先週、フランス・ラプラーニュにおいて、モーグルW杯の最終戦(デュアル)が行われ、‘14季の日程が終了した。
そしてその戦いは、最後の最後まで熱かった!

女子は、ハナ・カーニー(アメリカ)とジャスティン・デュフォー・ラポイント(カナダ) が、総合獲得ポイントわずか5点差で最終戦を迎えた。
結果はジャスティンが初戦転倒という、波乱の展開。久々に完璧なコンディションで臨んだハナは、決勝まですべて完勝で、まるで初めてのように総合優勝を喜んだ。その姿は五輪金メダルを逃した鬱憤を晴らすかのようでもあった・・・。

これでハナは、4年連続5度目のW杯総合優勝。大先輩ドナ・ワインブレッド(アメリカ)と宿命のライバルだったジェニファー・ハイル(カナダ)の記録に並んだ。ドナの持つ史上最多勝記録の46勝にも、あと4勝と迫っている。

一方ジャスティンは、3年連続W杯総合2位。頂点には立てなかったが、‘14季は4勝をし、絶対女王に初めて肉薄。五輪金メダルも獲得した。
その上、姉のクロエはW杯総合3位&五輪銀メダル、マキシムはW杯総合4位。デュフォー−ラポイント三姉妹は、むしろハナより主役として目立ったシーズンとなった。

日本女子の‘14季は、厳しいシーズンだったと言わざるを得ない。 W杯開幕戦の公式トレーニング中にエース、伊藤みきが膝を負傷。ソチには出場予定で行ったが、練習中に膝が悪化。結局、‘14季は1試合も出場できなかった。
さらに、成長が期待された村田愛里咲も五輪中に怪我。上村愛子も五輪こそ好走したが、猪苗代大会で転倒。W杯後半戦で最後の雄姿を見せることが出来なかった。
チーム全体として、よくない運がついていた。

ただそんな中、「表彰台2回と頭角を現した星野純子」、「初海外W杯で上位進出をした伊藤さつき」と、新しい可能性も感じさせた。引退する上村愛子の穴は大きいが、伊藤みき、村田愛里咲が復活すれば、来季以降日本女子の層は厚くなると思われる。

 ‘14シーズンW杯総合最終ランキング女子
1KEARNEY Hannah (USA)850点
2DUFOUR−LAPOINTE Justine (CAN)774点
3DUFOUR−LAPOINTE Chloe (CAN)521点
4DUFOUR−LAPOINTE Maxime (CAN)459点
5MCPHIE Heather (USA)420点
6OUTTRIM Eliza (USA)347点
7NAUDE Andi(CAN)282点
9HOSHINO Junko (JPN)253点
22UEMURA Aiko (JPN)145点
25ITO Satsuki (JPN)90点
30MURATA Arisa (JPN)51点

[写真1]五輪では2連覇を逃したものの、モーグル界の史上最高記録ホルダーに近づいたのがハナだ
[写真2]史上初めて10代の五輪金メダリストとなったジャスティン。W杯総合女王の座は、僅差で逃した

男子の最終戦は、決勝戦で「ミカエル・キングスバリー(カナダ)vsアレックス・ビロドウ(カナダ)」。横綱同士の最後の大勝負となった。総合優勝の行方は準決勝の結果で確定していたが、この試合で引退するアレックスとミカエルのがっぷりよつのバトルは見応えがあった。 勝負を分けたのが、アレックスがリスクを覚悟して、ダブルフルを第一エアで使用したこと。ターン、スピードとも僅差でミカエルの評価が上だったが、エアの評価で差がついた。
結果は見事、アレックスが引退レースで有終の美を飾るものとなった。
そしてそれは、先輩の意地が、ありありと感じられる光景だった。

まだ男子のエアトリックで今や古典的なツイスターも多く使われていた‘05季、ダブルフルを飛ぶ信じられない新人がフォーランナー(前走)としてW杯に現れた。その男は翌‘06季、W杯デビュー戦で、ダブルフルとコーク1080をメイクする。そしてわずか3戦目で、初優勝を果たしてしまう。それがアレックスだった。
ただこのエア革命児はその後、18歳で挑んだ‘06季トリノ五輪は失敗。必ずしも一気にトップに駆け上がったわけではなく、王者となるまでには挫折も多かったが、ターンを磨き上げ総合力でパワーアップ。‘09季にW杯総合優勝、‘10季バンクーバー五輪金メダルと、大器は見事に大輪の花を咲かせた。夏冬通じて、自国開催五輪3回目で初めて金メダルを獲得したスーパースターとなった。
バンクーバー五輪後は、現役続行も迷い休養。復帰した時にはミカエル・キングスバリーという、自身の得意技を完璧に仕上げてのし上がった新王者がいた。再び、挑戦者としての戦いとなった。
ソチ五輪も新王者有利とも予想されたが、アレックスは五輪シーズンに満を持したかのように完全復活、いやむしろ進化した。そして五輪2連覇を果たしたのだった。

‘14季W杯+五輪の対戦成績は、両者それぞれ5勝ずつ。今シーズンは、歴史の残るマッチレースが繰り広げられ、五輪は先輩が史上初の2連覇、W杯は後輩がエドガー・グロスピロン(フランス)、デイル・ベッグ−スミス(オーストラリア)に次ぐ史上3人目の3連覇という結末で幕をと閉じた。

日本男子は、遠藤尚が2度表彰台、西伸幸が最高6位というのが、‘14季W杯のベストな結果だった。特に遠藤は、‘13季の総合6位から総合7位という結果だったが、表彰台は2度獲得。ポテンシャルの高さはますます評価されており、来季以降のさらなるランクアップを匂わせるが、果たして?

 ‘14シーズンW杯総合最終ランキング男子
1KINGSBURY Mikael (CAN) 890点
2BILODEAU Alex (CAN) 879点
3 DENEEN Patrick(USA) 443点
4 WILSON Bradley (USA) 429点
5 SMYSHLYAEV Alexandr (RUS) 419点
6 GAGNON Marc−Antoine (CAN) 368点
7 ENDO Sho (JPN) 311点
15 NISHI Nobuyuki (JPN) 165点

[写真3]最後のゲームで優勝。W杯86戦出場で19勝。そして五輪2連覇という偉業を残してアレックスはバーンを去る
[写真4]五輪金こそ逃したが、W杯総合3連覇。21歳ミカエルにとって、究極の課題が残されたのは、むしろ今後の楽しみ!?

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Bravoski(ブラボースキー)
今年で創刊32周年を迎えた双葉社発刊のスキー専門誌。‘90年代中盤からフリースタイルスキーに着目し、‘98年長野五輪・モーグル種目で里谷多英、上村愛子らが活躍してモーグルが一大ブームとなる。現在ではフリースタイルスキー(パウダー、パーク、モーグル)の専門誌として年間3冊発刊している。ウェブマガジンBravoski.comは毎日更新中。

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