーをかけるんですけど平気でやっちゃいますね。

――それはコミュニケーションを取る手段をトラさん(山本の愛称)が与えているのかなと想像しますね。良い実況者というのは良い引き出し手でなければいけない、ということですね。解説から何を引き出すのか、ここで解説が何を喋りたがっているのか。インタビューの極意、相手が喋りたいことをというのはトラさんから教えてもらったことです

サッカー実況論

――羽佐間正雄さんと鈴木文彌さんの書かれた本を読んだんですけど、二人とも同じ結論に行き着いているのが興味深かった。羽佐間さんは「私は野球にパーフェクトゲームがあるように、放送にもパーフェクトがあるのではないかと考えて、それを目指して仕事をしてきた。しかし家に帰って放送を聞き返してみると反省材料が次々と噴き出してくる。アナウンサーというのはパーフェクトを目指しながら反省の道を往来し、努力に明け暮れる職業である」という風におっしゃっている。

文彌さんは、「チャップリンがあなたの過去の最大傑作は何ですか?と質問されるとネクストワン、といつも答えた。アナウンスに終点がない、チャンレンジャーの精神でこれからも生きていこうというのが今日この頃の私の気持ち。目的を持って行動するうちは青春であり、目標を持って仕事をしているうちはいつも青春である」という風に話をしております。トラさんも解説委員をやられて、視点・論点のような番組もやられて、大学で教鞭もとられて。あるいは相撲のお仕事をされたりとか、いろんなものを見ながら見えてくる所はやはり、終わりがない道ということになるんでしょうか?

山本:アナウンサーの仕事は調理師に似ている所がある。最高の調理師になろうとする人は、お客様が食べ進んでいくに従って満腹になった段階で、なお最高の味がするような変化をつけているのかどうか。フランス料理の料理人なら、食べ進んでいくうちに中のソースがおなかがいっぱいになりかけているのにうまいぞ、みたいな所まで行けるかどうか。そうすると、試合の展開によって例えば1-0から1-1になった時には多くの人が身を乗り出して見てくれるかもしれない。それが3-0になって3-1になるかどうかという所でそのアナウンスメントによって引っ張れるか、という話を羽佐間さんはしているんじゃないかと。

――僕が山本さんから教わったのは、中継の最後の所を大事にやりなさいと。最後の所でしっかりゲームを追ったり終わらせることができればそのゲームは良かったと感じてもらえると

山本:倉敷さんも実況をされていて、20分くらいから少し「さあどうしようか」という時間帯が来ることがありますよね?特に前半にあまり点を取らない、シュートが出てこない時と、20分くらいで何か切り替えていかなければいけない。それを乗り越えた時に前半が終了する。そして後半が始まったらいきなり「さあ、どうなるか」ですけど、また10分から25分くらいの間に少し弛む時間が出てきがちですよね。そういう時はどうしているんですか?

――引き出しを探しますね。実況席の中にあるもので、持ってきた資料で使えるもの、手持ちのネタの中で楽しんでもらえるものがあるか、冷めたスープでも出しても口直しになるのかとか、腹ごなしになってもう一回おなかがすいたと思ってもらえる状況があるのかを探す。あと、解説が飽きているのかいないのか、何か話したがっているのか。あるいは事件が何か起こるきっかけとか可能性があるのかを探しながらつなぐでしょうね

山本:それも1つのやり方ですよね。実はその弛んでいる所に何かのアクシデントなりアクションなり、試合の展開の変わり目なんてものがあると、非常に良い伝えやすい材料になるんですよ。最後の所を大事にしろと言うのは、全体を15分に区切った時に6つのブロックになるわけですけど、それの2つ目と5つ目が意外に弛んでしまう所があるわけですよ。この部分を6つ目と5つ目がちゃんとつながっているかどうか、それがわかるようになれば後ろの4、5、6がかなり充実したものになるんですね。見ている側・聞いている側も2つ目の所で飽きが来たりするんです。我々がそこで強引に何かおいしいものを出そうとするのかどうか、それはまさにさっきの調理師がおなかがいっぱいになってきた所で「どうだ、このソースを食ってみろ」と言えるかどうかですね。その辺は伝える側の経験と世界観じゃないかと。

――大きな人気のあるソフトに移送する中継が増えてしまって久しい気がするんですけど、アナウンサーがその中でまだ立ち向かっていける部分とか、あがける部分ていうのはどういう所なんでしょうね

山本:大きな試合で、大勢が知っている人が出てくる。そうした人たちが体がフレッシュで良いプレーができるとなったら、コメントは基本的に私の場合は少ないですね。ほとんど言わないんです。

――調理する必要のないものは、そのまま食べてもらうということですね

山本:調理師として、素材の鮮度が高くて見栄えが良くて、多くの人がこの素材が何であるかを知っているうちは説明をする必要がないわけ。そこに却って何かを付け加えていくと、試合と戦ってしまう放送人が出てきてしまって、向こう側のお皿が溢れてしまうことが起こるような気がするんですよ。そこで働いている人たちが元気で、しかも勝つためのベクトルをどんどん出している時は本当に何も言わなくてもいい。解説者の背中を叩いていれば、解説者が何か言ってくれるかもしれません。

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J SPORTS 編集部

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◆Foot! FRIDAY“ESPECIAL”(04/18)
4月20日(日)午前06:00〜午前07:00 J SPORTS 2
4月20日(日)午後06:00〜午後07:00 J SPORTS 2
4月20日(日)深夜03:00〜午前04:00 J SPORTS 2
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